連続テレビ小説「なつぞら」 
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~
「なつぞら」120話。なつ、社長と交渉、子供ができても社員でいられることに

第20週「なつよ、笑って母になれ」120話(8月17日・土 放送 演出・田中正)視聴記録


道をつくる
妊娠したなつ(広瀬すず)は夫の坂場(中川大志)に「(女性が働きやすくなる)道を作るんだ」と背中を押される。「道を作る」と言うと、「あさが来た」の主人公の“道を切り開くファーストペンギン”を思い出す。
朝ドラは女性がいろんな道を切り開くドラマ。
「なつぞら」では、子供ができても従来どおり働ける周囲の理解と環境づくりの道をなつが切り開いていく。辞めざるを得なかった茜(渡辺麻友)の無念も背負ってーー。

なつが下山(川島明)と神地(染谷将太)に妊娠三ヶ月を報告。契約になっても仕事を続けると言うと、みんなで話そうと神地が勇みたつ。
まずは仲(井浦新)に報告。
このときの、井浦新のリアクションがすばらしい。


仲「ん?」
神地「なっちゃんができたそうです」
仲「う〜ん 魔法少女アニー?」
なつ「子供です」
仲「え」
「赤ちゃん 赤ちゃんか!」
「それはおめでとうなっちゃん 赤ちゃん…」
このおとぼけ会話。
「赤ちゃんか!」と大声と 最後に「赤ちゃん」と噛み締めているセリフがいい。この小さく噛み締めているときの井浦新の表情を映してほしかった。

すばらしいといえば、なつが神地と下山に報告があると呼び出したとき、神地の隣に座っているひとが、なんだろう? というふうに様子を伺っている仕草。あんまり映ってないけれど、関心ある仕草の残像が視聴者の潜在意識に訴えかけてくる。
仲の「赤ちゃん」にしても、いかに流れのなかに引っ掛かり(ノイズ)を入れるかが大事。
やりすぎてもうるさいし、やらな過ぎると画面が淡白になってしまう。
染谷将太もうるさすぎるほど喚いている。ちょっと「まんぷく」の萬平さん(長谷川博己)みたいだが、彼がこれくらい喚くからこそその場の熱が上がる。井浦と染谷のキャスティングは大成功。

なつ、作画監督に
こうして、なつを先頭にみんなで社長室に押しかけ、妊娠を報告し、産休後に契約に切り替えないでほしいと訴える。
「まるで組合のデモみたいじゃないですか」と言う山川社長(古屋隆太)に井戸原(小手伸也)が「我々アニメーターは結束の固さを信条にしております」と返す。
「我々アニメーターは結束の固さを信条にしております」、すばらしい。アニメは集団作業。ひとりではできない。一致団結、結束してこそ、ひとつの作品が出来上がるのだ。「なつぞら」はアニメの実作業を具体的に描くアプローチではなく、アニメ業界のシステムに目を向けている。アニメに限らず、職場は世界の縮図である。
監督とはそういうことも考えているひとなのだ。少なくとも高畑勲さんはそういう人だったと思う。

坂場も、個人の幸福のみならず、自らの行動が他者の幸福を築くことになる(なつの場合、なつが行動し前例をつくることでほかの女性社員も働きやすくなる)と考えて生きている。
この考えは、「なつぞら」の初期にも描かれている。4話のレビューで書いたことで、剛男(藤木直人)が、夕見子に“各々の境遇は、もしかしたら逆だったかもしれないという考え方を示唆するのだ。なつのお父さんは戦争で亡くなったがもしかしたらそれは自分だったかもしれない。
夕美子がなつのようになっていたかもしれない。そう思ったら助け合いたい。”
この時代のある種の人たちが抱いていた熱い信念を「なつぞら」は掬い上げている。その熱さや真っ直ぐさを井浦新や染谷将太たちは読み取っているように思う。

