先週の日経平均は、週前半の軟調な展開から一転、終値ベースでの最高値を更新しました。株価反発の背景には、中東情勢の緊迫緩和期待や米エヌビディアの好決算、ソフトバンクグループの急騰があります。
先週の日経平均は下落基調から最高値更新に転じる動き
先週末5月22日(金)の日経平均株価は6万3,339円で取引を終えました。
前週末の終値(6万1,409円)からは1,930円高(3.14%高)となったほか、終値ベースでの最高値を更新して1週間の取引を終えました。週間の値動きを振り返ると、軟調な展開から大きく切り返している様子がうかがえます。
<図1>日経平均の5分足チャート(2026年5月18日~5月22日)
図1の日経平均の5分足チャートで確認すると、週半ばの20日(水)まで、日経平均は軟調な展開となっていました。
中東情勢で大きな進展が見られず、原油価格が高止まりしていたことや、日米の金利(債券利回り)の上昇が目立っていたこと、注目の米エヌビディア(NVDA)決算を控えた様子見などが挙げられますが、とりわけ株式市場が意識していたのは金利の上昇でした。
日米の債券市場の動向を見ると、国内の10年債利回りが一時2.8%に達し、29年半ぶりの高水準を記録したほか、米10年債利回りも4.67%まで上昇する場面がありました。
20日(水)の取引終了時点で日経平均は5日続落、そして節目の株価水準である6万台も下回る軟調な展開が続いていましたが、翌21日(木)から週末22日(金)にかけては、一転して株価が大きく切り返す動きとなりました。
株価反発のきっかけとなったのは、米国とイランの交渉をめぐるトランプ米大統領の発言でした。「(交渉が)最終段階にある」と述べたことで中東情勢への不安が後退し、原油価格や債券利回りなどが低下したことが主因となっています。
また、日本時間21日(木)の朝に発表された米エヌビディア決算も追い風となりました。決算を受けて、エヌビディアの株価自体は下落で反応したものの、売上高や利益が市場予想を上回り、自社株買いも発表。出てきた数字の内容は強く、あらためて旺盛なAI投資需要が確認され、直近まで売られていたAI・半導体関連銘柄の多くが買い戻される動きを見せました。
日経平均最高値更新の功労者は?
日経平均が再び終値ベースでの最高値を更新してきたことで、相場は再び息を吹き返しつつあるような印象となっていますが、先週の日経平均の値動きに大きく貢献したのは指数寄与度の大きいソフトバンクグループ(9984)でした。
<図2>日経平均寄与度ランキングの状況(2026年5月15日と5月22日終値を比較)
■日経平均の週間上昇幅:1,930円
・上昇した銘柄は98銘柄、上昇寄与度の合計:+2,921円
・下落した銘柄は127銘柄、下落寄与度の合計:マイナス991円
図2を見ても分かるように、先週の日経平均の上昇幅(1,930円)のうち、ソフトバンクグループの上昇寄与度(814円)は、約42%を占めています。
<図3>ソフトバンクグループ(日足)とMACDの動き(2026年5月22日時点)
図3はソフトバンクグループの日足チャートとMACDの推移を示したものです。21日(木)と22日(金)の両日の取引で、いわゆる「窓空け」を伴いながら、株価が急騰している様子がうかがえます。また、昨年10月29日の取引時間中につけた高値(6,923円)に迫るところまで株価水準が切り上がっていることが分かります。
こうしたソフトバンクグループの株価急騰には、主に2つの要因があります。
一つは、「傘下の英アーム・ホールディングス(ARM)の株価が急上昇したこと」です。アーム社が開発している自社製AIチップ「Arm AGI CPU」の生産立ち上げが順調(強い需要見通し)であることや、先週発表された米エヌビディア決算を通じて、アーム社のライセンス料やロイヤルティによる収入が堅調であることが確認されたことが好感されました。
もう一つは、「多額の出資をしている米オープンAIの株式の新規公開(IPO)の観測が高まったこと」です。「オープンAI社が早ければ近日中にもIPOの申請準備に入り、上場時期は最短で今年9月を目指す」という一部報道が駆け巡りました。
ソフトバンクグループはオープンAI社の株式を多く保有しており、IPOが実現することによって、ソフトバンクグループの保有資産価値(NAV:純資産価値)が一気に跳ね上がるとの期待が株価上昇につながったと思われます。
こうした材料を基にソフトバンクグループの上昇基調がまだしばらく続く可能性は高そうですが、株価と25日移動平均線との乖離が22%まで進んでいる過熱感には注意が必要です。
また、アーム社の株価上昇についても、従来の「半導体設計事業」として、顧客(エヌビディアやアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)、クアルコム(QCOM)など)と関わってきたのが、自社ブランドのAIチップを製造・販売事業も行うことによって、新たに競争が生まれることや、利益相反(技術の囲い込み・顧客の機密情報の流用)リスクが懸念されることも考えられます。
さらに、オープンAI社だけでなく、ライバル企業のアンソロピック社も年内にIPOが行われる見込みとなっており、かねてより指摘されているオープンAI社の財務リスクや収益性懸念が、アンソロピック社との比較によってあぶり出されることも考えられます。そのため、ソフトバンクグループに対する足元の期待感が萎んでしまう展開には注意しておく必要がありそうです。
今週の注目点は?
