
原爆投下の日に生まれた青年が聖火最終走者の候補に
田畑政治(阿部サダヲ)が大会組織委員会の事務総長を解任されたのにともない、記録映画を手がける予定だった黒澤明(増子直純)も監督を辞退していた。それに代わって、1964年1月、市川崑が起用される。市川を演じるのは、脚本家・演出家の三谷幸喜。三谷の大河ドラマ出演は「功名が辻」(2006年)の足利義昭役以来だが、さすが市川ファンを公言するだけに(市川の最後の監督作品「犬神家の一族」にも出演している)、くわえタバコで小首をかしげてポーズをとり、すっかり名監督になりきっていた。名前のテロップも、「犬神家の一族」などでおなじみ(のちにアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」でもオマージュされた)の極太明朝体を直角に配置する凝りよう。
4月10日には、聖火ランナーの写真を使ったオリンピックポスター第4号が完成する。田畑が事務総長をやめて1年半が経っていた。一時は大会関係者が夜な夜な集まり「裏組織委員会」の様相を呈した田畑宅だが、さすがに開催が近づき、みんな多忙をきわめているせいか、ぱったり客足は途絶えていた。そこへ久々に渉外部長の岩田幸彰(松坂桃李)と選手強化本部長の大島鎌吉(平原テツ)が訪ねてくる。聖火リレーの最終走者候補を、1945年8月6日、原爆投下当日に広島で生まれた早大生・坂井義則(井之脇海)に決めたと報告に来たのだ。岩田は「できすぎでしょうか」と言うが、田畑は諸手をあげて賛成する。
ずっとおもしろくて素晴らしかった。視聴率低いと負け犬の遠吠え呼ばわりされて(家族に)、くやしい。私からはアカデミー賞さしあげたい。