サッカー日本代表、「期待度や前評判は低いほうがW杯で結果残す」説は本当?過去7大会を検証

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Qolyアンバサダーのコラムニスト、中坊コラムの中坊氏によるコラムをお届けします。



不思議なジンクス



いよいよ日本代表が8度目の挑戦となるW杯、アメリカ・メキシコ・カナダW杯に望むこととなる。



それにちなんだ話として、タイトル記載通り、「日本代表は戦前予想で前評判が低かったり、世間からあまり期待されていない時の方がW杯で結果を残す」という不思議なジンクスが、過去を振り返ると何故かよくあてはまる。



これは巷でもちらほら話されているオカルトめいたジンクスなのだが、現在日本代表のコーチを務めている名波浩氏ですらも鈴木啓太氏との対談時、同様のことを言及していた。



過去7回のW杯を振り返ろう。



1998~2022年W杯の日本代表戦績



 年   開催国    監督  メディア等の期待  結果
1998年 フランス   岡田武史    低     GL敗退
2002年 日本・韓国  トルシエ    中     ベスト16
2006年 ドイツ    ジーコ     中     GL敗退
2010年 南アフリカ  岡田武史    低     ベスト16
2014年 ブラジル   ザッケローニ  高     GL敗退
2018年 ロシア    西野朗     低     ベスト16
2022年 カタール   森保一     低     ベスト16



この表を見て、「いや、ドイツW杯のジーコジャパンはメディアが勝手に持ち上げていただけで、実際のチームとしては期待できなかった。期待度は “低” が妥当」「フランスW杯は “1勝1敗1分でGL突破” 論が広まって、GL突破いけるかもという論調もあったから、今思うと無謀だが期待度は “中” まであったとも言える」等々、皆さん言いたいことは多々あると思うが、そこは本筋ではないので一旦おいておく。



何が重要な論点かと言うと、タイトルの通り「W杯開催前に期待が低いと、逆に本番で結果を残す」という不思議な事実だ。



戦前の予想として「GL敗退」と思われていた南アフリカW杯、ロシアW杯、カタールW杯はいずれも見事な戦いを披露し、GL突破を成し遂げている。



過去のW杯の振り返りと、今回のW杯の展望について述べていきたい。



まず、過去のW杯について寸評を述べていく。



・1998年フランスW杯(期待度 低・GL敗退)



日本が初めて出場したW杯。加茂周監督の更迭から岡田監督が引き継ぎ、イランとの対決を制して初出場の切符を手にした。



この当時、メディアでは “1勝1敗1分でGL突破” 論が盛んに述べられていた。つまり、アルゼンチンに負け、クロアチアに分け、ジャマイカに勝ち、得失点差で2位通過を目標とする論調。



実際はクロアチア相手に当時レアル・マドリー所属のFWダヴォル・シュケルの一発で沈んだどころか、(勝手に)最弱と目されていたジャマイカにも1-2で敗戦となっている。



この時は前述の勝ち点4論が叫ばれていたものの、「突破はいける」までは断定するムードではなく、期待と結果が一致した形とも言える。



・2002年日韓W杯(期待度 中・ベスト16)



トルシエ監督が2000年シドニー五輪のU-23日本代表監督も兼任し、4年間準備して臨んだ自国開催W杯。



ベルギー・ロシア・チュニジアという、さほど厳しくないグループだったこともあり、自国開催アドバンテージもあって「GL突破いけるのでは」という戦前の雰囲気。



そして見事GL突破を成し遂げたので、「期待を受けつつ、結果を出した」という今思うと珍しいパターンのW杯だったと言える。



・2006年ドイツW杯(期待度 中・GL敗退)



ジーコ監督が率いて中田英寿中村俊輔稲本潤一小野伸二での「黄金の中盤」とメディアでもてはやされたチーム。(実際には黄金の中盤がスタメンとなった試合はジーコ初戦のジャマイカ戦くらいしかなく、W杯本戦でこの4人の同時スタメン起用は一試合もなかった)



日韓W杯の熱量がそのまま持続して臨んだこと、中国開催2004年のアジアカップで優勝したこと、また、W杯直前のテストマッチでホスト国のドイツ相手に2-2のドローを成し遂げたことから期待度はそこそこ高かった。



一方、ジーコ監督の采配や海外組偏重のメンバー招集に疑問の声を挙げるファンも多く、戦前の期待度は低~高とバラつきがあるものの、フラットに見ると「期待度:中」という認識。



そしてこのチームはGL初戦の対オーストラリアにおけるティム・ケーヒル×2、ジョン・アロイージの衝撃的な3発に沈み(カイザースラウテルンの惨劇)、GL敗退に至った。



2010年南アフリカW杯(期待度 低・ベスト16)



ドイツでの惨敗、中田英寿の引退、オシム監督の体調不良による監督交代、急遽登板となった岡田監督もW杯に臨む直前、日韓戦での完敗でJFA会長に進退伺いをするなど、期待度は本当に低かった。



おそらく、日本代表W杯の歴史において最も期待が低かったチームではないか。



にもかかわらず、当時インテル・ミラノに所属し世界的なストライカーであるサミュエル・エトー擁するカメルーンと、デニス・ロンメダールやヨン・ダール・トマソンを擁するデンマークに快勝してしまった。



「あんなに前評判は低かったのに」、「岡田監督やチームに対する批判は多かったのに」堂々たるGL突破を成し遂げた。



まさに、「期待度や前評判は低かったがW杯で結果残した」最たる事例と言える。



2014年ブラジルW杯(期待度 高・GL敗退)



南アフリカW杯での戦前予想を覆す大健闘で、日本国内において一気にサッカー熱が盛り返し、ACミラン本田圭佑・マンチェスターU香川真司・インテル長友佑都というビッグクラブ所属選手達を擁するチーム編成もあり、期待度は過去最高だった。