「私は楽がしたいわけじゃありません お金がほしいわけじゃありません 仕事でもっともっと成長していきたいんです」となつは訴える。お金は必要だろーというツッコミはさておき、成長したいという欲求は多くの人の気持ちの代弁である。
これには茜の悔しい思いのリベンジでもあるだろう。残念ながらみんながみんなうまくいくものではなくて、うまくいかない人もいる。だからこそチャンスのある人がその人の分まで背負って立ち上がる。そうやって人間は進歩していく。志半ばで倒れた人のことも描く、このへん「いだてん」にも通じるものがある。

そんななつに次回作の作画監督を頼むつもりだったと社長は言い、なつは「やらせてください」と前のめり。
さあ、子供と仕事、両立の道が開かれた。

次週予告に田中裕子が映っていた。再放送中の「おしん」と時空を超えて交錯するかと思うとわくわくが止まらない。

【第21週あらすじ】「なつよ、新しい命を迎えよ」8月19日・月〜8月24日・土】 


なつは妊娠を咲太郎や、富士子ら十勝の家族に報告し、盛大な祝福を受ける。そんな中、麻子(貫地谷しほり)が日本に帰ってくる。なつたちの新居を訪れた麻子は、アニメの制作会社を設立したことを伝え、もう一度、現場に復帰しないかと坂場に話を持ちかける。坂場にとっては願ってもないチャンスだが、なつたち共稼ぎ夫婦には子育て問題が大きく立ちふさがる。そんな不安を抱えつつも、臨月を迎えたなつは仲(井浦新)や神地(染谷将太)らに見送られ、産休に入る。予定日が迫る中、なつは突然の腹痛に襲われる。一大事というタイミングで現れたのは、富士子や泰樹たちだった。

121回あらすじ  8月19日・月 放送


「なつぞら」120話。なつ、社長と交渉、子供ができても社員でいられることに

「なつぞら」120話。なつ、社長と交渉、子供ができても社員でいられることに

なつ(広瀬すず)は、妊娠したことを報告するため風車プロダクションを訪れる。咲太郎(岡田将生)や光子(比嘉愛未)、蘭子(鈴木杏樹)達はなつの妊娠を喜ぶ。そして、なつは電話で十勝の柴田家にも報告し、富士子(松嶋菜々子)に嬉しさの反面、初めて母となる不安を漏らす。数ヶ月後、テレビ漫画づくりの激務の中、なつのお腹はどんどん大きくなっていた。そんななつの所へあの人が帰ってきて…。
「なつぞら」120話。なつ、社長と交渉、子供ができても社員でいられることに

122回あらすじ  8月20日・火 放送


麻子(貫地谷しほり)が日本に帰ってきた。なつ(広瀬すず)と坂場(中川大志)を訪ねてきた麻子を自宅に招き入れ、三人は久しぶりの再会を喜ぶ。麻子はアニメーションの世界に戻り、製作会社を立ち上げていた。準備を進めている麻子は、一緒にテレビ漫画を作らないかと坂場に持ちかける。同じくアニメーションの世界へ戻りたい坂場にとっては、麻子からの誘いは願ってもないはずだが、坂場は黙り込んでしまい…。
(木俣冬)


