昨年からずっと行きたかった場所に、先日ついに行ってきた。それが北海道別海町にある野付湾(のつけわん)。
海の上を歩ける……というのは比喩ではない。野付湾は、北海道東部の別海町にある野付半島の内側の海。水深が2~5メートルと浅く、1月下旬~3月中旬の厳冬期には一面が結氷し、その上に雪が積もって一面の白い世界を作り出すのだという。
野付半島へのアクセスは首都圏から行くなら、飛行機で根室中標津空港へ飛ぶのが早い。羽田空港からは1日1便、新千歳空港からは1日3便が飛んでいる。そこから野付半島までは車で約50分、約40kmの距離だ。
今回は札幌経由で行った。初日は極寒の摩周湖や屈斜路湖を巡り、野付半島からほどちかい尾岱沼(おだいとう)温泉に宿をとった。
翌朝、いざ野付半島へ。野付半島は日本最大の砂嘴(さし)、すなわち砂が堆積してできた半島であり、全長26km。最も狭いところは幅が約50メートルしかなく、カーナビが示す道も細すぎて不安になるほど。
両側に海が見えるので、「北の天橋立」と呼ばれることもあるのだとか。
240種類以上の野鳥が見られるそうで、冬は天然記念物のオオワシもくる。
鳥のほかにはエゾシカやキツネもいた。
海の上を歩くには、ガイドの同行が必要だ。今回は野付半島ネイチャーセンターで実施している「トドワラ・氷平線(ひょうへいせん)ウォークツアー」に参加。なお、トドワラとは、海水に浸食され風化したトドマツの木が並んでいる場所のこと。
ツアーは2時間で約3kmを歩く。通常はスノーシューを履くのだが、今冬は昨年に比べて1メートル以上も積雪が少ないそうで、この日は履かずに出発。まずは夏に遊歩道になっているところを歩いて「トドワラ」へ向かう。
この時点で歩いているのは海の上ではないが、周囲に広がるのは一面の白い世界。日本とは思えない圧倒的なスケール感にテンションは上がり、マイナス6℃の寒さもまったく気にならなかった。
ツアー後半、いよいよ海の上へ! 海の上を歩けるかは結氷具合によるが、今年は暖かい日が多く氷が薄い状態が続いていたため、私が訪れた1月28日が今年初めて海の上を歩けた日だったそう。
一見すると単なる雪の上を歩いているような気もするが、雪を舐めてみるとしょっぱくて海の上だと実感する。さらに、ところどころ氷が割れていたり、たまにミシッなんて音がするもんだから、思わずガイドさんに「これまで落ちた人は?」と聞くと、「いませんよ。そのために私たちが案内しているんです」と笑って答えてくれたので安心した。
どこまでも続く白い世界では、遠近感を利用してトリック写真も撮り放題。ガイドさんがミカンやコップなどの小道具も用意してくれていたので、かなり楽しめた。
野付半島ネイチャーセンターの方に話を聞くと、以前からトドワラへ行きたい人のために「冬のトドワラ往復コース」というものはあり、帰りに氷の上も歩いていたそう。ただ、近ごろはメインがトドワラから氷の上を歩くことに変わってきたため、今シーズンからコース名も変えたとのこと。
この野付湾、日本のウユニ塩湖としてSNSなどでじわじわと認知度は上昇中。ツアーへの参加者は東京など関東圏が多いそうだが、今年は香港や韓国、シンガポールなど海外の人の申し込みもあるそう。とはいえ、北海道のなかでも最果て感の強いこの地。ツアーは土日は混むものの、平日は参加者ゼロの日もあるという。
まるで海外のような絶景に目も心も奪われる野付湾の氷平線ウォーク。ぜひ一度体験してみては。
(古屋江美子)
なんと海の上を歩けるのだ。

昨冬、こんな雰囲気の写真が載ったチラシを見てからずっと行きたかった野付湾
海の上を歩ける……というのは比喩ではない。野付湾は、北海道東部の別海町にある野付半島の内側の海。水深が2~5メートルと浅く、1月下旬~3月中旬の厳冬期には一面が結氷し、その上に雪が積もって一面の白い世界を作り出すのだという。
野付半島の幅は狭いところで約50メートル

