名門チームに起きた土壇場での悲劇…「1番最悪のゲームになった」
名門チームに起きた土壇場での悲劇…「1番最悪のゲームになった」

[J2第38節ジェフユナイテッド千葉0-4モンテディオ山形、10日、NDソフトスタジアム山形]

6位千葉はJ1昇格プレーオフ(PO)進出をかけて5位山形と対戦。試合開始早々の前半2分に失点して出鼻をくじかれると、同24分には千葉DF松田陸が得点機会阻止によりレッドカードを受けて退場。

同27分、同31分と立て続けに失点を重ね、後半35分に4失点目を喫して完敗。16季ぶりのJ1復帰を逃した。

パニックに陥り完敗

「自分たちが考えていた中で、1番最悪のゲームになった」

千葉はJ1昇格PO進出をかけた一戦で、山形に0-4で敗北した。目を背けたくなるほど苦しい試合を、4-2-3-1のボランチで先発出場した千葉MF品田愛斗(まなと)が振り返った。

前半2分に先制点を奪われた千葉は同27分には、DF松田が山形MF土居聖真をボックス内で倒してしまいペナルティーキックを献上すると、これをFWディサロ燦(あきら)シルヴァーノに決められた。

ファウルした松田はレッドカードを受けて退場し、スコアは2-0になった。ここからアウェイチームはパニックに陥った。

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山形MF土居(右)を倒したDF松田

品田は「10人になったことは痛かった。ハマれば、2点、3点と奪えるチームだと思うので、11人でやりたかったです」とチームメイトの退場を悔やんだが、すぐさま「あれは陸の責任ではない」と言い切った。

「相手から高く上げられたクリアボールが、あんなにいいところへ落ちることなんて、ほとんどない。陸は責任を負ったプレーをしたと思うので、彼を責めることはない」

一人欠けた千葉は、FW田中和樹に代えてDF小川大貴を投入した。なんとかして反撃の狼煙を上げたかったが、直後の前半31分に山形DF川井歩が放ったシュートのこぼれ球を、土居に右足で決められて痛恨の3失点目を許した。

攻撃の糸口を見つけたい千葉だったが、ラストパスがつながらなかった。

MF横山暁之(あきゆき)がドリブル突破からチャンスメイクを試みるも、最後の出しどころを見つけられず、田中を欠き、エースFW小森飛絢(ひいろ)も抑え込まれた千葉にはなす術がなかった。

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中盤のレジスタはチームの混乱を明かした。

「後半のやり方を(10人になったとき)からやりたかった。でも、少しタイプの違う選手がいて、状況も重なってあっぷあっぷになってしまった。ゲーム中だったので(自分の指示が)うまく伝わっていなかった部分もあると思います」

後半、千葉は3-4-2の布陣に変更し、最終ラインに品田を落とした。前半に比べ、相手ゴールに迫る回数が増えたアウェイチームだったが、逆転するには時間と人が足りなかった。

イレブンは試合終了の笛が鳴り響くまで懸命に得点を狙ったが、想いは実らず。後半35分には4失点目を許し、千葉はJ1復帰を果たせなかった。

「千葉で3チーム目ですけど」

今季の初めにJ1・FC東京から期限付き移籍で千葉へ加入した品田。ここまで、持ち前のサッカーセンスと長短を交えたパスで攻守をけん引してきたが、この試合では本来のパフォーマンスを発揮できなかった。

「残り10試合くらいは、自分が勝点を取るのに貢献している手応えがありましたが、それを最後の最後で出せなかった。勝負強さがなかったことは悔しいですし、何よりもみんなの想いをつなげられなかった」

3月26日の千葉加入発表時、品田はFC東京のクラブ公式サイトで「もう一度厳しい環境で自分の価値を示せるよう頑張ってきます」と意気込みを語った。

育成年代を過ごしたクラブから離れ、武者修行の地として選んだチームは25歳にとって特別な場所になった。

「千葉で3チーム目(昨季はJ2ヴァンフォーレ甲府に在籍)ですけど、みんながちゃんとやるチームでした。特に慶行(よしゆき)さん(小林慶行監督)のチーム作りは尊敬しています」

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落胆する小林監督

今季の千葉はシーズン開幕からハードワークを貫き、選手全員が気持ちを一つにして戦っていると伝わってくるチームだった。

けが人が続出する中、品田をはじめとする出番の限られていた選手たちが少ないチャンスで結果を残し、勝ち星を積み上げていく様は、まさに総力戦だった。

指揮官は「誰一人としてチームに対して抗うような言動がなかったというか。みんなが矢印を自分に向けて、自分とチームの成長を促す言動を繰り返してくれました」とイレブンへの感謝を口にした。

クラブ15年目のJ2を戦い抜いた選手とスタッフが見せた姿勢と想いは、サポーターに伝播している。試合終了後、遠い山形の地まで駆けつけたファンは激励と感謝を大声援で伝えた。

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イレブンに熱い声援を送った千葉サポーター

小林監督は、サポーターとの関係について「あのような(サポーターからの)反応を選手たちが引き出したのかと思うと、本当に彼らはすごいなと」と誇りを抱いている。

千葉にとって、リーグ戦復調のきっかけになった天皇杯ラウンド16のJ1北海道コンサドーレ札幌戦後。品田は「どこのチームにも勝てる。もっと成長できる」とイレブンが持つ可能性を振り返った。

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その想いは、J1復帰を逃したいまも変わっていない。千葉の司令塔が信じたチームのレガシーを来季も継承したい。

そして今度こそ、ジェフユナイテッド千葉はJ1の舞台に戻る。品田は「チームを勝たせる選手になる」と決意し、スタジアムを後にした。

(取材・文 浅野凜太郎)

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