登場人物とキャスト 登場順


奥原なつ 広瀬すず 幼少期 粟野咲莉…主人公。戦争で父母を亡くし、兄と妹と別れ、剛男に連れられて北海道に引き取られてきた。生活を保障してもらう代わりに酪農の手伝いをする。父の描いた家族の絵を大切にもっている。生きるために感情を押し殺してきたが、柴田家、とりわけ泰樹と触れ合うことで、素直に感情を出せるようになっていく。これからは酪農の時代だと考え、十勝農業高校で学んでいる。演劇部に入る。
高校卒業後、アニメーターを目指して東京に出てくる。
佐々岡信哉 工藤阿須加 幼少期 三谷麟太郎…空襲のとき、なつを助ける。孤児院で働きながら勉強している。
柴田剛男 藤木直人…柴田家の婿養子。なつの父の戦友で、戦災孤児となったなつを十勝に連れて来た。妻を「ふじこちゃん」と呼ぶときがある。1955年時点では音問別農協組合で働いている。
柴田富士子 松嶋菜々子…剛男の妻。開拓で苦労してきたので、ひとに優しい。
柴田照男 清原翔(13 回から) 幼少期 岡島遼太郎…柴田家長男。搾乳をさせてもらえない代わりに薪割りを頑張っていたが、なつが来たことを機にようやく搾乳させてもらえた。
柴田夕見子 福地桃子(13回から)幼少期 荒川梨杏…柴田家長女。牛乳嫌い。同い年のなつに嫉妬を覚えたが、剛男に説得されてなつを受け入れる。勉強ばかりして家の手伝いを全然しない。
柴田明美 平尾菜々花(13回から) 幼少期 吉田萌果…柴田家次女。
柴田泰樹 草刈正雄…柴田家当主。頑固者で幼いなつにも容赦なく厳しく接するが、意地悪ではなく、彼の人生哲学に基づいたもの。他人に頼らず己の力で人生を切り拓くことを心情としている。甘いものが好き。
なつをほんとうの家族にしたいと願い、照男と結婚させようとする。
奥原咲太郎 幼少期 渡邉蒼…なつの兄。タップダンスが得意で、米兵にかわいがられていた。孤児院を出て新宿で亜矢美に助けられ、ムーラン・ルージュを経て、浅草の劇場で働いていたが、盗み濡れ衣を着せられ捕まってしまう。
奥原千遥 幼少期 田中乃愛…なつの妹。親戚に引き取られている。

2回
焼け跡にいたおばあさん北林早苗…情にほだされなつたちに食べ物を分ける。演じている北林は朝ドラ第1作め「娘と私」の娘・麻里の少女時代役を演じた。
戸村悠吉小林隆…柴田牧場で働いている。貧しい開拓団の八男に生まれ、幼い頃に奉公に出され、泰樹に世話になった恩を感じて尽している。
戸村菊介音尾琢真…悠吉の息子。嫁募集中。

4回
小畑とよ 高畑淳子…帯広在住。泰樹の昔なじみ。口の減らない元気な人。
小畑雪之助 安田顕…とよの息子。菓子店・雪月の店主。菓子作りに情熱を注ぐ。
小畑妙子 仙道敦子…雪之助の妻。
小畑雪次郎 山田裕貴(13回から登場) 幼少期 吉成翔太郎…雪之助、妙子の長男。十勝農業高校に通っている。演劇部。高校卒業後、川村屋に修業に出る。

5回
山田天陽 吉沢亮 幼少期 荒井雄斗…音問別小学校でなつと同級生になる。東京からやって来た。馬が好き。農業をしながら絵を描いている。
大作 増田怜雄…音問別小学校の生徒。
実幸 鈴木翼…音問別小学校の生徒。
さち 伍藤はのん…音問別小学校の生徒。
山田正治 戸次重幸…天陽の父。東京から北海道にやって来たが土地が悪く、農業ができず、郵便局で働いている。泰樹の協力を得て、土地を蘇らせる。

8回
山田陽平 (31話から)犬飼貴丈 幼少期 市村涼風…天陽の兄。絵がうまい。東京で芸大に通いながらアニメの美術の仕事をしている。なつに絵画の道具を贈った。東洋動画に就職。

9回
なつの父 内村光良…日本橋で料理人をしていた。絵が上手。家族のことを思いながら戦死した。

10回
花村和子 岩崎ひろみ…音問別小学校の教師。 
校長先生 大塚洋…音問別小学校の校長先生。
山田タミ 小林綾子…天陽の母。

13回
居村良子 富田望生…十勝農業高校の生徒。演劇部に入り衣裳を担当する。「白蛇伝説」のラスト、白蛇として登場し喝采を浴びる。
村松 近江谷太朗…柴田牧場と長い付き合いのあるメーカーの人物。奥様封筒をもってくる。

