『ボス恋』奈未と潤之介の素敵な画にキスマイの主題歌のみ  クレジットを流さない好演出のエンディング
イラスト/ゆいざえもん

※本文にはネタバレがあります

その意図は? 冒頭にクレジットを流した『ボス恋』3話

『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』(以下ボス恋)(TBS系 毎週火曜よる10時〜)第3話は冒頭にスタッフ、キャストが入っていて、あれ、時間間違えた? もう終わり? と焦ってしまった。

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でも、クレジットがラストに入らない理由は終わりまで観るとわかった。先に書いてしまうと、3話終わりには、奈未(上白石萌音)潤之介(玉森裕太)のとても素敵な画があって、ここにクレジットを流さないのは正解だと感じた。
演出は、『花より男子』や『逃げ恥』などを手掛けている石井康晴

潤之介がずぶ濡れの仔犬になった妄想に奈未がふける場面もあって、サービス満載。犬の格好がなかなか似合う玉森裕太。そこまでサービスしなくとも……とも思うけれど、エンターテイナーなんだなと思う。

この妄想がよくできていて、仔犬は決して捨てられていたのではない、良いとこの仔犬(名前がショパン)がたまたま迷子になっていて拾ったものの、探しに来た飼い主に連れていかれてしまう。奈未は御曹司犬と自分との格差に気づくという寸法。女子受けテッパンの“捨てられた仔犬”を迷子の御曹司犬に変えた新しいパターン。脚本は田辺茂範

鬼編集長 VS 編集部員

創刊を間近に控えて「MIYAVI」の編集作業は佳境。一週間後に校了を控えたところで、注目の柔道家・瀬尾光希(高山侑子)のインタビューを差し替えると、鬼の編集長・宝来麗子(菜々緒)が言いだす。

企画を担当した中沢(間宮祥太朗)は、第2話の人気漫画家・荒染右京(花江夏樹)の企画担当を奈未に替えられたうえ、渾身の企画を差し替えられることになって散々。辞めたくなる気持ちは痛いほどわかる。ほかの編集部員も、なにかと麗子の無理難題に不満が溜まっていて、ボイコットする。
残った奈未たちはバッタバタ。

でもなぜ、今になって瀬尾光希インタビューを差し替えることにしたのか。奈未はこれまでの麗子の一見横暴に見える行為が、雑誌の収益のためであったことから、今回もまた何かあるのではないかと考える。人並みでいいと思ってきた奈未が、名探偵のような洞察力を発揮しはじめる。

麗子の「いつの間にか省いた情報はないか」という言葉から、奈未はインタビューを読み込み、中沢の編集メモも読み込み、瀬尾光希は痛めた肩が治らず、柔道にはまだ復帰できそうにない状態で、そのようなタイミングでインタビューを出すべきではないことに気づく。

『ボス恋』奈未と潤之介の素敵な画にキスマイの主題歌のみ  クレジットを流さない好演出のエンディング
第4話は2月2日放送。画像は番組サイトより

麗子の判断に納得のいった中沢は編集部に復帰。校了までに急遽、瀬尾光希インタビューと差し替える記事の取材を行うため、皆、奮闘する。

一時期、編集部員がボイコットしたため急遽配属になった初老の小笠原(藏内秀樹)が元校閲スタッフで、校閲はおまかせだったりしながら、なんとか責了を迎える。編集者がみんな戻ってきても、小笠原さんには癒やしとして編集部にいてほしい。専属校閲がいるといいと思う。

世界発信するような雑誌を目指しているらしき「MIYAVI」だが、デザインがかなりあっさりしていたり(商品紹介のページとかある意味斬新なくらいシンプル)、ライターを使わず編集部員が取材して原稿を書いていたり。レスリー・キーが表紙撮影で、カルティエを表4にして、5000万、6000万円の収益を狙っている雑誌の現実とドラマの落差はわざとやっているのかもしれないし、美術スタッフか演出部の方々が短い時間で頑張っていることはわかる。


でも、重要な小道具である雑誌のデザインも世界観を表す大事なもの。編集用語の解説があるのなら、雑誌のレベルもできるだけホンモノのハイクラスの雑誌に近づけてほしい。ただ、麗子の編集者としての能力の高さは、鋭い赤入れで表現されていた。

第3話の潤之介のコートは?

