今回が第46回となる東京モーターショー(以下、TMS)は、ビッグサイト、メガウェブ&青海エリア、それをつなぐ1.5kmのプロムナードを活用した分散した会場で開催された。入場者は1991年に200万人を突破するが、その後次第に減少、前回は77万人となった。

今、クルマ社会は大きな転換期を迎えつつあり、TMSの主催団体である日本自動車工業会(自工会)の危機意識も強く、今回のTMSは大きな変革を模索したものとなった。

 以下は、自工会会長・豊田章男氏のメッセージのエッセンスだ。

「TMSは大きな変革期を迎えている。従来と同じ展示会ではなく、新しいチャレンジ、新たな表現のモーターショーにしてゆくことが大切だ。お台場のビッグサイトだけではなく、お台場周辺、全体をショーの場として、多くの来場者が楽しんでもらえ、また体験してもらえるTMSにすべくつくりあげたい。目標は100万人」

 以下の図が、今回の会場マップだ。

 TMS終了後の自工会の発表によると、今回の入場者数は、有料、無料ゾーン合算で130万900人になったとのこと。今回のショーは、それなりの成果を上げたと言っていいだろう。ただし、無料ゾーンの入場者には入場料を払った人たちもカウントされるため、有料ゾーンの入場者数も発表すべきだと思う。以下のように、ショーの中身に関する私のコメントは後述するオピニオンリーダー同様、厳しいものとならざるを得ない。

TMSの短評と今後の提案

 以下は、私の「ゾーンごとの短評」と「今後のTMSへ向けての提案」だ。

<FUTURE EXPO>

 展示内容が出展社任せのためか、全体として何を言いたいのかがはっきりしなかった。

また、展示物の説明ボード、パンフレットなどもほとんどなく、説明も限定される上に、なぜか画像の音声が聞き取れないところが多かった。

<AOMI exhibition>

 スバル、ダイハツの展示、プレゼンはそれなりのものだったが、トヨタのブースにはデビューを果たしたばかりの「ヤリス」や新型「カローラ」などを含む市販モデルの展示はまったくなく、未来の移動道具と街並みの画像の理解に苦しんだ。

<キッザニアとのコラボ>

 一方、キッザニアとのコラボレーションによる「子どもたちが働く街」では子どもたちが目を輝かせており、大変素晴らしかった。メーカー各社の協力にも拍手したい。隣のトミカのブースも大変多くの人たちをひきつけていたが、有料ゾーンだったのがちょっと残念だ。

<OPEN ROADとDRIVE PARK>

 展示のテーマがばらばらだったことは、なんとも残念だ。また、電動キックボードや次世代小型モビリティーなどの試乗はいいが、待ち時間が長すぎ、試乗できる人はほんのわずかだった。同じことは、DRIVE PARKの同乗試乗にも言える。

<ARIAKE exhibition>

 マツダ「MX-30」、日産の「ARIYAコンセプト」と軽EV、ホンダ「フィット」などは2019 TMSの存在感に貢献したモデルと言えるだろう。ただし、南館、西館の上階の部品メーカーのブースの来場者などが期待通りになったかは知りたいところだ。

 TMSは「クルマ文化の定着と拡大」「若年層のクルマ離れへの対応」「自動車産業の発展」などにとって貴重なイベントであり、今回の反省も踏まえながら、日本メーカー各社が潤沢な資金を出し合い、世界に誇れるイベントとして育成してゆくべきだ。以下は、それらを踏まえた私のささやかな提案だ。

(1)トータルプロデューサー

 TMSのトータルプロデュースの欠如はいかんともしがたいところだ。出展各社へのお任せや広告代理店への依存などではなく、ぜひとも有能なクリエーターをリーダーとするトータルプロデュースグループを早期に立ち上げ、思い切った改革に向けて尽力することが必須だと思う。

(2)CASEもメインテーマのひとつにすればよいのでは?

 FUTURE EXPOや部品メーカーの展示などはテーマが分散しているのが残念で、自動車産業の変革のキーワードである「CASE」(つながり化、自動運転、シェアリング&サービス、電動化)のそれぞれのテーマごとに会場を設定し、メーカーやサプライヤーが展示すれば、情報発信がもっとわかりやすくなったのではないだろうか?

(3)分散した会場には大きな「?」マーク

 平日でもシャトルバスは長蛇の列で、いずれもOPEN ROADを歩いたが、車椅子や子ども連れには長すぎる接続路で、雨天の日は大変だっただろう。外国人にとっては非常にわかりにくく、分散会場は大きな「?」マークだ。

(4)輸入車メーカーの展示は無償でもよいのでは?

 輸入車の展示があまりにも少なかったことがTMSに行く喜びを大幅に削減したことは、疑問の余地がない。自工会が費用を負担してインポーターブースを設置、無償でブースを提供、普段なかなか見られないモデルを展示してもらえたら、TMSの楽しさが大幅に拡大すると確信する。

(5)大学生まで入場料は無料にすべきだ

 今回から高校生以下が無料となったが、なぜ大学生まで無料にしなかったのか理解に苦しむ。日本の産業の近未来にとって非常に大切な大学生にTMSに繰り返し来場してもらい、将来のことを考えてもらう絶好の機会となるはずなのに。

クルマに精通したオピニオンリーダーの意見

 締めくくりに、知人のオピニオンリーダーのご意見の圧縮版をお伝えしたい。

・Brian Long氏(日本に永年在住の英国人自動車ジャーナリスト)

 過去25年間のTMSがすべて思い出として残る私の視点から見て、今回のTMSは許しがたく、このままいけばTMSはスローだが痛みのある終焉を迎えるだろう。自工会としてもっと戦略的に予算を使うべきだし、輸入ブランドの出展がほとんどないため、ショーとしてのきらめきがない。今回のTMSの若者たちの記憶は「疲れた」だけになってしまうのでは?

・Jim Kilbourne氏(米国マツダで永年商品開発、アクセサリーなどを担当)

 まずはロケーションの不便さに驚いた。

海外からの人たちはどのように移動すればよいか、よくわからないだろう。また、トヨタブースに生産車が展示されていないことにも驚いた。まるで「デジタルイベント」だ。一般の人たちがどのような反応を示すかは大変興味深い。オープンロードの展示はテーマがあまりにも不明確だ。

・片山光夫氏(米国日産初代社長・片山豊氏のご子息で、現在は日本自動車殿堂:研究・選考会議副議長)

 歩数計によると十数キロ歩いたが、くたびれた。会場の分断が大きな問題だ。また、各社の展示がなんとなくさびしくなった。エレクトロニクス関連はあまり見るものはなく、コンピューターならできるはずのことが段々実用化されているだけなので、あまり興味は湧かない。これではTMSの凋落を止めようがないのでは?

(文=小早川隆治/モータージャーナリスト)

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