2019年は亥年である。総務省の発表によれば、1月1日現在の人口推計では、今年の「年男・年女」となる亥年生まれは1055万人。
このうち最多は今年72歳になる1947年生まれで、206万人を数えるという。戦後の第1次ベビーブームの最初の年に生まれた人たちだけに、さすがに多い。

もっとも多い亥年は著名人も多士済々──1947(昭和22)年生まれ


著名人にも、この年に生まれた人は枚挙にいとまがない。たとえば、きょう1月6日から始まるNHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』で古今亭志ん生を演じるビートたけし。たけしとは『アウトレイジ最終章』で共演した岸部一徳西田敏行も同い年だ。この年生まれの俳優にはこのほか、寺尾聰泉ピン子梶芽衣子などがいる。

歌手では千昌夫布施明森進一ちあきなおみ、ミュージシャンでは細野晴臣小田和正早川義夫、作家では荒俣宏金井美恵子北方謙三清水義範高橋克彦高城修三又吉栄喜宮本輝、マンガ家では池田理代子大島弓子西岸良平はるき悦巳山上たつひこ山岸凉子など各界の大御所がずらりと並ぶ(なかにはちあきなおみのようにほぼ引退している者もいるが)。ちなみに西岸良平と細野晴臣は高校・大学の同級生で、細野は西岸の絵を見てマンガ家になる夢を断念したとか。

各分野のパイオニア的存在も目立つ。ノンフィクション作家では、日本にこのジャンルを定着させた沢木耕太郎をはじめ、佐野眞一山口文憲山根一眞、80年代にコピーライターブームを巻き起こした仲畑貴志魚住勉(最近では女優の浅野温子とのあいだに儲けたNHKの魚住優アナウンサーの父親としても知られる)、営団地下鉄(現・東京メトロ)の路線図や「いいちこ」の広告で知られるグラフィックデザイナーの河北秀也、JR九州のユニークな車両デザインを手がける水戸岡鋭治、将棋の永世名人の中原誠、料理研究家の栗原はるみ、アート引越センターの創業者・寺田千代乃、イラストや装丁、有名人の顔マネなどで活躍する南伸坊も1947年生まれ。南伸坊は、今年公開予定の三谷幸喜監督の映画『記憶にございません!』で、ダライ・ラマに扮した写真が一瞬登場するというから楽しみである(奇しくもダライ・ラマも1935年生まれで南より一回り上の亥年にあたる)。
ビートたけし、西田敏行、美輪明宏、渡辺謙、鈴木亮平、土屋太鳳…ベテランから若手まで亥年生は名優ぞろい
ことしの年男(72歳)の一人・南伸坊。今年は、このダライ・ラマの姿で映画にも登場するとか(画像は文春文庫『本人伝説』)

元プロ野球選手でも、江本孟紀鈴木啓示平松政次福本豊藤田平谷沢健一若松勉に、昨年急逝した星野仙一、衣笠祥雄と、錚々たる顔ぶれがそろう。プロゴルファーの尾崎将司も、もともとはプロ野球・西鉄(現・埼玉西武)の投手だった。
スポーツ界でいえば、日本オリンピック委員会(JOC)会長の竹田恆和がやはりこの年の生まれ。ちなみに竹田家はもともと皇族だが、同家は1947年10月に皇籍を離脱しており、翌月に生まれた竹田自身は皇族だったことはない。

亥年生まれの首相たち


今年72歳の亥年といえば、10年前に自民党から民主党への政権交代を実現させた元首相の鳩山由紀夫もそうである。亥年生まれの首相経験者には鳩山のほか、戦前では阿部信行(1875年生まれ)、戦後では東久邇宮稔彦、片山哲、芦田均(以上1887年生まれ)、池田勇人(1899年生まれ)、鈴木善幸(1911年生まれ)、羽田孜(1935年生まれ)がいる。約8ヵ月で総辞職した鳩山由紀夫内閣に対し、芦田内閣は7ヵ月、阿部内閣は5ヵ月、東久邇内閣と羽田内閣にいたっては歴代最短の約2ヵ月(それぞれ54日、64日)で終わるなど、亥年生まれの首相にはなぜか短命政権が多い。そのなかにあって池田勇人は所得倍増を掲げ高度経済成長を実現、1964年の東京オリンピックを花道に退任するまで4年間首相を務めた。

