拡大スペシャルとかいって時間長くしてダラダラ展開するドラマが多いなか、49分ビタッと無駄を省いて緻密に展開した。
NHK総合テレビ「土曜ドラマ」枠。
主演は北川景子。
脚本は、『アンナチュラル』『逃げるは恥だが役に立つ』『獣になれない私たち』などの野木亜紀子。

写真は、北川景子1st写真集「27」
北川景子1st写真集「27」
反転する意見
最初の5分間で、登場人物を紹介しながら、ネットメディアの編集部の様子、主人公の苛立ち、やりたくもないカップうどんへの青虫混入事件の取材をやらされていることをギュッと詰め込んで描いた。
さらに、後編でキーパーソンになるだろう最上圭一(杉本哲太)も新聞記事の中にチラっと登場させる周到さ。
青虫うどんのツイートを、記者の東雲樹(北川景子)は、怪しいと踏んでいる。
ツイートした「木から落ちない日本猿」を取材。
湯気が出てないことなどを指摘する。相手はしどろもどろ。
さらに保健所も「混入の可能性は低い」と判断する。
「木から落ちない日本猿」は悪いやつで、異物混入は、ただのフェイクと思っているところに。
アメリカのCSSのサイトに「奴隷労働だ」という記事があがる。
そのため工場の労働者が混入させた可能性もある、と。
「木から落ちない日本猿は、正義の人かもしれません。テイショーの現状を知っていて告発するために青虫うどんをでっち上げ、騒ぎを起こした」
と、反転する意見。
さらに、すぐさま、またもひっくり返す。
CSSのサイトは、アルファベットのCとSに似た文字があるキリル文字を使った偽URLの偽のサイト。
これこそがまさにフェイクニュースだったのだ。
善悪が反転するニュースが流れるたびに、どちらにしろ野次馬たちはツイートを拡散し、あることないことつけたして、過剰反応していく。
あっという間に前編終了
ネットメディアの「あるある」も充実。
酷いタイトルに勝手に変えられて
「語尾に?つけりゃ許されるってもんじゃありません」
と怒っていたがPV数50万と聞いて、黙ってしまうシーン。
正義の報道に燃えていたヒロインも、ネット承認の誘惑にひるんでしまうのだ。
いやー、リアリティがあった。
「うちはネットメディアだ。報道じゃない」と断言する編集長も、きっと、いる。
ぎゅっと詰めて、さらにハイテンポの展開でありながら、多面的に描くスタイルもすごい。
怪しいツイートをした「木から落ちない日本猿」側の生活や会社の様子も描く。
日本のものづくり、プライベートブランド、外国人労働者、SNSを条件反射的に拡散する人々、在日外国人差別、セクハラ、世論操作、政治。
フェイクニュースを軸に、さまざまな現代的な問題を絡めて、あっという間に前編終了。
え、49分あった?と驚く人も多かったはずだ。
大きな闇につながっている展開になっていきそうな後編が楽しみである。
(米光一成)
脚本 野木亜紀子
演出 堀切園健太郎
脚本 野木亜紀子
プロデューサー 北野拓
音楽 牛尾憲輔
東雲樹(北川景子)
謎の男(光石研)
西剛(永山絢斗)
網島史人(矢本悠馬)
学生の男(金子大地)
宇佐美寛治(新井浩文)
八ツ峰航平(岩松了)
最上圭一(杉本哲太)
NHK 土曜21:00
前編 2018年10月20日
後編 2018年10月27日
公式 https://www.nhk.or.jp/dodra/fakenews/