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幻の三島由紀夫映画「Mishima」を観るチャンス!

2010年12月10日 11時00分 ライター情報:近藤正高

映画「Mishima」(1985年公開)の脚本は、監督を務めたポール・シュレイダーとその兄のレナード・シュレイダーが共同執筆。レナードは60年代末から70年代初めにかけて日本の大学で講師をしており、その間、生前の三島とも親交を持った。画像は、フィリップ・グラスによるサントラを収めたCDのジャケ写。三島に扮した緒形拳が咆哮している。

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和歌山県・太地町のイルカ追い込み漁を取材したアメリカのドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」(ルイ・シホヨス監督)の日本での公開をめぐり、激しい議論が巻き起こったことは記憶に新しい。5年ほど前には、ロシア人映画監督、アレクサンドル・ソクーロフが終戦前後の昭和天皇を描いた劇映画「太陽」について、やはり日本で公開されるかどうか話題となった。

「ザ・コーヴ」と「太陽」が議論を呼んだのは、それぞれイルカ漁と昭和天皇という、日本ではいわばタブー視されるテーマを含むものであったからだ。ただし、結果的にいずれの作品も日本公開が実現している。

これに対して、監督以下、主要スタッフの大半はアメリカ人ではあるものの、ほかならぬ日本のとある作家をテーマに、日本人の俳優が日本語のセリフで演じているにもかかわらず、完成後25年経ったいまでも日本での上映が実現していない映画が存在する。そのタイトルは、「Mishima: A Life In Four Chapters」……そう、三島由紀夫の生涯を描いた作品だ。日本での公開が実現していないのは、三島の遺族(とくに三島夫人)が許可しなかったからだとされる。

その“幻の映画”「Mishima」を、私が初めて観たのは4年前だっただろうか。東京・野方の駅前にあったレンタルビデオ店で、たまたま同作の輸入盤ビデオを見つけたのだ。そのときの印象は鮮烈だった。あまりにも面白くて、返却前にもう1回観かえしたほどである。以下、当時のメモを参考にしつつ感想を記してみたい。

度肝をぬく映画美術
この映画を構成する「1.beauty(美)」「2.art(芸術)」「3.action(行動)」「4.harmony of pen and sword(文武両道)」という4つのチャプター(4幕)のうち1〜3では、三島の代表作として『金閣寺』『鏡子の家』『奔馬 豊饒の海・第2部』がとりあげられている。

それらを挟むように冒頭と終盤では、三島(演じるのは緒形拳)が1970年11月25日、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地でクーデター決起を呼びかけたのち自決するその当日がドキュメンタリータッチで描かれ、さらに全編にわたって、三島の生涯を振り返るシーンがことあるごとにモノクロームで挿入される。

たとえば、『奔馬』の主人公・飯沼勲(演じるのは永島敏行)が割腹自殺をはかろうとすると、いきなり、三島が自作の映画『憂国』の切腹シーンを撮っている場面へと切り替わる(この部分は同時に、ラストシーンの伏線にもなっているわけだが)。

ライター情報

近藤正高

ライター。1976年生まれ。エキレビ!では歴史・科学からドラマ・アイドルまで手広く執筆。著書に『タモリと戦後ニッポン』(講談社現代新書)など。愛知県在住。

URL:Culture Vulture

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