以下、ほかの亥年生まれの著名人を各年代ごとに紹介していきたい。

96歳、何がめでたい──1923(大正12)年生まれ


関東大震災の起こったこの年生まれ(今年96歳)で存命する著名人には、2016年の『九十歳。何がめでたい』以来、エッセイを続々と刊行し、ベストセラーになっている作家の佐藤愛子、『思考の整理学』などやはりロングセラーの多い英文学者の外山滋比古、茶道・裏千家15代目の千宗室らがいる。また、現在の皇室では最高齢となる三笠宮百合子妃は、1月2日に行なわれた皇居での一般参賀にも出席された。

息長く活躍する人々──1935(昭和10)年生まれ


1935年生まれには、マンガ家の赤塚不二夫、演出家の蜷川幸雄、アニメーション映画監督の高畑勲など、各分野で画期をつくりながらもすでに亡くなった著名人も少なくない。そのなかにあって、歌手・俳優の美輪明宏は、同い年の故・寺山修司作の伝説的な舞台「毛皮のマリー」の再演を今春に控えるほか、テレビなどでもあいかわらず活躍中だ。このほか、今年84歳になる亥年には、ノーベル賞受賞者の大江健三郎(1994年文学賞)、根岸英一(2010年化学賞)、大村智(2015年生理学医学賞)、世界的マエストロの小澤征爾、戦後初の三冠王となった元プロ野球選手・監督の野村克也と、各界の大物が並ぶ。この年生まれの作家には大江以外に阿刀田高堺屋太一柴田翔富岡多恵子畑正憲三木卓、児童文学の分野でも角野栄子(代表作に『魔女の宅急便』など)や中川李枝子(同『いやいやえん』など)がいる。角野は昨年、国際アンデルセン賞を受賞した。
テレビの世界でも、TBSで数々の名作ドラマを手がけた演出家でエッセイストでもある鴨下信一、大河ドラマなどで多くのヒット作を生んだ脚本家の中島丈博(代表作に『元禄繚乱』『真珠夫人』など)やジェームス三木(同『澪つくし』『独眼竜政宗』など)と、この年生まれの人たちが長らく活動を続けている。

「笑点」司会のあの人も還暦──1959(昭和34)年生まれ


2019年は、十二支と十干との組み合わせでいえば、己亥(つちのとい/きがい)の年だ。前回の己亥の年、1959年生まれの人たちは今年60歳の還暦を迎えることになる。

「笑点」の司会でおなじみ、落語家の春風亭昇太も今年還暦を迎える一人。「笑点」メンバーでは若手であり、見た目からしてもちょっと信じがたいが、今年12月に誕生日を迎えるときには番組で赤いちゃんちゃんこを着せられるのだろうか。ちなみに「笑点」の司会者が在任中に還暦を迎えるのは、先代の三遊亭円楽以来27年ぶり。

同じく還暦を迎えるのが、昨年、CMで「字が小さくて見えないっ!」と叫んでいた俳優の渡辺謙だ。俳優では池上季実子京本政樹大高洋夫片平なぎさ古手川祐子赤井英和原日出子田中美佐子などもこの年の生まれ。タレントとしても活動する柴田理恵は、同じく劇団WAHAHA本舗の看板女優だった久本雅美に続き還暦を迎える。2007年から10年間出演した『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』で再び注目された太川陽介は、80年代にNHKの若者向け音楽番組『レッツゴーヤング』の司会を務めていたことでも記憶される。同番組で太川とともに司会を務めた歌手の石川ひとみも同い年。このほか、70〜80年代にアイドルとしてデビューした同年生まれには、榊原郁恵畑中葉子引田天功(二代目)、それから劇的な引退から39年が経つ山口百恵があげられる。タレントではダンカントミーズ嘉門タツオなども今年還暦だ。


