◆JERAセ・リーグ 巨人4―2広島(29日・東京ドーム)

 左手はフェイントだった。一瞬のマジックで、巨人・平山が広島の捕手・持丸をあざむいた。

頭から猛然と突っ込み、タイミングは完全にアウト―に見えた。しかし、いったん突いた左手をタッチの寸前に引き、体を思い切りひねってミットをかわした。ベースから遠い右手で、本塁を払った。判定はアウト。しかし、映像は一連の動きを正確に捉えていた。阿部監督のリクエストで、セーフに覆った。貴重な追加点をゲットする神走塁。ベンチでチームメートに頭をたたかれ、はじける笑顔を見せた。

 2―0の2回1死二、三塁で打席には竹丸。セーフティースクイズで投手前にゴロを転がすと、三塁走者の平山がスタートを切った。50メートル6秒0のスピードと、身につけていたスライディング技術が発動した。“元祖”から教わっていた「神の手」だ。

「2軍のキャンプ中に左手をおとりにして右手を出すというのを練習でやっていたので、それがとっさの判断に出たのがよかったかな」。かつての代走の切り札・鈴木尚広2軍外野守備兼走塁コーチに感謝した。

 足のスペシャリスト・鈴木コーチには、足元を固める重要性も教わっていた。「いろいろなスパイクを使ってみたらと言われて」。ベストな相棒を求めて何種類も試し、たどり着いたのはニューバランス社の大谷翔平モデル。「足首をねんざしたことがあって。ハイカットの方が履きやすくて」と愛用中だ。24年にMLBで史上初の50本塁打―50盗塁を成し遂げた大谷のパワーも借りて、ホームへ加速した。

 ホームイン後は、セーフとアピールするも控えめ。「アウトのタイミングだったんで、ちょっと信用してもらえないかな」とリクエストを強く要求しなかった。「2回だったのでリクエストを1回使うのもな…というのもあった」と、ちょっと遠慮がちだったことを明かした。阿部監督は「もうちょっと本人がアピールしてほしかった」と笑ったが、「大きな3点目だった」と好走塁を評価した。

右翼で4戦続けて先発出場中。レギュラーも、その両手でつかみ取る。(臼井 恭香)

宮本和知Point】見事な平山の走塁だったよね。タイミングは完全にアウト。まともに突っ込んではダメだと判断して、左足のスパイクのつま先で急ブレーキをかけたところが、すごい! タッチのタイミングを、この技で外したんですよ。そして体を回転させて、回り込むように右手でベースタッチ。すべてが一瞬のプレーで、センスの塊のような神走塁。平山の2秒と呼びましょう!

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