韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領は6月29日、半導体産業を国家戦略の最高位に押し上げると宣言し、1000兆ウォン(約110兆円)の巨大な投資計画を発表した。この投資額は2025年の韓国の国内総生産の40%に相当し、市場変動の巨大なリスクも伴う国家レベルの大ばくちだ。

李大統領は現在のAI競争を国家の前途に関わる「全面競争」と形容した。香港誌の亜洲週刊が伝えた。

韓国はかつて、鉄鋼、造船、自動車などの産業で「漢江(ハンガン)の奇跡」と呼ばれる経済成長を成し遂げた。しかし今や、国家戦略を担うのは数センチメートル四方のハイエンドメモリーチップだ。1980年代に韓国企業がメモリー競争に参入した当初、独自の技術や量産経験は不十分であり、相手は先行する米国と日本の大企業だった。メモリーチップ業界は、価格上昇時にはどの企業も懸命に増産し、価格下落時にキャッシュフローが悪化しても次世代設備への投資を続けねばならない「残酷な戦場」だ。どん底の時期に投資を止めれば、次の需要回復期に市場における地位を失うことにつながってしまう。

韓国企業はこうした極限の圧力下で独自の産業の性格を形成した。サムスンのメモリー事業は1986年に巨額の損失を出し、SKハイニックスの前身も債務危機に陥り、マイクロンに売却されそうになる危機を経験した。しかし、幾度もの不況が弱者を容赦なく淘汰し、ドイツのキマンダや日本のエルピーダが撤退を余儀なくされる一方で、韓国企業の「苦しい時にもしっかり投資」の考え方と、そのことを可能にした資金力が真価を発揮し始めた。不況下でも技術者を確保して投資を続けたことで、価格回復時に莫大な利益を「収穫」してシェアを拡大する盤石なメカニズムを構築したのだ。

世界のDRAM市場は最終的にサムスン、SKハイニックス、米国マイクロンの大手3社に絞られた。

勢いよく浮き上がった次には大きく沈み込むという「過酷な周期」を乗り越え、安定して納品を続けてきた韓国企業が得た信用は、現在のAI全面戦争において生き残るための最も「強力な資本」になった。そして現在のAIの波がメモリーチップの需要を爆発的に押し上げたことで、韓国は大ばくちを打つ決意を固めた。

AIサーバーにとっての中核部分の一つが、画像処理装置(GPU)だ。パラメータの読み込みや計算結果の書き込みなど、GPUの性能が向上するほど、データを待つ時間は大きな損失をもたらすことになる。現在普及している2種類のメモリーチップであるDRAMと広帯域メモリー(HBM)はいずれもGPUの性能を左右する要素だ。通常のDRAMが作業用メモリーの機能を担うのに対し、ハイエンドなHBMはデータを十分に速くGPUに送れるかという最大の課題を解決する手段だ。

製造難度が高く量産拡大が遅いHBMは、AIサーバーの製造における最大の「ボトルネック」になった。そのことで、いち早くHBMの顧客を開拓したSKハイニックスは、株式市場でAI関連銘柄の筆頭格と見なされるようになり、サムスンも圧倒的な規模と経験により代替不可能な存在感を示すようになった。李大統領の打ち出したプロジェクトは、こうした個別企業の能力を国家の能力へと全面的に格上げする試みだ。

半導体が計算能力の基盤を提供し、AIデータセンターがモデル訓練を担い、実働部分と直結するAIが製造や工業現場にアルゴリズムを導入する構図が形成されつつある。強力なメモリー企業を持つだけではサプライチェーンの結節点に過ぎないが、これらを一つの体系につなぐことができれば「代替不可能な韓国」になれる。既存の竜仁(ヨンイン)や平沢(ピョンテク)といった拠点は電力と水資源が限界に達している。

そのため湖南(ホナム)や南西海岸が、新たなインフラ拠点としての役割と、長期的な地域不均衡是正という政治の課題を背負うことになった。

しかし、この戦略には巨大なリスクも内在する。半導体は韓国最強の産業だが、前述のように市場の変動の影響を大きく受けやすい特徴がある。そして1000兆ウォン規模の投資が実行されれば、韓国経済全体の特定企業や海外顧客への依存度はさらに高まるはずだ。もし供給網の再編や大手3社の同時増産による供給過剰が起きれば、今日の戦略資産は国家の経済安全を脅かす圧力源に転じる。今回の「賭け」は過去の成功体験を踏襲しつつも規模が桁違いであり、失敗した際のリスクは予想が極めて難しい。(翻訳・編集/如月隼人)

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