小説家も多く、朝井まかて奥田英朗佐伯一麦田口ランディ辻仁成中沢けい長野まゆみ原田宗典藤沢周三浦明博山田詠美といった名前があげられる。このほか、劇作家の川村毅マキノノゾミ、一昨年の朝ドラ『ひよっこ』などを手がけた脚本家の岡田惠和、CMディレクターの中島哲也、劇場アニメ版『クレヨンしんちゃん』シリーズなどの監督として知られる原恵一、ミュージシャンの小西陽康小林武史石井竜也、雅楽演奏家の東儀秀樹、美術家の奈良美智、元プロレスラーの前田日明、元大関の霧島(現・陸奥親方)、社会学者の宮台真司、ノーベル賞受賞者である島津製作所シニアフェローの田中耕一(2002年化学賞)、東大宇宙線研究所長の梶田隆章(2015年物理学賞)が今年還暦を迎える。政界では、ポスト安倍との噂もささやかれる元防衛相の稲田朋美、現在、内閣府特命担当大臣を務める片山さつきがこの年の生まれ。

「ゼビウス」などを手がけたゲームクリエイターの遠藤雅伸や80年代の子供たちのヒーローだった高橋名人と、テレビゲーム関連でも著名人を出しているのもこの年代の特色といえる。マンガ家では、北条司遊人内田春菊やくみつると、同い年ながら作風も活動する媒体も異なる作家の名が並ぶ。おっと忘れてはいけない、昨年、エキレビ!で話題を呼んだあの記事に登場した『ミスター味っ子』『将太の寿司』の寺沢大介先生も今年還暦を迎えます。

ココリコ、オアシズ……芸人も多い1971(昭和46)年生まれ


この1月2日と3日にNHKで放送された正月時代劇「家康、江戸を建てる」の原作者で、直木賞作家の門井慶喜は、1971年生まれの年男。同年生まれの作家にはこのほか、伊坂幸太郎伊藤たかみ桜庭一樹、脚本家・俳優としても活躍する戌井昭人らがいる。このほか、三島賞を受賞した作家でもある批評家の東浩紀、マンガ家の安野モヨコ倉田真由美、社会学者の北田暁大、政治学者の竹中治堅細谷雄一、バイオリニストの五嶋みどり、民主党政権で内閣府特命担当大臣を務め、現在は希望の党に所属する細野豪志も今年48歳の年男・年女である。

芸能人でこの年生まれには、西島秀俊筒井道隆萩原聖人竹野内豊ユースケ・サンタマリア坂本昌行(V6)、木村多江堀内敬子中嶋朋子檀れい藤原紀香川原亜矢子はな酒井法子、ミュージシャンではGLAYのTERU山崎まさよしなどがいる。歌手の島津亜矢は昨年の紅白歌合戦で、中島みゆきの「時代」をカバーして話題を呼んだ。有田哲平(くりぃむしちゅー)、原西孝幸(FUJIWARA)、つぶやきシロー博多大吉カンニング竹山ヒデ(ペナルティ)、ココリコの田中直樹遠藤章造、オアシズの大久保佳代子光浦靖子星田英利(元ほっしゃん。)、おぎやはぎの小木博明矢作兼塚地武雅(ドランクドラゴン)と、お笑い芸人も多い。


スポーツ界では、野球の小久保裕紀前田智徳、テニスの平木理化、スピードスケートの岡崎朋美、柔道の恵本裕子などが同年生まれで、引退後はそれぞれ指導者などとして活動している。この年生まれからは、武蔵丸(現・武蔵川親方)、三代目若乃花(現・花田虎上)と二人の横綱も出た。

