新『転校生』より刺激的!? 超部分的・男女逆転マンガ
<a href=http://item.excite.co.jp/detail/ASIN_4091802451/>『転校生 オレのあそこがあいつのアレで』</a>(古泉智浩/小学館 2006年3月刊)。巻末の作者の「男社会は実力社会、女社会は雰囲気社会」という分析も面白い。
大林宣彦監督の名作『転校生』が、本人のリメイクにより、舞台を尾道から長野にうつして蘇ったことが、話題となっている。
そんなリメイク版『転校生 さよならあなた』よりもさらに衝撃的で、リアルで、なにより超お下劣な男女逆転劇を描くマンガがあったことをご存知だろうか。


『転校生』の原作である『おれがあいつであいつがおれで』ならぬ、『転校生 オレのあそこがあいつのアレで』(古泉智浩/小学館 2006年3月刊)。
「あそこ」「アレ」とは、まさにあの部分のことであり、男女のからだと心が入れ替わるのではなく、男女の「部分」のみが入れ替わるという話だ。入れ替わるきっかけは、石段を二人で転げ落ちたことだったりと、ちゃんと「転校生」の名を冠しているだけあって、部分的に元ネタに忠実なところもある。場所は尾道でも長野でもなさそうだけど。

これ、ばかばかしい設定ながら、男女の心理描写が実にリアルで、思わず唸らされる個所が多い。
あるきっかけで、「アレ」がなくなってしまった茂と、「あそこ」に「アレ」がついてしまった梨佳。
2人のパッと見の容姿は変わらず、「部分」が変わっただけなのに、不思議と、人格にも大きな影響が出てくるのである。
たとえば、もともと素っ気なかった茂は、「アレ」がなくなってしまった重大さに気づくと、いきなり梨佳の携帯に12件も着信を残すという別人ぶり。
対して、茂の愛情に疑問や不安を抱きがちだった梨佳は、「アレ」がついたことで突然、性に対して貪欲になり、「よく分かんないけど、そのうち戻るかもしんないし」と、事実を軽く受け入れている。
そして、アレがなくなってから、用もなく電話したり、レスしづらいメールをやたら送るようになった茂。学校でうんこができなくなったり、ファーストフード店内で、梨佳への長文メールを書きつつ、ふと冷静になり、「なんだこの文章は……キモい……」と、自らの変化に戸惑いを見せてもいる。
一方、梨佳は、茂を嫌いになったわけでもないのに、一緒に帰るのをめんどうに思ったり、女子同士でも群れず、「デスノートを読みながら、一人で弁当を食う」ようになったりと、男化していくのだ。


たかが「アレ」、されど「アレ」。もはや人格のほうが、アレに支配されている感覚で、荒唐無稽なのに、なぜかヘンな説得力がある。
ちなみに、個人的に衝撃だったのは、「男化」した梨佳が、工事現場で塀を削る様を見ながら、ふいにムラムラしていること。
これが一般男子の標準的な生理現象とは思えないが、「男ならでは」の不可思議なからだの反応って、きっとたくさんあるはずだ。そして、それは女も同じに違いない。

何より、いちばん不思議なのは、終始お下劣でばかばかしい作品にもかかわらず、読後感は、まるで純愛マンガを読んだような爽やかさが残るということ。
アレコレむずかしく考える頭より、「アレ」は純粋で、まっすぐなのでしょうか。
ただし、女性には反感を買うこともありそうだし、下ネタが苦手な人には決してオススメできません。悪しからず。
(田幸和歌子)
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