2026年のプロ野球ペナントレースが開幕して、早くも1カ月半が過ぎた。今シーズンは、ヤクルト・池山隆寛監督、DeNA・相川亮二監督、ロッテ・サブロー監督の、3人の指揮官が誕生した。
【若手を伸ばす池山流マネジメント】
「現役時代からよく知っているのは、ヤクルトの監督を務める池山だ。昨年までは二軍監督をやっていたんだったな。新聞記者からは、『若手が伸び伸びとプレーできる環境づくりに力を注いでいた』と聞いている。そもそも二軍というのは、結果よりも選手の成長を促す場であるべきだ。当たり前のことをやったまでだが、今はその当たり前を当たり前にできない人間が多すぎるからな」
そう言って苦笑いを浮かべると、言葉を続けた。
「"ブンブン丸"という異名のせいで豪快なイメージを持たれがちだが、実際は細かいところまでよく見ていて、周囲への目配りや気配りもできる人間だ。野村(克也)もよく言っていたよ。『あいつほど見た目とのギャップがあるヤツはいない。ああ見えて、ミーティングでは細かくノートを取るし、本当に勉強熱心なんだ』とな。人生はいくつになっても勉強。それがわかっていないヤツがほとんどだからな」
広岡が評価するように、池山監督は豪快な見た目のイメージとは裏腹に、人当たりがよく、データ収集にも積極的に取り組む理論派でもある。そして何より、持ち前の明るい性格がチームの雰囲気をよくしている。
「池山が一軍で出るようになったのは、関根(潤三)さんが監督をしていた頃だったかな。関根さんは放任主義というか、選手を自由に伸び伸びとやらせるタイプだった。しかも、『池山を使う』と決めたら、ミスをしても打てなくても、きちんとフォローしながら辛抱強く起用し続けた。まあ、池山のメンタルの弱さも考えての起用法だったんだろう。
結局、監督というのは、どれだけ我慢できるかで力量がわかる。池山自身にそういう原体験があるから、若手選手の扱い方がうまいんだろう。今の子どもたちは、少し厳しくされるだけで、すぐに『体罰だ』と騒がれる時代だ。そういう時代なんだから仕方ないが、体罰とは無縁の環境で育ってきた選手たちを指導するには、ミスを必要以上に責めず、長所を伸ばしてやることが大切なんだ。池山の指導法は、今の時代に合っているんだと思うよ」
新監督というのは、自分の色を出したいあまり、ベテランを切り捨てて若手を積極的に起用したがる傾向がある。だが、その一方で、結果を求めるあまり、若手を辛抱強く使い続けることができない。すると、起用が中途半端になり、それがチーム内の悪循環を生み、やがて雰囲気まで悪くしてしまう。これは、新監督が最初のシーズンで陥りがちな典型的な失敗例と言えるだろう。
【あの状況からよく立て直した】
そして話は、DeNAの相川監督へとつながった。
「相川亮二もよくやっていると思うよ。開幕4連敗でスタートし、一時は中日と最下位争いをしていたが、牧(秀吾)や筒香(嘉智)といった主力に故障者が続出するなかで、4月を勝率5割で終えた。あの状況からよく立て直したと思うよ」
広岡にしては珍しく、ねぎらいの言葉を口にした。
「開幕から10試合の時点では、起用法も采配も心許なく、勝負運にも見放されている感じがした。ただその後、故障者が続出したことで、結果的にいろいろな選手を試すことができた。開幕ローテーションの半分以上がケガや不調で離脱し、打線の主力まで欠けた。これだけ想定外の事態が重なれば、どんな名監督でも簡単には立て直せない。だからこそ、これまで出場機会の少なかった選手を起用するしかなかったわけだが、そのことが逆にチームの活性化につながった。
実際、若手の篠木(健太郎)や島田(舜也)が先発で結果を残し始めており、シーズン序盤だからこそできる"試行錯誤"は、ひと通りやりきったのではないか。正直、あの苦しい状況から、わずか1カ月でここまで戦えるチーム状態に戻したのは見事と言える。主力が復帰するまでは、無理に固定メンバーで戦うよりも、積極的に選手を入れ替えながら戦力の最大化を図るやり方でいいだろう。もっとも、現状はまだ選手頼み、流れまかせの試合も多い。
これだけ離脱者が続出してしまえば、さすがに打つ手も限られてくる。だからこそ、思いきった若手起用に踏み切ることができ、その若手たちも期待に応えたことで、DeNAは4月を勝率5割で終えることができたのだろう。
ただし、指揮官の迷いがチーム全体に伝わってしまえば、若手のモチベーションは一気に下がる。だからこそ、選手たちにも「チームがどこを目指しているのか」が見えるような指揮を執り、土台づくりを進めていくことが重要になる。
池山監督と同じく、相川監督もまた優秀なモチベーターであることを期待したい。
【あの行動は余裕がない証拠だ】
そして、パ・リーグ最下位に沈むロッテの新監督・サブローについて話が及ぶと、広岡は苦々しい表情を浮かべながら言葉を続けた。
「前任の吉井(理人)は、メジャーでしっかり学んできたこともあって、マネジメントを重視し、選手の自主性を尊重したチームづくりを進めていた。だが、結果は出なかった。そこで、後任のサブローはメンタルトレーナー制度も廃止し、気合いや根性を重視する"昭和型"の指導へ舵を切った。別に、昭和の指導法が悪いと言いたいわけじゃない。厳しさはどんな時代でも絶対に必要だし、選手を伸ばすにはアメとムチの使い分けが大事だと思っている。ただ問題は、そのやり方だ」
1950年代半ばから本場アメリカの野球をつぶさに見続け、合理的かつ組織的なメジャーリーグの運営手法に強い影響を受けてきた広岡だけに、吉井が目指していたマネジメント型のチームづくりには、一定の理解を示していた。
とはいえ、広岡は「日本の野球はメジャーの真似ばかりしている」と一刀両断する。日本野球のよさは、"礼に始まり礼に終わる"という武士道にも通じる精神性にあるというのが持論だ。だからこそ、「自己鍛錬を怠ってはいけない」と、広岡は今も口酸っぱく説いている。
「(4月12日の西武戦、9回二死の場面で)ベンチ内で、監督のサブローが、バッテリーの意見を聞こうとしてベンチを出ようとしたピッチングコーチの黒木(知宏)の袖を強く引っ張り、制止したシーンが話題になった。だが、あんなものはチーム状態がよければ、どうということはない。結局、負けが込んでいるからこそ、メディアが面白がって騒ぎ立てているだけなんだよ」
広岡は、映像を見ながらさらに激しく言う。
「おそらく黒木は、サブローに確認を取ろうとしたが反応がなく、それならコーチとしての役割を果たそうとマウンドへ向かおうとしたんだろう。そこを、言葉ではなく力づくで止められた。そんなふうに見えたな。あれは、監督に余裕がない証拠だ。
ベンチ内で選手に厳しい言葉をぶつけるのは構わん。だが、同じスタッフであるコーチに対して、誤解を招くような行動をとってはいけない。
もっとも、最後は「そうした失敗を繰り返しながら、監督というのは成長していくものだ」と、どこか温かい表情を浮かべながら語っていた。
どこか1チームが独走してペナントレースをつまらないものにしないためにも、新監督3人には、オールスターまでに勝率5割を維持しながら、どれだけ貯金を積み上げられるかが問われる。まだまだ今季のペナントレースを面白くする余地は十分に残されている。










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