倉田隆一 柄本佑…十勝農業高校の国語の先生。演劇部の顧問。「魂」が口癖。なつの問題、十勝の伝承を交えて「白蛇伝説」の台本を書く。

14回
田辺政人 宇梶剛士…音問別農協組合組合長。農協で一手に酪農事業をとりまとめ十勝を酪農王国にしたいと考えている。 

19回
門倉努 板橋駿谷 …十勝農業高校の番長。クマとサケを争った逸話をもつ。演劇部に入り、村長役を略奪する。
高木勇二 重岡漠 …十勝農業高校演劇部。メガネ。門倉に役をとられてしまう。
石川和男 長友郁真…十勝農業高校演劇部。
橋上孝三 山下真人…十勝農業高校演劇部。

21回
太田繁吉 ノブ(千鳥)…十勝農業高校の教師。ヤギのチーズは牛より「クセがすごい」と言う。

27回
前島光子 比嘉愛未… 川村屋のマダム
野上健也 近藤芳正… 川村屋のギャルソン
茂木一貞 リリー・フランキー… 角筈屋社長
煙カスミ 戸田恵子… 歌手。クラブメランコリーの看板。ムーラン・ルージュにいた。
三橋佐知子 水谷果穂…川村屋の店員。川村屋社員寮でなつと同室に。咲太郎を「同志」と思っている。
土間レミ子 藤本沙紀…カスミのいるクラブの店員。咲太郎のことが好き。「真心を一晩貸したままだから」返してほしいと思っている。

28回
島貫健太  岩谷健司
ローズマリー  エリザベス・マリー…浅草の踊り子

30回
藤田正士 辻萬長  親分
松井新平 有薗芳記 …浅草の芸人
岸川亜矢美 山口智子 …元ムーランルージュの踊り子。咲太郎を助けた。

31回
下山克己 川島明 …新人アニメーター
仲努 井浦新 … 実力派アニメーター

37回
阿川弥市郎 中原丈雄 … 東京から北海道に移住。彫刻で生計を立てている。
阿川砂良 北乃きい… 弥市郎の娘。

44回
杉本平助 陰山泰… 川村屋の料理長

45回
蘭子 鈴木杏樹… 劇団の女優
虻田登志夫栗原英雄… 劇団の俳優

49回
井戸原昇 小手伸也… 東洋動画アニメーター

55回

森田桃代 伊原六花…仕上げ課の先輩、といっても年齢はなつと同じで19歳。あだ名は「モモッチ」
山根孝雄 ドロンズ石本…仕上げ課のえらい人。
石井富子 梅舟惟永…仕上げ課のベテラン。といってもまだ30歳。
大沢麻子 貫地谷しほり…原画スタッフセカンド。周囲に一目置かれている才能あるアニメーター。
おしゃれしているなつを敵視している。
堀内幸正田村健太郎…動画スタッフ 芸大出身で、線画のきれいさには定評がある。

58回
露木重彦木下ほうか…演出家、第一製作課長
山川周三郎古屋隆太…東洋動画スタジオ所長

66回
泉千恵
岡部たかし
池間夏海


脚本:大森寿美男
演出:木村隆文 田中正ほか
音楽:橋本由香利
キャスト:広瀬すず 松嶋菜々子 藤木直人 岡田将生 比嘉愛未 工藤阿須加 吉沢亮 安田顕 仙道敦子 音尾琢真 戸次重幸 山口智子 柄本佑 小林綾子 高畑淳子 草刈正雄ほか
語り:内村光良
主題歌:スピッツ「優しいあの子」
題字:刈谷仁美
タイトルバック:刈谷仁美  舘野仁美 藤野真里 秋山健太郎 今泉ひろみ 泉津井陽一
アニメーション時代考証:小田部羊一 
アニメーション監修:舘野仁美
アニメーション制作:ササユリ 東映アニメーション

制作統括:磯智明 福岡利武