アルベルト・ザッケローニ監督が率いたこのチームはカタール開催2011年のアジアカップでも優勝、親善試合でもアルゼンチンやベルギーを下すなど、結果も出していた。



が、W杯に挑む前のコンディション調整に大失敗し、1分2敗という期待を裏切る残念な結果に終わる。



今振り返ってもこのメンバーで結果を出せなかったのが残念なのだが、これは南アフリカW杯と真逆である「期待度や前評判は高かったが、W杯で結果残せなかった」最たる事例と言える。



2018年ロシアW杯(期待度 低・ベスト16)



ブラジルW杯での惨敗、2015年アジアカップでもベスト8敗退からのハビエル・アギーレ監督解任、後継のヴァイッド・ハリルホジッチ監督は選手のクーデターのような形でW杯直前で解任となり、西野朗監督で挑むことに。



二度の監督交代かつ直前の電撃解任でJFA田嶋幸三会長へ強烈なバッシングが吹き荒れる等々、最悪の状況で挑むW杯。チームスカッド以前に、取り巻く環境が過去最悪のため期待度は低かった。



にもかかわらず、初戦のコロンビア戦で4年前の雪辱を果たす勝利から始まり、最終戦のポーランド戦で世紀の談合試合を成し遂げつつ、なんとGLを突破してしまう。(ここで自分は「あれ?日本代表って、前評判低いほうが結果残すな??」と気付き始めた。)



2022年カタールW杯(期待度 低・ベスト16)



この大会は日本代表の実力云々というよりも、とてつもなく厳しいグループに組み込まれたことが全てだった。



優勝経験のあるスペイン、ドイツと同組。この2国を押しのけてのGL突破はほぼ不可能と思われていたため、期待度は “低”。



しかしそんな2国に対して逆転勝利をしてしまうのだから、前評判は本当に当てにならない…。さらにいえばこの2国には勝てたのにコスタリカに負けたあたりもわからない…。



前回大会に引き続き、またも期待度が低いのに結果を残す日本代表の姿を見せてくれた。



期待値ギャップの考察



さて、ここまで過去7回のW杯の振り返りをしたわけだが、何故、このようなギャップが生まれるのか?



様々な理由が推測できると思う。



「メディア等の外部から見た状況と、チームの内情は異なっていた」
「どん底のチーム状況、だからこそチーム一丸となった」
「海外ビッグクラブ所属という肩書だけで期待値は上がっていたものの、W杯開催までに疲労蓄積、または、出場機会を得られずコンディション調整に失敗した」
「W杯前に好成績を残したがゆえに、対戦相手側がかなり綿密に日本代表対策を練った」



この最後の理由について、逆だったのがカタールW杯。



キックオフ直前のロッカールームで円陣を組んだ際、キャプテン・吉田麻也はこう叫んだ。



「ドイツは俺らに負けるなんて一ミリも思ってないぞ。絶対、隙はある」



ドイツ側は弱小国の日本相手なら、本来の実力を出せばたやすく勝てる、まさか負けるわけはないと思っていただろう。(しかも試合後、ドイツ国内で騒がれていたのが、キックオフ直前にホスト国カタールに対する労働環境問題提起のジェスチャーをドイツ代表イレブンが行ったこと。しかも、このジェスチャーをする・しないでドイツ代表内でも意見が割れていたことが発覚。目の前の試合に集中仕切れていない、とドイツメディアから選手達は酷評されていた)



その雰囲気があったせいと断言まではしないが、圧倒的不利とみられていた日本が勝ち、ドイツが負けた。しかし、今回のW杯では日本は相手から研究し尽くされる側となる。弱小国から中堅国へとステージが変わったことにより、その難しさが出てくる。



アメリカ・メキシコ・カナダW杯での展望



この後は今回のW杯における、日本代表の展望について述べていく。



前述のジンクスを踏まえてしまうと、今回のW杯の予想としては「期待度 高・ベスト32」という形になるおそれがある。



日本代表はW杯に挑むメンバーを振り返ると毎回毎回着実にレベルアップし、個の力を確実に付けてきている。「前回大会の方が良いメンバーだった」というのは基本的にはなく、常に歴代最強メンバーを更新し続けていると自分は認識している。



主力選手達のケガが相次いでいるが、それでも、今回もまさに胸を張って「歴代最強」と言えるメンバーであり、「目標は優勝」と選手達も公言している。



こうなると心配なのはこのタイトル通りの不思議なジンクスだ。期待度が低い時は意に反して結果を残す、しかし、期待度が高い時は結果を残せない。



対戦相手はオランダ、チュニジア、スウェーデン。そしてGL突破した場合のベスト32で対戦相手はブラジルかモロッコ。



今までのジンクスを受け継いでしまった場合、「今度こそベスト16の壁を突破し、ベスト8進出を成し遂げる」というメディア・世間からの期待を達成できず、GL突破はするものの、目標からを達成できずベスト32どまりになるのではないかという嫌な予感。



もちろん、杞憂に終わってほしい。



過去の日本代表の戦績を打ち破れるか、「期待度 高・ベスト8」という見事な結果を出すのか、それこそ「新しい景色」に到達できるのか…。期待している。



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筆者:中坊(中坊コラム)



1993年からサッカーのスタジアム観戦を積み重ね、2025年終了時点で1,029試合現地観戦。特定のクラブのサポーターではなく、関東圏内中心でのべつまくなしに見たい試合へ足を運んで観戦するスタイル。日本国外の南米・ヨーロッパ・アジアへの現地観戦も行っている。
中坊コラム:https:note.com/tyuu_bou X:https:x.com/tyuu__bou

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