そう思っていた時が私にもありました。そう、この本を読むまでは!
「やせたい人は、今夜もビールを飲みなさい」というなんとも刺激的なタイトルのこの本は、女子栄養大学やタニタで研究されていた安中千絵さんの本です。
え、これはビールを飲むだけでみるみる痩せるビールダイエットの本?! と思った方もいると思います。でも、そうではありません。この本は最新の栄養学を元にした、ダイエットのための食生活の本なのです。これがまあ目から鱗なことが多いこと多いこと。最新の栄養学恐るべし、です。
まず、多くの方が気になっている「ダイエットにはビールが敵なのでは?」というところから見ていきましょう。結論から言いますと、ビールはダイエットの敵ではありません! お腹がぽっこり出て、ベルトの上にお腹が乗る状態を「ビール腹」と言いますよね。実はこれは世界共通の言葉で(英語ではbeer belly)、ビールは太る、ダイエットの敵だと思われています。でも、最近の研究ではビール腹とビールには何も相関関係が無いということがわかりました。
そう、ビールが原因じゃなく、結局は運動不足とかそっちがビール腹の原因だったのです。
というわけでビールを飲みながらでもダイエットはできる! ということが本書では書かれているのです。他にも最新の栄養学からなる、この本ならではのダイエットの指針について見ていきましょう。
■カロリーを気にするな
のっけから一番驚いたことを。ダイエット=カロリー制限と思っていたので目から鱗がまず落ちます。
カロリー制限は確かに大事だけど、それにとらわれてしまっては駄目ということです。当たり前ですが、2000キロカロリー分の菓子パンだけを食べるのと、2000キロカロリー分の栄養豊富な料理だと、同じカロリーでも後者の方が体にいいわけです。
というわけで、カロリーは目安になるものの、数値に一喜一憂する必要は無いのです。
■栄養はたっぷりとろう!
ダイエットのために体調を崩しては元も子もありません。また、糖質や脂質の代謝にはビタミンBが不可欠だったりと、むしろ栄養をしっかりバランス良く摂る方が痩せるのにつながるのです。
なのでむしろ積極的にあれこれ食べなければなりません。肉はダイエットの敵に思われていますが大間違い。油だって必須です(量とかはもちろん考えなければなりませんが)。
肉や油をむしろ摂った方がいいなんて……ここでも目から鱗がぽろり。
■糖質に気をつけよう!
ビールも飲んでいい、肉も食べていい、カロリーも気にしなくていい。じゃあいったい何が原因で太るの?! と思われた方もいるでしょう。
答えは「糖質」になります。体に糖質が入ってくると、それをブドウ糖に分解して今すぐ使う分とあとで使うように筋肉や肝臓に一時的にためておく分とに分けます。筋肉や肝臓に保管しきれなかった分は、体脂肪にしてためておくというわけです。
こういったことを司っているのがインスリンです。頻繁にインスリンが出ると膵臓が疲れてしまい、やがてインスリンを分泌しなくなってしまうのです。これが糖尿病ですね。
毎回糖質の多い食事ばかりをしていると、毎食後にインスリンが大量に分泌され、どんどん体脂肪が蓄積されていき、さらにはインスリンが分泌されている間は体脂肪の分解が抑制されるので太る一方になる、というのが太るメカニズムになるのです。
なので、血糖値をゆるやかに上昇させる食事が重要である、というわけです。
■間食はしてもいい?!
というわけで、ダイエットのためにはインスリンをどうにかするのが非常に重要になりました。
ただ、甘いケーキとかお菓子を食べちゃうと血糖値が急激に上がっちゃうので、食べては駄目です。オススメの間食は、ナッツやチーズ、豆乳だとか。これらは血糖値をゆるやかにしか上げないし、栄養豊富なのでダイエットに最適とのこと。
なんとなくナッツはカロリーが高いのでダイエット中は食べちゃいけないと思っていたのですが、積極的に間食として摂取しようというのはまた目から鱗がぽろぽろです。
■結局ビールはどうしたら?
ようやく話が戻ってきました。ビールの話です。
結論から言うと、ビールは飲んでもかまいません。ただし、糖質量を考えて「1日にロング缶2本」を目安にしましょうということです。中ジョッキだと2杯分ですね。そして休肝日を週に1日設ける、と。これが重要とのこと。
1日にロング缶2本をベースにした、ビール以外の食事のモデルとかが本書では解説されています。さらに、普段の食事からビールを飲みながら食べるおつまみまでのレシピまで載っていていたれりつくせりです。
さらに各ビールのカロリーや糖質なんかも記載されていますので、数値が大好きな人必見かもしれません。スーパードライとヱビスビールが同じカロリー&糖質で、発泡酒よりもカロリーも糖質も低いとかこの本を読むまで知りませんでした。
「ダイエットは正しい知識から」なんて言葉もありますが、栄養学の世界は日進月歩で昔は常識だったことが今は非常識だったりします。本書はビール党のみならず、ダイエットや食生活に関心を持った人にお勧めです。
(杉村 啓)