私は2022年から中国の広州に2年ほど住んでいました。中国へ行くことが決まった時は、「中国語は難しいし話せるようにはならないだろう」と最初から諦めており、せめて帰国までにHSKだけ取って日本に帰ろうと考えていました。
それは現地で出会った友人との交流です。子どもの幼稚園で出会ったママ友たちは、言葉が不自由な私に対してもとても親切にしてくれました。車で送ってくれたり、休日にピクニックに誘ってくれたり、家に招いて手料理をごちそうしてくれたり。まるで家族のように私たち親子を迎えてくれました。
そんなある日、仲良くしていた友人の一人から突然連絡が途絶えました。幼稚園でも見かけなくなり心配していたところ、「複雑な話で英語では説明できない。中国語でメッセージを送るから翻訳アプリで読んでほしい」と連絡がありました。
彼女が抱えていたのは、家庭や育児、家族の問題などが重なった非常に大変な状況。メッセージを読みながら、胸が締めつけられるような思いでしたが、私にできたのは、翻訳アプリに気持ちを入力し拙い中国語で「私にできる事があったら言ってね」と伝えることだけ。
彼女が私にしてくれた多くの事に、何一つ返せない。そんな思いが、「本気で中国語を学びたい」と思うきっかけになりました。「完璧に話せるようにならなくてもいい。いつか、彼女の言葉で彼女の話を聞き、辛い時には彼女の言葉で寄り添いたい」。そう心に決めました。
それからは、どうすれば話せるようになるかを真剣に考え、最も大切なのは実際に話す機会を持つ事だと気づきました。当時はコロナ禍が明けたばかりでオフラインの語学交流の場はなく、ないなら自分で作ろう!と思い、「語学交流会」を立ち上げました。
最初は仲の良い友人10人程に声をかけ、週に1回カフェで集まって話す会として始めました。中国語、日本語、英語ごちゃまぜで、「話したい事を、自分が話せる言葉で話していい場所である事」を大切にしました。
徐々に参加者は増え、3ヶ月後には登録者が120人を超え活動回数も20回近くに達しました。参加人数は日によって異なり、5人の日もあれば20人以上になる日もありましたが、「語学に触れられる場がある」「生の言葉を使える」「安心して参加できる」そんな会を続けていくうち、私自身の語学力も確実に伸びていきました。
半年ほど経った頃、多くの日本人メンバーは任期付きで広州に滞在していたため、会の存続のために中国のSNS小紅書に投稿してみることにしました。フォロワーはわずか3人でしたが、「まずはやってみることに意味がある」と思って投稿したところ、驚くほどの反響があり、1ヶ月で約100人ほど登録者が増えました。
その後も人数は増え続け、2024年12月に記念すべき100回を迎えることができました。私が帰国してもこの活動が続くようにと、運営委員会を立ち上げ、現在もその活動は広州で続いています。交流会への登録者は現在900人を超えました。
日本でも同じように交流できる場を作りたく、友人たちと東海地方での交流会を立ち上げて現在は月に1回程度交流会を開催しています。この語学交流会は、ただの言語練習の場ではありません。話題は中国と日本の文化、旅行、教育、子育て、さらには歴史や政治にまで及び、互いの違いを知り、尊重し、学び合う場となっています。
中には「日本のアニメやアイドルが好きで日本語を学んでいたけれど、これまで一度も日本人と話したことがなかった」という方もいました。そんな方たちが「この会に来てよかった」「大切な友人に出会えた」と話してくれたとき、私は心から「やってよかった」と思いました。
日本と中国の間には、時にニュースやネット上でネガティブな情報が飛び交います。でも、私が広州で過ごした日々は、現地の人たちの温かさと優しさに支えられていました。
中国にいた頃から、YouTubeやビリビリ動画、その他SNSなどを通じて、日本と中国の架け橋になれるような活動を続けてきました。広州でいただいたたくさんの優しさや学びを、今度は私が誰かに返していけるように。日本のことをもっと知りたい、行ってみたいと思ってくれる中国の方が増え、両国の相互理解と関係がさらに良くなっていくことを、心から願っています。
■原題:中国語なんて無理だと思っていた私が、語学交流会を立ち上げるまで
■執筆者プロフィール:鈴村 亜希子(すずむらあきこ) 会社員
北海道留萌市出身。カナダの大学を卒業後、カナダ・アメリカのホテル勤務を経て、日米で9年間リクルーターとして働く。現在は人材紹介会社の研修を担当。2022年より中国・広州に家族で約2年半滞在。現地でHSK6級を取得。語学交流会の主催や現地の幼稚園でのPTA活動も行う。YouTube チャンネル『〝元〟中国在住カタコトYoutuber』では中国Vlog、中国語学習、中国への思いを発信している。
※本文は、第8回忘れられない中国滞在エピソード「レンズ越しに見えた『本当の中国』」(段躍中編、日本僑報社、2025年)より転載したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。











