アルゼンチンの1強状態 しかしメッシは諸刃の剣か

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メッシは史上最多6度目のW杯出場という偉業を成し遂げることができるのか photo/Getty Images

前大会覇者アルゼンチン代表が入ったのはグループJ。アルジェリア代表、オーストリア代表、ヨルダン代表の3カ国が名を連ねるグループだ。アルジェリアは3大会ぶり、オーストリアは7大会ぶり、ヨルダンに至っては初出場と、近年W杯の出場権獲得に苦しんできた国々が集まっており、王者の1強となることが予想される。



アルゼンチンの主力には30歳超えの選手も少なくない。連覇を成し遂げるためには、グループリーグから“ペース配分”を気にする必要がありそうなだけに、この上ない対戦カードとなったかもしれない。

そしてアルゼンチンを語る上で欠かせないのが、FWリオネル・メッシ(インテル・マイアミ)。一時は代表引退も囁かれた大エースだが、3月の代表活動に参加し、先日発表された55名のメンバー候補にもしっかり名を連ねている。怪我やコンディション不良がなければ順当に選ばれることとなるのではないか。

ここぞの場面での勝負強さや一撃必殺の左足を持つメッシが出場するということは、一発勝負の舞台では大きなメリット。ただ一方で、ひとりの守備免除がチームバランスを大きく崩しうる現代サッカーにおいては、諸刃の剣でもある。

カタール大会では残りのフィールドプレイヤー9人がハードワークすることでメッシの運動量不足を補填し、悲願の優勝を成し遂げた。出場国数が拡大したことで試合数が増え、移動距離も決して短くはない。さらにチームとしては高齢化が進む。メッシをスタートから起用するのであれば、前大会の戦いをどれだけ再現できるかが鍵となりそうだが、そういった意味でも選手のコンディションをうまく調整できそうな対戦カードとなったのは大きい。

とはいえ、2位から6位までが1ポイント差という史上稀に見る大激戦となった南米予選において、アルゼンチンは唯一圧倒的な力を見せつけて本大会出場を決めた。
もちろん、多くの試合でメッシもしっかりとスタメン起用されていた。これらの心配が杞憂に終わる可能性も高いか。

“仏”仕込みのアルジェリアと“独”仕込みのオーストリア

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選手へ指示を出すラングニック監督。W杯でもオーストリアを躍進させられるか photo/Getty Images

近年のW杯経験の少なさや大会日程を踏まえると、2位以下は混戦模様となるかもしれない。どの国にもノックアウトステージへコマを進めるチャンスはあるだろう。

アルジェリアはフランスのクラブを経由してステップアップを遂げる選手が多いだけに、やはり個の力に秀でた選手が多い。特に長年チームの柱として牽引してきたFWリヤド・マフレズ(アル・アハリ)を筆頭に、サイドは非常に強力。DFラヤン・アイト・ヌーリ(マンチェスター・シティ)やDFラフィク・ベルガリ(ヴェローナ)といった攻撃的SBの若き逸材も台頭している。

アフリカ予選突破チームではコートジボワールに次ぐ得点力を発揮(10試合24得点)。危なげなくW杯の出場権を手にしたが、本大会でもその安定したパフォーマンスを発揮できるかに注目だ。

一方、主力選手たちの多くがブンデスリーガでプレイするのがオーストリアだ。そのため、ドイツサッカーを熟知する戦術家ラルフ・ラングニックの招聘は大正解だったと言えよう。



2022年の就任直後こそ苦しい戦いが続いたが、ドイツで馴染み深いゲーゲンプレスや縦への速さなどを駆使することで急成長を遂げる。EURO2024ではフランス、オランダ、ポーランドという難敵が顔を揃えるグループリーグを首位突破して見せた。結果だけでなく内容でも対等以上の戦いを見せたことで、その実力が偶然ではないことも示している。

最後にW杯初出場となるヨルダン。代表選手の多くが国内、もしくは中東のクラブでプレイするが、そんな中で欧州を知る数少ない選手のひとりがFWムサ・アル・ターマリ(レンヌ)だ。しかもリーグ・アンでは現在5位につけているチームの主力として、6G9Aの活躍を見せている。未知の戦いが待っているヨルダンにとって、これほど心強い選手はいないだろう。

他の3国に比べて、ヨルダンは圧倒的にタレントが少ない。しかし、大会日程が大きくヨルダンの味方をしている。ヨルダンはグループリーグで1度しか移動がないのに対して、アルジェリアとオーストリアは3試合全てで移動を余儀なくされる。さらにヨルダンはアルジェリア、オーストリアと対戦する初戦と第2戦は同じスタジアム(サンフランシスコ・ベイエリア)で戦えることから、環境面では圧倒的に有利となっている。グループJで波乱を巻き起こす可能性は大いにあるだろう。


文/及川 裕太

※電子マガジンtheWORLD317号、5月15日配信の記事より転載

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