忙しい奈未は潤之介の写真展に行く時間がなく、最終日になってしまった。駆けつけたときには閉まっていたが、アシスタント・尾芦(ミキ亜生)が気を利かせ、中に入れてくれる。写真のなかには、奈未と潤之介が出会ったベンチと、奈未が座った跡を撮ったものがあった。

個展からの帰り道、雪が降ってくる。雪の中をとぼとぼと歩いていると、潤之介が追いかけてきた。「SLみたい」というセリフがおもしろい。全速で走ってきて白い息の勢いが激しいからだろう。

奈未は「へんな写真」と素直に言うと、潤之介は逆に喜ぶ。御曹司の自分に誰もが気を使い、「都会の孤独を感じる」などと口当たりのいい感想を言う人達に辟易していたのだ。感極まった潤之介は奈未の額に……。


これがクライマックスだけどクレジットが入らない良い画。小柄な奈未、しゅっとした潤之介のバランスがいい。そこにかかる主題歌。『ボス恋』はサビになってもちょっと控えめに主題歌をかける。恋愛を最上のものにして、なにもかもを殴り捨てて選ぶような激しさではなく、そっと寄り添ったときのほのかなあたたかさとささやかな幸福。「都会の孤独」と気取るよりも「へんな写真」と笑うようなほっこり感。Kis-My-Ft2の曲「Luv Bias」はそんな優しい音がする。

手をつないで走る局面もあって、なんかもうすっかりいい感じになっているが、まだ3話。これからいろいろな問題が起こるだろう。中沢が参戦してくるか。

麗子にもいろいろ隠された気持ちを匂わせる。毎回、副社長・宇賀神(ユースケ・サンタマリア)に対してあたふたしているのが楽しい。


第3話の潤之介のコートは、1話と同じ(たぶん)フードつきグレーのコート、背中とサイドベンツや袖にトリコロールラインが入ったグレーのコート。大きめチェックのコートの3パターン。

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●第4話あらすじ
ついに「MIYAVI」創刊号が発売され、上京してからの出来事を感慨深く振り返る奈未(上白石萌音)。改めて「MIYAVI」のページを開いた奈未は、その中の洗練されたモデルたちと比べ、ファッション業界の最先端で働いているのに最先端とは程遠い自分を痛感する。

オシャレに目覚める奈未だが、そのセンスのなさに麗子(菜々緒)からは呆れられてしまう。その様子を見かねた同僚たちは、ブランドのレセプションパーティーに奈未を同行させてあげることに。しかし、そのパーティーで奈未はまた潤之介(玉森裕太)と会ってしまい複雑な気持ちに……。

そんな中、麗子は昔の上司であり、次号の「MIYAVI」で特集ページを担当する、ファッション業界のトップでクリエイティブ・ディレクターのウエクサジンコと再会する。

後日、ジンコのスタッフミーティングの場へ顔を出した奈未は、その和気あいあいとした雰囲気に感動。さらにジンコからの誘いで、ジンコの企画を手伝うことに。
すると、ジンコからなぜか副社長・宇賀神(ユースケ・サンタマリア)との会食のセッティングを頼まれ……。

――番組サイトより


番組情報

TBS系
『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』
毎週火曜よる10時〜

出演:上白石萌音 菜々緒 玉森裕太
間宮祥太朗 久保田紗友 亜生(ミキ) 秋山ゆずき 太田夢莉
高橋メアリージュン なだぎ武 犬飼貴丈 橋爪淳 山之内すず
宮崎美子
高橋ひとみ
倉科カナ
ユースケ・サンタマリア

番組サイト:https://www.tbs.co.jp/BOSSKOI_tbs/


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami
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