≪中国共産党は抗日戦争の中流砥柱(しちゅう)(主力)だ≫。習近平のスローガンで、元は毛沢東の言葉。
台湾国史館のデジタルアーカイブが抗日戦争期の軍事機密電文を公開した。それを著者が読解。毛沢東の「721方針」は党拡大に70%、国民党の対応に20%、抗日戦に10%の力を注げとした。共産党軍は日本軍と協定し、攻撃されない。両軍で国民党軍を挟み撃ちしたりした。日本の軍服で日本語を話し、日本軍を装って国民党軍を攻撃しさえした。
本書は重要情報が山盛りだ。西安事変の主役は張学良でなく毛沢東。薄一波は江沢民が親日スパイの子と知りつつ彼を鄧小平に推薦、息子の薄煕来(きらい)をよろしくと頼んだ。スターリン~毛沢東~蔣介石の国際政治の駆け引きも電報からよくわかる。
中国は対日カードに歴史を持ち出すが、歪曲(わいきょく)しているのは当の中国。本書が参照するような史料は国がデータベースにして中国語、日本語、英語で読めるようにすべきだ。中国の人びとも助かるだろう。学問と外交のイロハを教えてくれる遠藤誉氏にいくら感謝しても足りない。
【書き手】
橋爪 大三郎
社会学者。1948年生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。執筆活動を経て、1989年より東工大に勤務。現在、東京工業大学名誉教授。著書に『仏教の言説戦略』(勁草書房)、『世界がわかる宗教社会学入門』(ちくま文庫)、『はじめての構造主義』(講談社現代新書)、『社会の不思議』(朝日出版社)など多数。近著に『裁判員の教科書』(ミネルヴァ書房)、『はじめての言語ゲーム』(講談社)がある。
【初出メディア】
毎日新聞 2026年5月9日
【書誌情報】
台湾軍事機密文書が語る中国「抗日戦争」の真相著者:遠藤 誉
出版社:新潮社
装丁:新書(224ページ)
発売日:2026-04-17
ISBN-10:4106111225
ISBN-13:978-4106111228