45話は、こんな話
忠興(升毅)が東京で銀行をつくることを支援する五代友厚(ディーン・フジオカ)。銀行というものにあさは懐疑的だったが、五代は、「お金で人を救うことができる」と熱く語る。
新次郎と五代とはつ
女中と新次郎の気になる関係はいったんお休みで、45話は、五代友厚(ディーン・フジオカ)が空気をかき乱す。
白岡家では、久太郎(興津正太郎)がすっかり五代に心酔している様子で、留学まですると言う。
お家の商売に関しては、新次郎がまったく役に立たないので、不利だ。
白岡家にやって来た新次郎は、五代にピストルを返す。あさが借りたものを新次郎が返すことで、せめてもの夫アピールが涙ぐましい。
女中に優しい新次郎ではあるが、やっぱりあさを思っているのだなと安心する。
新次郎「やっぱり洋行帰りの御方はおなごに親切なことだすなあ」
五代「誰にでもというわけやありません」
大げさな音楽。ピリピリムードのふたり。
ふたりの様子をそっと見つめるはつ(宮崎あおい/さきの大は立)。
ここでは、宮崎あおいの何か考えているふうな表情が効いている。つぶらな目と小さな口にもかかわらず、なんでこんなに訴えてくるものがあるのか。
それぞれのお金事情
新次郎VS五代 の関係性が妙に深刻に描かれているが、これは、あさをめぐる恋愛ものという意味だけではない。
両替屋の仕事に精を出したり、お金を稼ぐために炭坑を買ったりしているあさも、はつの窮状を目の当たりにし、新次郎の過去のトラウマも聞いてからは、「お金は人を苦しませる」と考えるようになり、銀行というものに短絡的に期待をかけられない。
だが五代は、お金が諸刃の剣であることをわかったうえで、
「お金は使う人、使い方でなんぼでも価値が変わる」「銀行は志のある人を応援する場所」「お金で人を救うことができる」「志のある者が増えれば人も街も元気になれる」と曇りない瞳で熱弁する。
新次郎と五代を見つめていたはつは、お金に対して複雑な立場にある。
お金に関する話は今の自分と無関係と距離をとろうとしていて、母・梨江(寺島しのぶ)が差し出すお金も受け取ろうとしない。だが、実際のところ、借金とりに見つかる恐怖に怯えながら生きているのがはつだ。
気丈に、お金のない生活に充実感をもっているように振る舞っているものの、本当は苦悩していることを、母にだけ語る(でも、お父さんもそっと聞いてしまっている)。
お金に苦しめられながら、お金と関係ない生活を送ろうとするはつ。
お金に苦しめられた人を目の当たりにしたことから、お金を仕事にはしないが、道楽に使ってはいる新次郎。
社会をよくする希望をお金に託す五代。
お金について学びながら、まだ自分の意見を決めかねているあさ。
いろいろな価値観が提示される。
恋愛ものとお金ものを、ほどよいバランスで配合できるのは、月9で恋愛ものを書き、映画「カイジ 人生逆転ゲーム」(09年)でお金ものを書いた経験のある大森美香ならではだろう。
(木俣冬)
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