豊崎由美(とよざき ゆみ)……書評家、フリーライター。池袋コミュニティカレッジの書評講座「豊崎由美 書評の愉悦」講師。
杉江松恋(すぎえ まつこい)……書評家、文芸評論家、フリーライター。書評を楽しむための専門サイト「BOOK Japan」主宰。
イベントの表題作と、発表された課題内容は以下のとおり。
◇西村賢太『どうで死ぬ身の一踊り』(講談社文庫)
◇J・P・マンシェット『愚者(あほ)が出てくる、城塞(おしろ)が見える』(光文社古典新訳文庫)
どちらか好きな作品の書評を800~1200字で書き、想定媒体を明記し提出。豊崎と杉江が各5点満点で採点。イベント当日に全提出作品の点数を発表し、一作品ずつ順番に講評していく方式。そしてイベントの最後に豊崎賞と杉江賞をそれぞれ選出。ちなみに今回は豊崎、杉江ともに5点をつけた作品はなし! 書評講座受講生も多く参加していたようですが、書評王への道は厳しいのですね……。全提出作品はネットにアップされ、当日はU-Stream生放送も実施されました。
「講座」といえど場所はクラブハウスで、ミラーボールあり、酒・タバコ・ミックスナッツなどありのアダルトな雰囲気。私もビールを2杯いただきました。また、異論があったら客席から自由に手をあげて意見していいという全員参加型で、ステージ上のおふたりと客席との会話があったりとアットホームな雰囲気です。
全23作品のうちエキレビ!からは、加藤レイズナ、tk_zombie、渡りに船、夏トマトが提出。筆者名がなくとも、文体やクセでなんとなくエキレビ!ライターの作品はどれだかわかります。しかしやはり書評イベントに応募するくらいだから、おそらくみんな本が好きで相当量読んでいる人たち。同じ著者の他作品との傾向を比較して分析したものや、同じ本を読んだはずなのに自分でも気付かなかった点をあげていたりして、対談が始まる前に目を通しただけでも軽く圧倒されていました。私の原稿鼻で笑われたらどうしよー、ひー!
原稿を書いていないエキレビ!ライターの米光一成は、前の方に出てバンバン挙手してイベントを盛り上げます。「引用が多すぎることを指摘していましたが、この書評はあえて多用することによって西村賢太カラーを出しているのだと思う」と反論したりしていました。エキレビ!ライター作品へのさりげないあと押しもありちょっとたのもしい。もちろん全然知らない人からも、「この作品のこの部分は意味が通ってないのでは」と結構正直な意見があがるのでかなりハラハラドキドキです。私の作品にも意見があがりましたが、「配布資料が無記名でよかったぁ~」と思いながら気配をひそめてじっと様子を見守るのみ……。
そして結果。豊崎賞は、最高点(各4点)獲得者(#18)が受賞。暴力的表現もある過激な西村賢太作品の書評を、雑誌「小学四年生」(小学館)に載せるという思い切った発想に、会場もザワザワ。提出者は遠方のためイベントには不参加でしたが、きっとU-Streamで視聴されていたのではないでしょうか。本を読みこむだけでなく、こんな遊びを思いつく発想力も必要なんだなぁ、すごいなぁと思わされました。おめでとうございます!
そして続いて杉江賞。見事にエキレビ!から参加の加藤レイズナが受賞です! わーい、おめでたい! 加藤は受賞者としてステージで挨拶。かなり緊張している様子で、はにかみながら景品を受け取りペコリとお辞儀をする姿に、隣にいた私の友人ライターが「照れててかわいい♪」と一言。さて、そんな加藤本人の声です。
加藤レイズナ(#8)「エキレビ!ライターと、それ以外の書評のカラーが違いすぎて、まとめた原稿読んだときに『うわー、こんな書評で大丈夫か……?』って思いましたねー。でも、エキレビ!カラーができているってことで嬉しかったです。
あ、あと米光さんがエキレビ!ライターへの講評に対して、『豊崎さんはダメっておっしゃいましたが、ここはちゃんと最後にこの部分とうまくかかってきているから、僕はいいと思うんですよ』とバンバン意見している姿はお父さんみたいで、頼もしかったです。
杉江賞として、同人ゲーム『東方地霊殿』と『江頭2 50のピーピーピーするぞ』のDVDをもらったのでゆっくりたのしみますよー。そういえば、講座開始前におつまみのピスタチオを殻まで食べたら渡りに船に笑われました。あいつは一生許しません」
そうなんです、コメントにもあるように、杉江賞の選出で加藤と競りあったのが、同じくエキレビ!ライターの私、夏トマトのものだったのです!
夏トマト(#12)「読むスピードが遅いので、途中から登場人物をアイドルに置きかえて妄想を交えつつ読んだりしました。無理して分析とかしたらボロが出そうだったので、かわりに実体験とかを入れてみたのですが、それが意外に好評価でうれしかった。もっともっと激しい妄想とか入れてもよかったかなーって今では思ってます。加藤さんの作品は、事前につけられていた点数から当日2点もアップしていて、その時の勢いがあったんですよね。ただ杉江さんが選出に迷っているときは、素直に『選ばれろ、自分!』と思っていましたよ。だって当日ジャンプアップなんてズルイ! だから悔しい!」
加藤、夏トマトの書いたエッセイ風書評(偶然ですがテイストがすごく似ていた)に対し、「エッセイ風は自分が得意ではないので、その人の持つオリジナリティに思わず目を惹かれる。
また、「講座」と銘打ったイベントだけあって、「論点が多すぎると内容が薄まる。語りすぎずにせいぜい1~2点にせよ」「あらすじと引用の使い方で、どれだけ読み込んでいるかがわかる」「あっいいこと思いついた、ということを最後にチョロッと書き足すのではなく、そこを書き出しにして書き変えてみるとよい」などと、実際ものすごく役にたつ議論もありました。そして「取材や努力をきちんとしている“汗をかいた文章”がいい文章」としめくくった杉江。うーん、勉強になります! お酒を飲みつつも、ノートにはメモがいっぱいになりました。
「書評」と聞くとかたいイメージがあり書くことを敬遠しがちな人もいるかもしれないけれども、受賞作品を読んでみるとそうでもないことがわかるはず。無理して書かずに素直な想いを書けば、書いていても楽しいし、読み手にも伝わるのです。と、読書家ではない私が今回実感!
「書評を評する」という行為をおおいに楽しんだ書評ナイト。書評サイト「BOOK
Japan」では随時書評を募集しているのでみなさんも挑戦してみてはいかがですか?(夏トマト)