今季から担当を持たず、プロ・アマの野球を幅広く取材している。中でも、広島戦は心が躍る。

秋山翔吾のプレーが堪能できるからだ。

 言わずと知れた日本プロ野球シーズン最多安打記録保持者(216安打・2015年)。4月16日に38歳の誕生日を迎えた。

 私が担当したのは、秋山が西武に入団した2011年からの3年間だ。試合がない休日でも、バットを持参して室内練習場に現れ、打撃マシンに対峙していたルーキーイヤーの姿をよく覚えている。

 野球に対して真摯で、鍛錬を怠らない若者だった。攻守(と人柄)に魅了され、今に至る。38歳になった現在でも、秋山のフィジカルはフレッシュだ。試合前には入念に準備を重ね、ヒリヒリした勝負に臨む。

 6日のDeNA戦(横浜)には「1番・左翼」でスタメン出場した。0-0で迎えた3回2死一塁の打席。直前に投手の栗林が犠打を試みながら、スリーバント失敗に倒れた嫌な流れを、左前安打で払拭。

直後の菊池による先制の左越え3ランを見事に呼び込んだ。

 5回、リードが4点に広がり、なおも無死一、三塁。その前には先発したサイド右腕・深沢が栗林の犠打を一塁に悪送球してしまった。動揺があったことだろう。秋山はその隙を突くかのように、しっかりと右前適時打で加点。ともにベテランらしい勝負所を心得た、価値ある2安打だった。

 秋山は言う。

 「自分はそう簡単に、年を取るわけにはいかないんですよ。自分が西武に入団した時の5人の先輩が、ユニホームを着ていますので」

 西武では中村剛也、栗山巧、炭谷銀仁朗。楽天では岸孝之。中日では涌井秀章が、今も現役を続けている。いずれも秋山が新人時代、プロとしての凄みを体現していたトッププレーヤーだった。

 生き馬の目を抜くプロ野球界で輝きを放つその姿は、永遠の憧れ、目標であり続けている。

 「だから自分も、一日でも長くチームに必要とされる存在であり続けたいんです」

 幾多の経験に裏打ちされた技術と、みずみずしい心を携え、秋山はきょうもグラウンドに立つ。所沢の「若獅子寮」で成功を夢見た熱いハートは、あの頃のままだ。(編集委員・加藤 弘士)

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