京都府南丹市で胸が締め付けられるような痛ましい事件が起きた。市立園部小学校に通う11歳の安達結希さんが、行方が分からなくなってから22日目に遺体で発見されたのだ。
当初、結希さんは3月23日午前8時ごろ、学校の近くまで車で送られたのを最後に、行方不明になったとされていた。学校に設置されている防犯カメラにその姿は映っておらず、市内でも目撃情報や防犯カメラの記録は確認されていない。
一時は「海外に行きたがっていたらしい」という話もあり、どこかで無事に見つかるのではないかという淡い期待を抱いていた。もし一人で冒険の旅に出ていて、ある日突然帰ってきたら―。そんな物語のような展開を思い描いていたが、現実はあまりにも残酷だった。
4月16日、警察は結希さんを送ったとした養父の安達優季容疑者を逮捕した。本人は「自分がやったことに間違いない」と供述し、結希さんの遺体を市内の山中に遺棄したことを認めている。現在、犯行の動機や経緯についての詳しい捜査が続けられている。
この事件を知って、私がまず感じたのは、なぜ学校やその周辺に、より充実した防犯カメラのシステムが整っていなかったのかという疑問だった。中国では、学校周辺には必ずと言っていいほど多くの防犯カメラが設置されている。保護者がいつ子どもを送り届けたのか、子どもがいつ校内に入ったのかといった情報はすべて記録される。もし事件が起きたとしても、警察が映像を確認すれば、短時間で有力な手掛かりを得ることができる。
実際、中国もかつては治安が良いとは言えない時期があった。私自身、2005年に広東省深センへ出張した際、繁華街でバイクによるひったくりを目撃したことがある。現在ではほとんど考えられないような光景だ。
そうした背景から、中国では「天網工程」と呼ばれる大規模な防犯システムが導入された。これは、全国の公共エリアにカメラを設置し、リアルタイム防犯や人工知能(AI)による分析を通じて、犯罪の抑止や治安維持を図るものだ。06年に一部地域で試験的に導入され、11年から全国規模で推進された。17年には2000万台を超えるカメラが設置され、世界最大の防犯ネットワークの構築とされている。
現在では、学校周辺にも多くのカメラが設置されており、ほぼ死角のない形で安全管理が行われている。もし結希さんが中国にいたなら、養父が本当に学校まで送ったのかどうかは、比較的容易に確認できた可能性がある。
もちろん、このような大規模防犯体制には批判も存在する。プライバシーの侵害や監視の透明性の欠如といった問題が指摘されており、「安全」と「人権」のバランスは今なお議論が続いている。それでも、現在の中国では、官民のカメラが組み合わさることで大きな防犯ネットワークが形成され、結果として犯罪の検挙率向上や治安の改善につながっているのも事実だ。
日本で、同様の防犯体制がすぐに広く受け入れられるとは思わない。しかし、技術の進展や社会環境の変化に伴い、人々の意識が徐々に変わっていく可能性はあるのではないだろうか。多くの人にとって、日々の生活の中で最も大切なのは、やはり安心して暮らせることだからだ。
今回の事件を受け、南丹市の教育委員会は安全対策の強化を決定した。これまで死角となっていた通用口などに防犯カメラを設置するほか、市内の他の小中学校10校でも、通学路に死角が生じないようカメラの増設を進めるとしている。
失われた命は戻らないが、「亡羊補牢、猶未だ遅し」と言われるように、これ以上同じ悲劇を繰り返さないための取り組みが重要だ。結希さんのような痛ましい出来事が、二度と起きないことを心から願っている。











