福山雅治主演のTBSの日曜劇場「集団左遷!!」では、第1話で山田たかおが宅配業者の役で、第2話では三遊亭小遊三が不動産屋の役でゲスト出演した。いずれも「笑点」(日本テレビ)の大喜利メンバーだ。


日曜劇場ではここ数年、「笑点」メンバーがたびたび出演している。前作「グッドワイフ」では、三遊亭円楽が内閣官房長官の役でレギュラー出演、「笑点」司会の春風亭昇太も第6話に車椅子の弁護士役でゲスト出演していた。昇太はこれ以前にも、「下町ロケット」の第1シリーズ(2015年)で銀行支店の課長、「小さな巨人」(2017年)では警察署の署長の役でそれぞれ出演している。円楽も昇太も、「笑点」でのイメージとは違い、シリアスな役どころであった。制作側としても、おそらくそのギャップを狙ってのキャスティングであったはずだ。
「集団左遷!!」笑点メンバー続々登場の意図は? 日曜劇場キャスティングをさかのぼって検証してみた
イラスト/まつもとりえこ

目立つ落語家、歌舞伎役者の起用


それにしても、「笑点」と日曜劇場、同じ日曜の番組で出演者が重なるというのが興味深い(昇太にいたっては2017年には「小さな巨人」と前後して、NHKの大河ドラマ「おんな城主 直虎」で今川義元という大役を務め、日曜夜のお茶の間を独占した感があった)。「ねとらぼGirlSide」の「集団左遷!!」レビューでも書いたが、ひょっとすると「笑点」の視聴者層をそのまま持ってこようという思惑もあるのかと、つい勘繰りたくなる。

しかし、考えてみれば、日曜劇場では「笑点」メンバーにかぎらず、落語家の出演が目立つのだった。前出の「下町ロケット」では町工場の経理部長(昨年放送の第2シリーズでは実家の農家を継いだ)の役で立川談春が大活躍だったし、「小さな巨人」では桂文枝が誘拐されるIT企業の社長役で登場した。また、笑福亭鶴瓶も、「半沢直樹」(2013年)の主人公の父親役や、昨年放送の「99.9-刑事専門弁護士-」SEASON IIの東京地裁所長代行の役など、印象深い役を演じている。

落語家とともに日曜劇場での起用が目立つのが歌舞伎役者だ。「下町ロケット」の第2シリーズでは、尾上菊之助演じる主人公たちを途中で裏切った町工場の社長が記憶に新しい。また、市川猿之助は一昨年舞台で大けがをして休業を余儀なくされたが、外科医の役で出演した昨年4月期の日曜劇場「ブラックペアン」がドラマ復帰作となった。
「集団左遷!!」の第2話にも、中小企業の社長役でゲスト出演している。このほか、「陸王」(2017年)でシューフィッター(という職業があることをこのドラマで初めて知った)を演じた市川右團次の好演、「半沢直樹」でオネエ口調の国税局査察部の統括官を演じた片岡愛之助の怪演も忘れがたい。

落語家、歌舞伎役者と、伝統芸能からの起用が目立つのは、やはり現代劇を演じることでのギャップを狙ってということもあるのだろう。また、それぞれの道で型を身に着けているだけに、場面を引き締める役回りも期待されているように思う。

「ミスター日曜劇場」はやっぱりあの人!


さて、日曜劇場には、すっかり常連となっている俳優が何人かいる。なかには木村拓哉のようにたびたび主演を務めている者もいるが、「ミスター日曜劇場」を選ぶとするなら、やはり香川照之を置いてほかにいないだろう。「新参者」(2010年)、「南極物語」(2011年)に続き、「半沢直樹」で主人公・半沢(堺雅人)の敵役となる大和田常務を演じたことが、日曜劇場における香川の地位を確たるものとした。このとき、大和田が半沢と顔を突き合わせながら激しくやり合うシーンから「顔相撲」なる言葉が生まれ、また最終回での不承不承の土下座も話題を呼んだ。

以来、香川は主に脇役として(2015年の「流星ワゴン」で西島秀俊とW主演を務めたのを例外として)日曜劇場ではおなじみの存在となっている。今回の「集団左遷!!」でも、福山雅治演じる主人公の銀行支店長に対し、敵とも味方ともつかない態度をとる副支店長役を好演している。とかく張り切って行動しがちの主人公に対し、それを抑えようとする役どころだけに、今回はいまのところ演技も抑え気味だ。

このほか、先週5月5日放送の「集団左遷!!」第3話にゲスト出演していた高木渉もここ数年、日曜劇場の常連になりつつある。
本来は声優で、2016年のNHK大河ドラマ「真田丸」がテレビドラマ初出演となった高木だが、同年の「IQ246〜華麗なる事件簿〜」で日曜劇場にも登場、翌17年の「A LIFE〜愛しき人〜」、昨年の「99.9-刑事専門弁護士-」SEASON II、そして今年に入って「グッドワイフ」「集団左遷!!」と、ここ4年間でじつに5作に出演している。いずれもゲスト出演だが、今後はレギュラーでの出演も見たいところ。

若手では、馬場徹の健闘が光る。「ルーズヴェルト・ゲーム」(2014年)では、電機メーカーの弱小野球チームで投手を務めながら、故障のため退職を余儀なくされる青年を演じた。最終回でチームの応援に駆けつけた姿がいまも記憶に残る。その後、「99.9-刑事専門弁護士-」SEASON I(2016年)・II、「陸王」、「下町ロケット」第2シリーズに出演。「陸王」では、老舗足袋メーカーの取引銀行の融資課長という役どころで、最初は役所広司演じる社長らに対し冷酷ともいえる態度をとっていたものの、しだいに協力的になっていくさまを見事に演じきっていた。

チーム単位で見ると、北海道発の劇団ユニット「TEAM NACS」のメンバーの活躍が著しい。メンバーのうち安田顕は「下町ロケット」で技術開発部長役で出演、第2シリーズでは、大学教授役で登場した同僚・森崎博之と共演をはたした。安田は日曜劇場では「小さな巨人」(2017年)にも出演しているほか、現在NHKで放送中の朝ドラ「なつぞら」ほか各局の連続ドラマで引っ張りだこだ。ちなみに「なつぞら」は舞台が北海道とあってか、安田のほか音尾琢真、戸次重幸とTEAM NACSから3人が出演中だが、日曜劇場でも、音尾が「陸王」で陸上部の監督役でレギュラー出演(「ブラックペアン」ではゲスト出演)、戸次も「下町ロケット」第1シリーズのほか、今夜放送の「集団左遷!!」にも不動産コンサルティング会社の代表役でゲスト出演する。

TEAM NACSといえば、大泉洋が7月開始の日曜劇場「ノーサイド・ゲーム」に主演することが決まっている。
大泉が日曜劇場で主演するのは、複数の脚本家による競作となった「おやじの背中」第8話「駄菓子」(池端俊策脚本、2014年)以来5年ぶり。今度は日曜劇場ではテッパンともいうべき池井戸潤原作、福澤克雄監督コンビによる新作だけに、期待は高まる。
(近藤正高)
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