オレ、47歳男性。これまでテラスハウスについて何も知らなかった。


ドハマリしていた海外ドラマ『ブレイキング・バッド』のスピンオフ作品『ベター・コール・ソール』がNETFLIXで独占配信されるのを知り、ためらいなく加入した。
りこぴんで激震「テラスハウス」名場面を振り返ってみる
イラスト/エリザワ

NETFLIXをチェックしているうちに『新テラスハウス』に行き着いた。カップル誕生を見守る番組は昔からある鉄板企画だ。『プロポーズ大作戦』(1973年〜1985年)、『ねるとん紅鯨団』(1987年〜1994年)、『あいのり』(1999年〜2009年)、『テラスハウス』(2012年〜2014年)。『ねるとん』できっかけに結婚したご夫婦にはもうお孫さんがいるかもね (まだ早いかw)。

なので『新テラスハウス』には、新鮮味をまったく感じていなくて、あくまでもネトフリ巡礼の一環として、軽くチェックするつもりで第1話を観てみた、ら、ハマった。


毎週月曜深夜0時の新作配信解禁時間には必ず正座して待機するようになった。

照明、カメラワーク、カット割り、編集、BGMの盛り上げがハンパない。この完成度の高い映像空間の中では、普通の人々の普通の生活がちょっと普通ではなくなる。現実と虚構の間をふわふわ浮遊している感覚に夢中になった。

説教はダンスのようには響かない



初期の傑作場面はなんといっても「タップ」の説教シーン。

「美月」の将来の夢を聞いてからの全否定! で、相手を泣かすまで問い詰める。これは予想外、かなりおもしろかったので、毎回全メンバーを論破していってほしかったのが、この件で「タップ」のtwitterアカウントは視聴者により炎上。


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その後、「タップ」は精彩を欠いたまま卒業する。エリートタップダンサーとしてのスキルを披露する場面もあったが、他のメンバーのリアクションは薄かった。

「すごいねー」(一同棒読み)。

ただ、「タップ」がテラスハウスで一時的に流行らせた「いい日だね!」はいつまでも覚えておきたい一言だ。

悪いタバコと良いタバコ


野球に打ち込む好青年がダークサイドに転落した。シーズン2の「りこぴん事件」を思えば、どうってことないんだけど、この時点ではそれなりに驚いていたわ。

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「まこと」は筋が通らない発言をしたため関係者に謝罪をしなければならなくなる。
全身から「かったりー」オーラを漂わすのだが足りてない。

そこで「まこと」は「かったりー」を決定的なものにするために、夜、洗濯機の置かれているテラスでタバコに火をつける。昨今、やたらと煙たがれる喫煙とギミックを「闇落ち」の心理描写として効果的に使った。そのタバコはふかしてるだけで、煙は肺まで届いていないように見えた。

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シーズン2に出てくる「半さん」にも喫煙シーンがある。こちらはタイトな仕事をやり遂げたあとの満足の一服。
どちらも同じ行為だけど意味がずいぶん違う。このコントラストも全編を通すとジワジワくる。

肉と涙とTVショー


シーズン1のクライマックスはやはりこれでしょ。肉事件。「ウッチー」と「みのり」はこの時点で良好なカップルだ。

美容師の仕事をしている「ウッチー」がお客さんからもらった高級肉を、「ウッチー」に何も言わずに他のメンバーが食べてしまう。
それにGOを出したのが恋人の「みのり」だった。しかも「(脂身が多くて)ちょっと苦手だったわ……」とか言っちゃって。

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帰宅し、肉の焼失に激怒する「ウッチー」。マイスペースに物理的にもココロ的にもお引きこもりになられる。「みのり」は硬化した恋人の態度に戸惑いながら謝罪するが、天の岩戸は開かない。すわ肉きっかけに破局か!?


「ウッチー」の鋼鉄の扉を部外者である「みのり」の姉「クルミ」がノックした。
少し気が緩んだところに、ふたたび恋人が訪ねていくと、そこにはむせび泣く少年(本当は青年)の姿があった! 

「ウッチー」はテラスハウスに「もう、つかれてしまった……」とガチな心情を語り出す。

そういえば、かつて「ウッチー」がテラスハウスのリビングにあるPCでNETFLIXの「新テラスハウス」をチェックするシーンがあった。

youtubeの「山チャンネル」では、なかなかエンジンがかかりきらない出演者に対し、番組MCが「知ってる?みんな?これはTVショーだよ!」と一喝する場面もあった。

このメッセージを重く捉え、天然に振る舞うメンバーをなんとかまとめあげてきた「ウッチー」はこのシーズンの主役だ。

後日、代官山でポケモンGOをやっていたら偶然、彼が勤めている美容室を発見した。扉には「ウッチー」のtwitterアカウントが記された札が下がっている。窓から覗いてみると、彼はお客さんの髪を淡々と切っていた。『新テラスハウス』で観るよりも柔和な表情だった。

思わず「ウッチー、おっつー」とつぶやいた。
(飯田和敏)