赤く囲ったところが野付半島。上の大きな半島は知床
野付半島へのアクセスは首都圏から行くなら、飛行機で根室中標津空港へ飛ぶのが早い。羽田空港からは1日1便、新千歳空港からは1日3便が飛んでいる。そこから野付半島までは車で約50分、約40kmの距離だ。
今回は札幌経由で行った。初日は極寒の摩周湖や屈斜路湖を巡り、野付半島からほどちかい尾岱沼(おだいとう)温泉に宿をとった。

北海道らしいどこまでも続く一本道が多かった。レンタカーの場合、雪道運転にも注意が必要
翌朝、いざ野付半島へ。野付半島は日本最大の砂嘴(さし)、すなわち砂が堆積してできた半島であり、全長26km。最も狭いところは幅が約50メートルしかなく、カーナビが示す道も細すぎて不安になるほど。

両側に海が見えるので、「北の天橋立」と呼ばれることもあるのだとか。

野付半島。右側が野付湾、左側が外海。外海はまったく凍っていない
240種類以上の野鳥が見られるそうで、冬は天然記念物のオオワシもくる。

鳥のほかにはエゾシカやキツネもいた。

見えるのは水平線ではなく、氷平線(ひょうへいせん)

果てしなく広がる氷の大地
海の上を歩くには、ガイドの同行が必要だ。今回は野付半島ネイチャーセンターで実施している「トドワラ・氷平線(ひょうへいせん)ウォークツアー」に参加。なお、トドワラとは、海水に浸食され風化したトドマツの木が並んでいる場所のこと。

野付半島ネイチャーセンターから見た野付湾
ツアーは2時間で約3kmを歩く。通常はスノーシューを履くのだが、今冬は昨年に比べて1メートル以上も積雪が少ないそうで、この日は履かずに出発。まずは夏に遊歩道になっているところを歩いて「トドワラ」へ向かう。

遊歩道の両側はハマナス。6月頃からピンクの花を咲かせる
この時点で歩いているのは海の上ではないが、周囲に広がるのは一面の白い世界。日本とは思えない圧倒的なスケール感にテンションは上がり、マイナス6℃の寒さもまったく気にならなかった。


トドワラへの遊歩道

立ち枯れの木々が地の果て感を出しているトドワラ
いざ凍った海の上を歩く!
ツアー後半、いよいよ海の上へ! 海の上を歩けるかは結氷具合によるが、今年は暖かい日が多く氷が薄い状態が続いていたため、私が訪れた1月28日が今年初めて海の上を歩けた日だったそう。

自分の足あとはこんな感じ
一見すると単なる雪の上を歩いているような気もするが、雪を舐めてみるとしょっぱくて海の上だと実感する。さらに、ところどころ氷が割れていたり、たまにミシッなんて音がするもんだから、思わずガイドさんに「これまで落ちた人は?」と聞くと、「いませんよ。そのために私たちが案内しているんです」と笑って答えてくれたので安心した。
安全のために日々スノーモービルで走って雪の厚みを確認しているそうだ。

海の上にはキツネの足あとも!
ウォークツアーではトリックフォトも人気

娘の指の上にのっている(ように見える)父親
どこまでも続く白い世界では、遠近感を利用してトリック写真も撮り放題。ガイドさんがミカンやコップなどの小道具も用意してくれていたので、かなり楽しめた。

小道具のひとつ、スプーンの上に乗ったペンギン
野付半島ネイチャーセンターの方に話を聞くと、以前からトドワラへ行きたい人のために「冬のトドワラ往復コース」というものはあり、帰りに氷の上も歩いていたそう。ただ、近ごろはメインがトドワラから氷の上を歩くことに変わってきたため、今シーズンからコース名も変えたとのこと。
この野付湾、日本のウユニ塩湖としてSNSなどでじわじわと認知度は上昇中。ツアーへの参加者は東京など関東圏が多いそうだが、今年は香港や韓国、シンガポールなど海外の人の申し込みもあるそう。とはいえ、北海道のなかでも最果て感の強いこの地。ツアーは土日は混むものの、平日は参加者ゼロの日もあるという。
まるで海外のような絶景に目も心も奪われる野付湾の氷平線ウォーク。ぜひ一度体験してみては。
(古屋江美子)
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