混迷を深める中東情勢。石油不足があちこちで顕在化し、これまでの大量消費社会を維持するのはもう無理じゃないか──。

そう考えた記者はふと、俳優の東出昌大のことを思い出した。6年前のスキャンダルがきっかけで北関東の山間部に移住し、狩猟などをしながら半自給自足生活を送っている。そのライフスタイルに、石油依存から脱却するヒントがあるかもしれないと思い、彼の生活拠点に足を運んだ。今回は前後編の【前編】


■役者の仕事は「面白い依頼が来たら」


 今月中旬、曇り空が広がる日に、記者は東出の元を訪ねた。昨年末に取材して以来、会うのは2回目だ。彼が住むのは、標高700メートル地点の山間部にある古民家。正午前に到着すると、東出が「お変わりなく、お元気でしたか?」と笑顔で出迎えてくれた。


 早速、生活の拠点としている古民家に招き入れてもらった。玄関の戸を開けると、東出の猟犬・しーちゃんが記者に飛びつき、熱烈な歓迎を受けた。古民家は所々リノベーションされ、懐かしい木の香りが漂う。山の中腹にあるため冬季は室内が氷点下になることもあるが、薪ストーブなどで暖を取るという。


「例えば、江戸時代の人たちの生活は、非常に環境負荷が少なかったはず。

地球環境のバランスがどんどん崩れていく中、全部元に戻れるわけではないと思いますが、自分は現代の生活とのいいとこ取りをしていきたい」



「電気、水道は通っているし、ポケットWi-FiとiPadで仕事の連絡なども取っています」

 東出は〈原始生活をしている〉と喧伝されることもあるが、「自分なんてまだまだですよ」と笑い、こう続ける。


「電気、水道は通っているし、ポケットWi-FiとiPadで仕事の連絡なども取っています。俳優の仕事も食うためにある程度やらないと。といっても、そこまでお金に困らない生活をしているので、面白そうだったら仕事を受けるって感じです」


 昨年は、世界的ヒットを記録したNetflixシリーズ「イクサガミ」(昨年11月配信)にも出演。俳優業も絶好調だ。


 現在の拠点に移住してからは、猟銃を持っての狩猟生活を本格化させた。


「多く取れるのはシカですが、他にもイノシシ、アナグマ、クマなどが、年に大体25頭ほど。全部ジビエですが、それだけあると十分で、お店で肉を買わないくらいにはなります。このあたりの渓流ではイワナやヤマメ、夏になるとスッポンも釣れますね」



何度も口にした「足るを知る」という言葉

 他にも、母屋から少し離れた「ひがしで農園」で、4年前から畑作を行っている。うっそうとしたスギ林に覆われ、学校の教室くらいの広さだ。決して大きくはないが、「一家が食べる分には全然困らない広さ」らしい。現地を案内してもらった。


「育てているのは、ジャガイモ、ネギ、ブロッコリー、キャベツ。で、これがレタス、ピーマン。これはイタリアンパセリ、スナップエンドウ、ラディッシュです。あと、ギョウジャニンニクも去年植えたやつが育って、ミョウガも最近芽吹きました。この中でも、ジャガイモはもう買わないですね。かつてジャガイモの凶作で大惨事になった『アイルランド飢饉』が起こったように、炭水化物としてのジャガイモのエネルギーって凄いんですよね」


 この日、東出が何度も口にしたのが「足るを知る」という言葉だ。それこそが、彼の求めるあり方だという。


「確かに、私も大量消費社会の恩恵を確実に受けているけど、過度な成長は望んでいません。近くのコミュニティーの人たちと幸せを分け合い、狩猟・採集をし、半分農耕をしながら生きていきたいですね」


 午後3時を回る頃、東出は近所の温泉施設に歩いて出かけて行った。「こんな時間に風呂に行けるくらいにはヒマ」と笑う姿は、楽しそうだった。=【後編は6月6日(土)公開です】


(取材・文=橋本悠太/日刊ゲンダイ)


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