そんな中で迎える今週の株式市場ですが、5月の最終週となります。日米の決算シーズンをほぼ通過したことにより、相場の視点は先週の株価反発のきっかけとなった中東情勢の収束期待や、経済指標を通じた景況感とインフレ動向をにらみながらの展開が想定されます。
中東情勢については、「カタールの交渉団がイランのテヘランに入った」と週末の22日(金)に報じられたこともあり、和平もしくは停戦期間の延長が実現する可能性が高まったとして、ひとまず株式市場に安心感をもたらすことになりそうです。
また、金利動向については、さきほども述べた通り、日米の金利の上昇(債券利回りの上昇)が目立っています。5月22日公開「3分でわかる!今日の投資戦略」のレポートでも指摘したように、金利の上昇は株式市場にとってネガティブに働きやすく、株価収益率(PER)の低下など、株価上昇のハードルは高くなりつつあります。
▼あわせて読みたい
いまさら聞けないPER低下と金利上昇との関係(土信田雅之)
さらに、来週の6月相場入りが意識される中、日米の金融政策イベントの開催も迫りつつあります。具体的には、6月15~16日に日本銀行の金融政策決定会合、6月16~17日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が予定されています。
直前の6月12日には国内の株価指数先物・オプション取引の特別清算指数(メジャーSQ)という需給イベントも控えているため、金利の動きに株式市場が敏感に反応しやすい相場地合いに需給の思惑が加わって、株価が大きく動く場面が増えることになりそうです。
日経平均はどこまで上を目指せるか?
最後に、今まで見てきたことを踏まえ、「足元の日経平均がどこまで上昇できそうか?」について、テクニカル分析の視点でいくつか考えていきたいと思います。
<図4>日経平均(日足)の多重移動平均線とMACD(2026年5月22日時点)
図4は日経平均(日足)の多重移動平均線と、下段にMACDを描いたもので、前回のレポートでも紹介した図になります。
▼前回のレポート
日経平均、最高値から急反落。
前回のレポートでは、「今後の株価が多重移動平均線の下限の線を維持できるのであれば、上昇基調は継続することになる」と指摘していましたが、結果的に先週の株価は多重移動平均線の下限の線あたりで踏みとどまり、上昇基調が維持される格好となりました。
また、株価水準で見ても、6万円台割れで買いが入って株価が反発していったことで、4月の半ばから5月にかけて「抵抗(レジスタンス)」として意識された6万円水準が、足元では「支持(サポート)」として機能する役割の変化が起きました。
これにより、株価は上を目指しやすくなったと考えられ、直近の取引時間中の高値(6万3,799円)を超えていけるかが目先の焦点になります。
仮に、直近の高値を超えてきた場合、先ほども触れた株価指数先物・オプション取引のメジャーSQの思惑も絡んでくることが想定されます。
23日(土)の朝に取引を終えた日経225オプション取引の夜間取引(ナイトセッション)の状況を見ると、6月限のコールの買い建玉は、権利行使価格6万5,000円で5,188枚、同6万8,000円で4,428枚、同7万円で2,754枚と、現在の株価よりも高い権利行使価格でかなりの建玉が積み上がっています。
現在の株価より少し高い位置の権利行使価格(アウト・オブ・ザ・マネー)に、多くのコールの買い建玉がある場合、株価がその価格に近づくほど、コールの売り方(マーケットメーカーなど)は損失が発生することになるため、投資家が権利を行使した時に備えて、あらかじめ現物株を少し買っておくという行動に出ます(これをデルタヘッジと呼びます)。
こうした動きはオプション取引の満期(SQ)が近づくにつれて、加速度的に強まる傾向があり、「ヘッジ買い」が増長する可能性があります。つまり、「株価上昇 → ヘッジ買い → さらに上昇 → さらにヘッジ買い」といった連鎖が働くことで、株価がスルスルと上昇していく展開が起こり得るわけです(これをガンマ・スクイーズと呼びます)。
そのため、相場の継続性は別として、日経平均が一気に6万5,000円台や6万8,000円台まで上昇してもおかしくはないことは意識しておく必要があります。
もっとも、同じくトレンドの勢いを探る下段のMACDを見ると、MACDがシグナルを下回っており、上抜けクロスを実現できなければ、再び売りが加速する展開も考えられるため、注意しておきたいところです。
(土信田 雅之)

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