色々ありましたが……の1983(昭和58)年生まれ


元モーニング娘。の矢口真里、元SPEEDの今井絵理子上原多香子小倉優子ソニンなど、1983年生まれの年女にはスキャンダルなど“色々あった感”のある芸能人が目立つ。矢口・上原・小倉は昨年あいついで再婚した。今井は2016年の参院選で初当選、今年が1期目の折り返しとなる。ソニンは男女二人組のダンスボーカルユニットとしてデビューしたものの、相方の不祥事によりソロ歌手・タレントに転身、体当たり系の仕事も多かったが、現在は舞台を中心に女優として活躍する。小倉優子とは同時期にグラビアアイドルとしてデビューした磯山さやかは、タレントの仕事とあわせいまも現役グラドルとして活動中。一方、やはりグラビアで活躍した小林恵美の芸能界引退は惜しまれる。セクシー女優として日本だけでなく中国でも人気を集める蒼井そらは昨年結婚した。昨年デビュー20周年を迎えたミュージシャンの宇多田ヒカル、歌手の中島美嘉、女優の水川あさみも今年36歳の年女。

男性芸能人では、昨年の大河ドラマ「西郷どん」で主演を務めた鈴木亮平のほか、松田龍平山田孝之伊藤淳史福士誠治ら実力派俳優が顔をそろえる。やはり俳優として活躍する風間俊介、嵐の二宮和也松本潤をはじめ、KAT-TUNの中丸雄一上田竜也、関ジャニ∞の丸山隆平、ソロで活動する屋良朝幸とジャニーズでも層の厚い年代にあたる。
このほか、歌舞伎役者で、昨年、兄の中村勘九郎とともに父・18代目中村勘三郎の遺志を継いで「平成中村座」を成功させた中村七之助、昨年末に結婚報道が出た俳優・タレントの篠山輝信も年男だ。

お笑いタレントでは、近藤春菜(ハリセンボン)、桜 稲垣早希藤森慎吾(オリエンタルラジオ)、もう中学生も、今年でもう36歳。小説家では、昨年、直木賞を受賞した島本理生のほか、金原ひとみ青山七恵小山田浩子と芥川賞受賞者があげられる。小説家以外にも、『ブラック企業』などの著書がある社会学者で労働・福祉運動家の今野晴貴、社会学者の鈴木涼美、美術家・批評家の黒瀬陽平、文芸評論家の藤田直哉とユニークな書き手が多い。また、「もふくちゃん」こと福嶋麻衣子は、ライブ&バー「秋葉原ディアステージ」を開き、でんぱ組.incなどのアイドルグループを世に送り出した。

スポーツ界では、「おぐしお」ことバドミントンの小椋久美子潮田玲子、女子サッカー日本代表「なでしこジャパン」の丸山桂里奈は、引退後タレントとして活動する。サッカー日本代表経験者ではこのほか、福元美穂川島永嗣今野泰幸徳永悠平ら、プロ野球選手では「おかわり君」こと中村剛也金子千尋松田宣浩など、大相撲ではヨーロッパ出身では初めて大関となった琴欧洲(現・鳴戸親方)、また、2008年の北京五輪で優勝したソフトボール日本代表のメンバーである乾絵美染谷美佳もこの年生まれの亥年である。

若手注目株ぞろいの1995(平成7)年生まれ


ここまで各年代で名優たちを輩出してきた亥年だが、今年24歳になる1995年生まれにも、土屋太鳳川口春奈川栄李奈松岡茉優相楽樹佐久間由衣早見あかり森川葵大野いと奈緒志尊淳と、近年実力を発揮しつつある俳優が並ぶ。このうち相楽は昨年、一回り上の映画監督・石井裕也との結婚が話題を呼んだ。昨年、乃木坂46を卒業し、やはり俳優など多方面で活動を始めた生駒里奈も同い年。現役アイドルでは、欅坂46のキャプテン・菅井友香渡辺梨加、Sexy Zoneの菊池風麿、King & Princeの岸優太、ももいろクローバーZの玉井詩織、グラビアで人気を集めるわちみなみ馬場ふみかなどがあげられる。このほか、昨年第一子を儲けたタレントのりゅうちぇる、昨年、紅白歌合戦に初出場したシンガーソングライターのあいみょん、体操の寺本明日香なども注目される。

(近藤正高)
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