◆第108回全国高校野球選手権大会第12日 ▽3回戦 有明4―1東日本国際大昌平(16日・甲子園

 春夏通じ初出場の有明(熊本)が、3戦連続の逆転勝ちで8強入りを決めた。1点を追う8回に重盗など足を絡めた攻撃で4点を奪って逆転。

投手陣では先発予定だった工(たくみ)修哉投手(3年)が試合前に左手を負傷した影響で、急きょ先発した斉藤遼汰郎投手(3年)が9回5安打1失点で完投した。聖地で旋風を巻き起こしているナインが7月28日に起きた「令和8年熊本地震」で被災した地元に3つ目の白星を届けた。準々決勝では甲子園初の群馬・栃木対決を制した健大高崎と対戦する。

 有明ナインがまた土壇場で勝利の流れを呼んだ。追い上げムードが聖地を包み始めた中で迎えた1点ビハインドの8回2死満塁。代打で登場した今大会初打席の広沢遼太朗の打球が三遊間を破る。試合をひっくり返す2点適時打となり、どよめきも交じった歓声がこだました。さらに2点を追加し驚異の3戦連続逆転勝ちで8強入り。“逆転の有明”を率いる高見一茂監督(46)は「球場がまた後押ししてくれた。選手が一生懸命考えてプレーしてる結果」と感慨深げに言った。熊本県勢の甲子園初出場校としては初の1大会3勝。ミラクル白星を重ね、歴史を刻んだ。

 突破口は有明野球で切り開いた。7回までは4安打無得点と苦戦。それでも、焦りはなかった。逆転劇の8回は無死一、二塁、投手が変わったばかりの初球で重盗を成功。サインではなく、選手の判断で走る「グリーンライト」で決めた。この回4盗塁を絡めて4得点。「足が売りのチーム。自分たちらしい野球ができた」と指揮官。有明海干潟の看板生物にちなみ、泥臭く勝利を追い求める姿勢から「ムツゴロウ打線」の愛称が定着しつつある攻撃を、磨いてきた機動力で彩った。

 アクシデントを乗り越えた勝利でもあった。先発予定の工が試合前練習でバットが当たり、左手を負傷。工から斉藤に継投するダブルエースによる「タクミ・サイトウ」が必勝パターンだったが、急きょ斉藤が先発することになった。

緊急事態で高見監督はナインに呼びかけた。「工にもう一回このグラウンドでやってほしい。カバーできるように全員でやろう」。一丸ではね返す覚悟が決まった。

 先発の最速146キロ左腕・斉藤も奮起した。登板前。目を潤ませた工から思いを託された。「ごめん、任せたよ」。認め、高め合ってきたライバルの目には涙が浮かんでいた。「粘り強く投げようと思った」。9回5安打1失点で完投。気迫の投球で救った。

 地震で被災した人も駆けつける中でのミラクル勝利。指揮官は「避難所で応援してくださる方もたくさんいると聞いているので、元気をまた届けられた」と胸を張った。準々決勝は18日に健大高崎と対戦。“有明旋風”はまだ止まらない。(宮内 孝太)

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