スマートフォンの小さな縦型画面に最適化された「短く、速く、密度の高い」ミニドラマ。中国メディアは河南省鄭州市が中国で人気を集める「縦型ドラマ」の新たな制作拠点となり、急成長している、と伝えた。
鄭州は農業大省・河南省の省都。中国通信社(CNS)によると、かつてこの街は「鉄道が築いた街」と呼ばれ、工業都市として知られていた。洛陽市や開封市といった歴史ある古都に比べると、鄭州にはどうしても工業都市の印象が強く、文化的な華やかさや街の風情という面では目立ちにくかった。
データ分析会社DataEyeによると、2025年の中国のミニドラマと漫画動画の年間市場規模は1000億元(約2兆3321億円)に上り、映画興行収入のほぼ2倍に迫った。利用者数は7億人近くでネット利用者全体の約7割を占めている。
こうした新たな映像市場の拡大は都市の勢力図も塗り替える。特に内陸都市にとっては、一気に追い上げる好機となる。そして鄭州は、その波を的確につかんだ。
この急成長の背景には都市の将来を左右する経済的な計算もある。現在、鄭州市の短編ドラマ市場規模はすでに90億元(約2098億9440万円)を超えている。しかも、制作そのものだけでなく、関連するより幅広い産業も育ちつつあり、鄭州は映像業界の人材が戻ってくる街にもなっている。
かつて北京市で働いていた照明スタッフや上海市で活動していた脚本家たちが、次々と鄭州市へ移り、この街に根を下ろしている。すでに関連の就業者は4万人を超えているという。
では、なぜ鄭州なのか。まず大きいのは、しっかりした産業基盤があることだ。少林寺の武術文化、黄帝ゆかりの地、黄河文化といった豊かな歴史資源に加え、鄭州はネット文学の盛んな地域でもある。こうした土壌が脚本づくりの源泉となり、多くの短編ドラマ制作会社や配信プラットフォームを育ててきた。
次に制作コストの安さがある。セットづくり、エキストラ、衣装やメイク、小道具、さらに食事、宿泊、移動まで含めた総合コストは北京市や杭州市よりおよそ3割低いとされる。交通の便も良く、外部から制作チームや関係者が来やすい点も強みだ。予算に敏感な制作側にとって、これは大きな魅力になる。
さらに人材の厚みも見逃せない。業界では中国の映像作品を支える優秀な照明スタッフの多くが河南省出身ともいわれている。
行政の後押しも大きく、従来の管理者という立場から、産業を支える伴走者へと変わってきた。今年の鄭州市政府活動報告でも「ミニドラマ創作の都」が明記され、人材育成の強化、全国規模の脚本取引大会の誘致、作品の海外展開支援などが重点施策として掲げられている。(編集/日向)











