大野智の影響受けた 加藤シゲアキの小説『オルタネート』が直木賞候補に<柚月裕実のWeekly“J”>
イラスト/おうか

柚月裕実の「Weekly“J”」#7<12月20日〜12月26日>

アイドルファン歴25年超のアイドルウォッチャーの筆者が一週間の出来事からトピックを紹介しようというこのコーナー。12月20日からの一週間を振り返ります。

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第164回芥川賞と直木賞の候補作が発表され、NEWS加藤シゲアキの小説『オルタネート』が直木賞にノミネートされた。
アイドル、そして作家の肩書を持つ加藤にフォーカスする。

加藤シゲアキが作家を目指したきっかけは…釣り仲間!?

「ジャニーズに入ったときに自分が作家になるなんて思ってないし、作家になりたくてジャニーズ入る人いないし」。

2015年7月、『NEWS ZERO』の特番で、櫻井翔、大野智と加藤の3人で「アイドルの今、コレカラ」をテーマに対談した。櫻井から小説を書き始めたきっかけについて聞かれると、「自分がグループにいてまだ何物でもないな、みたいな。悩んでいたんですよ。ジャニーズwebでちょっとした連載を書いていたら、面白いと言ってくださる方がいて、書くことで(グループに)貢献できたらなっていう気持ちが少しずつ芽生えたんですけど。そういうことが可能なんだってことを思わせてくれたのが大野君なんですよ、実は」。

作家として踏み出そうとしたきっかけの一つになったのが、釣り仲間でもある大野智。個展を開くなどアートの分野で活躍してきた大野の影響を受けた。一緒にカンパチを釣りに向かった船の上で、5時間質問攻めだったと大野がどこか嬉しそうに語っていた。

対談は、4作目の小説『傘を持たない蟻たちは』(角川書店)の発売後。「厳しい書評ほどピンときてしまう」と加藤。厳しい意見にも慣れ、むしろ参考にすると余裕をみせた。


3人ともアイドルとしての活動とは違う分野に進出した仲間。“ジャニーズなのに”という偏見のような、色眼鏡でみられることを味わってきた人たちだ。立ちはだかる壁や苦悩について、櫻井は、その道一筋でやってきた人たちがいるところへ入ることを、「横入り」と表現したが、加藤も同じ思いだったようだ。

「小説家って基本的には賞をとってからじゃないと作家ってなれないんですよ。賞をとってないでずっと書き続けていられるのはジャニーズだから」。自分に厳しい一面をのぞかせた。続けて、「認められるまで続けたい、認めさせたいという気持ちもある」と、少し力を込めて語った。

加藤は2003年、16歳のときにNEWSとしてデビュー。グループ人気の高まりの一方で、相次ぐメンバーの脱退、一時はグループ存続の危機に瀕したことも……。本当にたくさんのことを乗り越えてきた。

加藤は2012年『ピンクとグレー』(KADOKAWA)で作家デビュー。以降、一年に1冊のペースで、4作連続で小説を発表。
その後は雑誌への連載をはじめ、2015年からは『タイプライターズ〜物書きの世界〜』(フジテレビ/現在はBSフジ)に出演。同じく芸能活動をしながら執筆活動を続ける又吉直樹と共に番組MCを務めている。

2016年1月には映画『ピンクとグレー』が公開された。行定勲監督のもと、事務所の後輩であるHey!Say!JUMP中島裕翔が本作で映画初主演を務めた。

映画の大ヒット御礼舞台あいさつの取材に行かせてもらったのだが、映画の資料と共に大入り袋が配られ、映画の人気ぶりを実感した。原作者として登壇した加藤、主演の中島ともに、上質な艶感のあるスーツをきれいに着こなし、充実感、達成感に満ちた表情…成し遂げた者ならではの雰囲気に目を奪われた。

また、2020年に予定されていた舞台『染、色』では、短編集『傘を持たない蟻たちは』に収められている『染色』を基に初の脚本を手がける予定だったが、新型コロナの影響で中止。主演には関西ジャニーズJr.のグループ、Aぇ! group正門良規を予定していた。

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加藤シゲアキのソロ曲がオススメ

先日、NEWSとして『ミュージックステーション』に出演したように、加藤はアイドルとしての活動も続けている。歌って踊る作家……、なんだか不思議な感覚になるが、コンサートで観られるソロステージも魅力だ。作家歴を重ねると共に、楽曲の世界観や演出も随分と路線を変えたと思う。

これまでの「ヴァンパイアはかく語りき」「ESCORT」など、年齢と共に放つ大人の色気にうっとり……。
恋に落ちてしまう世界観も素敵だが、作家歴を重ねてきたことを感じずにいられなかったのが「あやめ」から、「氷温」「世界」そして「Narattive」。歌と音楽に加えて、“表現”することへのこだわりが強くなっていると感じた。

特に「あやめ」はステージ演出や衣装もシンプルに抑え、歌詞に込めたメッセージを全身で表した。会場を自分の世界にして、まるで芝居をみているかのような表現力で圧倒された(メンバーからはMCでいじられていたけれど)。

最近は、DTMにハマっているとラジオ『SORASHIGE BOOK』(Fm yokohama)で明かした。また、新しい音楽を聞かせてくれるのではないかと思っている。

書店の棚に自分のネームプレートができるのが夢だとラジオで語った加藤。いまでは当たり前のように存在するが、一冊、また一冊と作品を生み出したことで、映画化・ドラマ化、その作品に後輩が出演……と広がりをみせる。アイドルとしての活動と平行して、コツコツと積み上げてきたことを思うと今回のノミネートの喜びは大きい。

今回の直木賞候補は、25年ぶりに全員が初めての候補者だという。芥川賞と直木賞の選考会は1月20日に行われる。

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Writer

柚月裕実


Web編集/ライター。ジャニヲタ。アイドルがサングラスを外しただけでも泣く涙腺ゆるめな30代。主にKAT-TUNとNEWSですが、もはや事務所担。

関連サイト
@hiromin2013

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