X(旧ツイッター)は3月から4月にかけて、それまで手動で操作する必要があった外国語翻訳を自動化した。すなわち、すべての外国語の投稿がユーザーの母語に自動翻訳されて表示されるようになった。
当初は「温かい交流」が出現したのだが
Xの製品責任者であるニキータ・ビア氏はこの機能追加を「史上最大規模の文化交流」と呼んだ。当初は確かにビア氏の言った通りだった。米国南部で開催された豪快なバーベキューの写真が日本人ユーザーのタイムラインに飛び込み、日本人が披露した米軍基地の隣人のバーベキューの話題が世界全体で5000万回以上閲覧され、「侍とカウボーイが一緒にバーベキュー」ともてはやされた。日本人がジョン・デンバーの「カントリー・ロード」を歌う動画は英語圏で大量に閲覧され、双方が「あなたたちもこの歌が好きだったのか」と驚きの声を上げた。確かに「温かい交流」は発生した。
しかしその後は雲行きが怪しくなった。その大きな原因は日本の「高コンテクスト文化」、つまり日本語での意思疎通にありがちな、多くを文脈に頼り、主語を省略したり、内輪にしか分かりにくい皮肉やジョークを大量に使用する習慣だ。このような言語伝達が人工知能(AI)で直訳されてしまうので、往々にして冗談が「宣言」のように読まれ、愚痴が宣戦布告のように受け止められることになり、海外ユーザーが猛反発する事態を招くようになった。中でも3種類の炎上が最も激しい。
日本人は「愚痴った」だけなのに「外国人差別」と理解される
第一は歴史認識の衝突だ。日本のネット右翼が日常的に行っている慰安婦、靖国神社、南京大虐殺などの投稿は、過去には言語の壁によって日本国外で知られることは少なかったが、現在では翻訳されて海外に送り出されるようになった。海外のネットユーザーは「これが日本人の本当の考えなのか」と直接に問い詰めるようになった。
第二はいわゆるオーバーツーリズムに端を発した炎上だ。京都や富士山周辺に住む日本人が「観光公害」、例えばゴミ、騒音、ルール違反についての不満を投稿すると、外国人観光客がただちに閲読するようになった。例えば日本の店舗が外国人客についての「愚痴」を投稿すると、「外国人差別」と批判され、国境を越えたののしり合いが展開されるようになった。
日本人は知的財産権重視、欧米人は「公共財」と主張
第三の種類の炎上は、オンラインゲームにまつわるものだ。スクウェア・エニックスはスマートフォン向けゲームの「ニーア リィンカーネーション」のサービスを2024年4月に終了した。するとスペイン語圏のユーザーが、このゲームを再び遊べるようにしたプライベートサーバーを立ち上げたとXを通じて表明した。しかもこのユーザーは、ソースコードを世界最大級のソフトウェア開発プラットフォームであるギットハブ(GitHub)で公開したとも告げた。
この投稿は数日内に閲覧数が1200万回に達して1万7000の「いいね」を獲得し、400件のコメントが寄せられた。日本以外のユーザーの多くは、公式運営者が「サービス型ゲーム」を放棄したのならファンには保存する責任があり、プライベートサーバーは文化に対する貢献であって、犯罪ではないとの意見を示した。
日本のネットユーザーの立場は全く正反対で、作品のサービスが停止されたかどうかに関わらず、許可のない再構築は著作権侵害であって、原作者への冒涜だとの考えを示した。
すると欧米のネットユーザーは日本人に「傲慢(ごうまん)さ」や「ダブルスタンダード」を感じ、長年にわたって続いてきた日本のアニメやゲームのリージョンロック(日本以外では利用できないようにすること)、ローカライズの遅れ、運営を停止してユーザーがそれまで投入していた金銭を無駄にさせることに対する怨念を爆発させた。
大切なのは「異文化圏の人にどう読まれるか」を想像する力
日本人は「クリエイターを尊重し、ルールを厳守せよ」と叫ぶ一方で、外国人は「海賊版を作られたくないならわれわれに売れ。リージョンロックなど地域制限をしてばかりいるな」と反発した。
IT分野で活動する実業家兼ジャーナリストの松村太郎氏は、「翻訳は意味を伝えることができるが、『空気』を完全に伝えることはできない」と指摘した。Xにおける日本の「言語面での非ガラパゴス化」に伴う現象は現在も進行中だ。一部のユーザーは自衛のために「自動翻訳のオフの方法」を共有し始めている。一方で、より多くの人が留まることを選び、摩擦の中で互いを理解しようとしている。
松村氏は「友情は増加し、摩擦も増加する。私たちは『翻訳される日常』の時代に突入しつつある。問題はもはや言語能力ではなく、自分の言葉が別の文化の枠組みの中で、どのように読まれるかを想像できるかどうかだ」とも論じた。この言葉はおそらく、目の前の状況に対する最も正しい対処法だ。(翻訳・編集/如月隼人)











