◆第93回日本ダービー・G1(5月31日、東京競馬場・芝2400メートル)

 第93回日本ダービー(31日、東京)で24年のセレクト1歳セールで5億9000万円の値がついたエムズビギンが、下克上Vを目指す。登録馬発表時点での出走順位は18番目の滑り込み出走だが、素質は一級品。

ダービーで現役最多3勝の友道康夫調教師(62)=栗東=が「種牡馬にしないと」と期待を寄せるキタサンブラック産駒に注目だ。

 強烈な下克上で、価格以上のインパクトを残す。エムズビギンは一昨年のセレクト1歳セールで国内史上2位となる5億9000万円(※)で落札されたキタサンブラック産駒。「下見の時から体のシルエットが良くて、顔も賢そうないい馬でした。値段には驚きましたけどね」と友道調教師は苦笑いで振り返る。本来は堂々と王道を歩むはずの存在だが、登録時点の出走順で最後の18番目と滑り込むようにたどり着いた。

 何度も足踏みしてきた。落札直後の8月に牧場で飛節後踵を発症。3歳時の1月には舌をかみ、縫合するアクシデントもあった。「秋のデビューすら間に合うかなという感じでした」。昨年10月にデビューしたものの、今度は出遅れたり、挟まれたりと不完全燃焼の競馬が続く。「今までスムーズなレースをしたことがないよね」。

決して、エリートではない。それでも、祭典への扉は開いた。

 誰よりも知り尽くしている。友道調教師は今年で7年連続の出走。目黒記念も行われるダービーデーの東京競馬場には、2013年から14年連続で現場にいる。「やっぱり雰囲気が違う。華やかさのなかにもピシッと緊張感がある。調教師はまた来年もダービーには挑戦できるけれども、馬はこの一回しか挑戦できない。それが緊張感につながっているのかな」。たった一度のチャンスを勝ち取ったのは現役最多の3回。豊富な経験値が結果に結びついている。

 日本で1着賞金最高額のレースはジャパンCと有馬記念の5億円。

それを超える高額馬には、もう一つの使命がある。「競走生活も大事だけど、やっぱり種牡馬にしないと、という気持ちはあるよね」。ダービー馬は目指すべき道を切り開く何よりの称号になる。「スムーズな競馬で力を出し切ってほしい。それで、どこまでやれるかだね」とトレーナー。今年の友道厩舎は未知の魅力にかける。(山本 武志)

 (※)1位は06年のセレクトセール当歳で6億円のディナシー(牝)。

 ○…エムズビギンとコンビを組むのは初の短期免許で来日中のゴンサルベス。ここまで4週で8勝と順調に勝ち星を積み重ねている。栗東での1週前追い切りに駆けつけ、感触を確認。「力(パワーを)をいっぱい持っている。リラックスできるか」と印象を口にする。

主戦場とするアルゼンチンでダービーと言われるナシオナル大賞では19、21年と2勝。「ジョッキーには『楽しんで乗った方がいいよ』と伝えました。未知なジョッキーで新鮮ですね」と友道調教師も期待を寄せる。

 ◆高額市場取引馬の重賞勝ち 最高額は3頭で2億5000万円。トーセンスターダム(12年セレクトセール1歳)は14年きさらぎ賞、チャレンジCを制覇。ダノンチェイサー(17年セレクト1歳)は19年きさらぎ賞、デシエルト(19セレクト当歳)は24年中日新聞杯。なお、G1勝ち馬のセリ最高額はロブチェンの父ワールドプレミアで2億4000万円(16年セレクト当歳)。19年菊花賞、21年天皇賞・春とG1を2勝した。

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