
これはムロツヨシ劇場『親バカ青春白書』
『親バカ青春白書』(日本テレビ系 毎週日曜よる10時30分〜)はムロツヨシと永野芽郁による父娘(おやこ)もの。妻・幸子(新垣結衣)を早くに亡くしたガタローこと小比賀太郎(ムロ)はひとり娘のさくら(永野)を溺愛して育ててきた。心配が高じて、大学まで一緒に入学してしまう。第1話は、はじまったばかりの大学生活に浮かれ過ぎてこわい目に遭ってしまったさくらをガタローはどうやって救い出すか――。やたらパチパチとまばたきの音がSEで入るような、ほのぼのドタバタ、ホーム&キャンパスものかと思って見ていたら、さくらと同級生の寛子(今田美桜)が意外とディープな事件に巻き込まれたからびっくりした。
『今日から俺は!!』ではストレートロングで金八先生キャラを演じていたムロは『親バカ』ではちょっとだけグレーヘアにして、お父さんキャラを際立たせる。それにしたって、永野の親ってさすがに若すぎないかと思ったが、ムロは四十代。早くに結婚して子供ができていたら大学生になる娘がいてもおかしくはない。ドラマでは学生結婚という設定だ。
ムロ演じるガタローが、娘のことを心配するあまり大学に一緒に入学、キャンパスライフを一緒に送ることになるので、ちょっと老けた大学生というところではムロに合う。むしろ、入学式のスーツの永野芽郁(20歳)と今田美桜(23歳)が新入社員にしか見えなかった。いやでも私服になったら大学生に見えた。いや、いいのだ、そんなリアリティーはこのドラマには関係ない。このドラマの妙味は、お父さんが大学生であることなのだから。
贅沢に新垣結衣を使う
リアリティーの問題で言えば、太郎の妻が新垣結衣であること。『獣になれない私たち』(18年 日本テレビ系)以来、新作映画やドラマに出ていなかった新垣が『親バカ青春白書』に出演する、しかもムロの妻役と発表になったときSNSはそりゃもう湧いた。「お母さんは女神だよ」と崇めたてまつる太郎。そりゃそうだ、新垣結衣なのだから。新垣結衣といい、『大恋愛〜僕を忘れる君と〜』(TBS系 18年)の戸田恵梨香といい、ムロは相手役に恵まれている。決してイケメンではないが美女に愛される魅力ある人物・それがムロツヨシ。
なぜかといえば、ただ演じるだけでなく(もちろんただ演じることも尊いのだが)、自分で作、演出もやる才気に価値があるのだろう。いつも陽気にふざけているように見えるが、どこか影がありそうな感じも奥深い。
『親バカ』第1話でも、さくらがピンチに陥ったところを助けるターンで、ある瞬間、キッと表情をシリアスにしたときの凄みも効いていた。
いつもの押しの強い福田節は弱め
『親バカ』のガタローは『大恋愛』に続いて作家。デビューから20年ヒットがないが、ほそぼそと続けている。一作当てて20年生きていけるってすごい。しかも東大卒設定。さくらを箱入り娘として行動を逐一チェックしているストーカー的なところもあるが、あっけらかんと大きな愛情のほうが勝つ。彼のその無邪気さに、さくらの同級生たち(今田、中川大志)はすっかりファンになってしまう。
『親バカ』はムロツヨシ劇場である。GP帯初主演作。落語も披露したりして大活躍。三枚目のバイプレーヤーから、ちょっと二枚目で美女の相手役もできる振り幅の広さと、みんなに愛される魅力をすべて盛り込んでいる。長年、ムロを起用し続けている福田雄一だからこそのドラマである。
ただ、福田は、脚本統括と演出で、脚本は穴吹一朗によるもの。そのせいか、いつもの押しの強い福田節は弱めで、ほっこりとして見やすいものになっているように感じた。
永野芽郁はポカンと丸い目元と口元で純粋無垢なキャラがはまる。今田美桜は日曜劇場『半沢直樹』(TBS)から続いて登場、今夏、日曜夜の顔のようである。ガタローをすっかり好きになる畠山を演じる中川大志は『LIFE!』で鍛えているコント能力を発揮。彼もまた無垢なキャラがハマる。
根来役の戸塚純貴は福田作品で大活躍の俳優で、全力でおバカになりきる熱が画面からはちきれそうで、この人がいると面白くなる。大村教授役の野間口徹は任せて安心のコメディの巧い俳優。子役から芸歴の長い小野花梨も的確な芝居で脇を固めている。
『今日から俺は!!』の出演者11人がゲスト(というかカメオ出演)で登場するのも話題で、第1話には、寛子の父役で佐藤二朗、テニスサークルの先輩役に磯村勇斗が登場した。佐藤とムロが永野と今田のお父さんとして真顔で対面している場面はなんともいえず面白かった。第2話では誰がどんな形で登場するか楽しみ。
(木俣冬)
番組情報
日本テレビ『親バカ青春白書』毎週日曜よる10:30〜
番組サイト:
https://www.ntv.co.jp/oyabaka/