◆第21回ヴィクトリアマイル・G1(5月17日、東京競馬場・芝1600メートル)

 華々しい船出には、まだ続きがある。橋田調教師は開業19日目にアイサンサン(牝4歳、栗東・橋田宜長=よしたけ=厩舎、父キズナ)で愛知杯を勝利。

1984年のグレード制導入以降、最速で重賞制覇を成し遂げ、今度は84年以降で史上2位となる開業74日目のG1制覇を狙う。

 東京マイルは1戦1勝(昨年10月の鷹巣山特別)。「先行馬に簡単ではない流れで勝ち切りました。今回はG1ですが、舞台設定は悪くないんじゃないかなと思います」と目を輝かせた。

 開業から2か月余り。「本当に人に恵まれたという一言に尽きます」。その視線の先には明るい表情で仕事に励むスタッフがいる。モットーは「相手のためにもうひとつ」。担当馬ではなくても、他者が違った視点で見た印象を伝え、共有することがチーム力を強くする。「いい意味でちょっとおせっかいができる感じがいいかな」と笑う。

 愛知杯のレース後。勝利の報告をしたのが、キズナ産駒の4歳牝馬を今まで手がけてきた佐々木晶三元調教師だ。

開業前から佐々木厩舎へ足を運び、3走前の節分S(6着)では一緒に東京まで臨場するなど細かく情報を教えてもらった。手がける三山助手も佐々木厩舎からの担当を引き継いだ形。「三山さんが佐々木厩舎の生え抜きスタッフで唯一重賞を勝っていなかったみたいで『これで僕は全員勝たせたと言えるよ』と佐々木先生は喜んでいました」。最高の形で恩返しができた。

 競馬への“入り口”はサイレンススズカ。希代の快速馬を手がけた父の橋田満元調教師からは愛知杯の約1時間後に「よかったな」と祝福の電話がかかってきた。毎週、厩舎で水曜に行っている管理馬の馬体チェックにも今まで2度訪れ、そのときには馬の状態や適性など積極的にアドバイスを求める。

 父から開業時にもらった言葉がある。「自分が思っている半分でもできたら上出来と思って調教師はやるもんだ」。人からの愛と絆を感じてきた充実した日々は“半分以上”の手応えがある。そして、アイサンサンとG1初挑戦。「できるだけ平常心というか、馬に不要なストレスを感じてもらうことなく、レースに向かっていけばと思っています」。

感謝の思いを乗せた走りで頂点を目指していく。(山本 武志)

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