訪日外国人が増え続けるなか、文化やマナーの違いによるトラブルも少なくありません。今回話を聞いた山本さん(仮名・32歳)は、かつての海外赴任経験を背景に、ある外国人観光客の危険な行動を“体を張って”止めたといいます。
その出来事は、思いがけない交流へとつながりました。
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ロンドン帰りの商社マンが感じた“違和感”

 山本さんは都内の商社に勤務する会社員。つい1年ほど前まで、イギリス・ロンドンに赴任していた経験があります。

「ロンドンは自転車文化がかなり浸透していて、交通の一部として普通に使われています」

 イギリスと日本は、左側通行や歴史的な背景など共通点も多く、親近感を覚えることも多かったといいます。ただし、交通マナーに関しては微妙な違いも感じていたそうです。

「向こうは割と自由というか、自己責任の感覚が強いんですよね」

 そんな山本さんは、帰国後、久しぶりに都内を自家用車で走っていたある日、その“違い”を強く意識する出来事が起きたといいます。

繰り返される危険運転と募る危機感

 ある日の昼下がり、青山通りを走行中、山本さんの前を一台の自転車が横切りました。信号は青。明らかな危険行為です。

「え、今のタイミングで来る? って思いましたね」

 さらにその後、表参道駅付近の交差点でも、同じ自転車が今度は後方から車の間を縫うようにして現れたといいます。

「一瞬で分かりました。同じ人だって。昼間は結構車が混んでいるから、自転車の方が速い時があるんですよね」

 その人物は、金髪で色白の西洋人男性。どこかロンドンで見た光景と重なり、なんとなく親近感が湧いて最初は強くとがめる気にはならなかったといいます。


「まあ観光で来てるのかな、くらいの気持ちでした。しかし、青山一丁目の交差点でもまたその自転車が現れたんです。しかも、相変わらずのジグザグ運転ですり抜けていくんです」

 その様子を目の当たりにした山本さんは、怒りというよりは、“危険を止めなければ”という気持ちの方が高くなり行動に移しました。

鬼の形相での“交通指導”

 信号待ちで停車していた山本さんは、空いていた左折レーン路肩に移動し、ハザードランプを点灯させて車を降りました。そして、その自転車に近づきます。

「クルマの間をジグザグ運転」外国人の危険すぎるサイクリングに驚愕。「This is JAPAN!!」注意した結果
自転車
「Excuse me, sir」

 まずは丁寧に声をかけたものの、内心はかなり切迫していたといいます。そして、振り向いた男性に対し、山本さんはほとんど無言のまま行動に出ました。自転車から降りさせ、そのまま自ら自転車を持ち上げ、歩道脇へと移動させたのです。

「多分、かなり怖い顔をしてたと思います。自分でも分かるくらいでした」

 突然の出来事に、金髪の西洋人男性は完全に呆気に取られていたそうです。そのまま山本さんの後をついて歩道へ移動し、落ち着いたところで、改めて確認した山本さん。

「Do you speak English?」

 男性がうなずくと、山本さんは「日本では、その乗り方はとても危険です。あなたのためにもやめてください」と、英語で伝えた。


 さらに、自身のロンドンでの経験にも触れながら説明を続けた山本さん。

「向こうではよく見た光景だけど、ここは日本です。ルールも違います。This is Japan!!」

 その言葉には、強い意志が込められていました。

まさかの展開と“その後の関係”

 山本さんの言葉を受け、男性は少し驚いた様子を見せたそうですが、ようやく自分がおかれた状況を把握したのか、軽くうなずいたといいます。

 そのあとすぐに「注意してくれてありがとう。僕はイギリス人で、いつもの走り方をしていました。でも、危険であることを知らせてくれたことに感謝します」と英語で話したその男性。

 予想外の素直な反応に、山本さん自身も少し拍子抜けしたといいます。

「もっと反発されるかと思ってたので、意外でした」

 その後、少しばかり会話をする中で、なんとそのイギリス人男性のアパートは、山本さんが赴任していた頃の事務所のすぐ近くであったことが判明。

「思わず会話が弾み出したので、私は近くのコインパーキングに車を停め、二人でお茶をすることになったんです。もちろん連絡先を交換し、今でも時々ご飯に行ったりしています。
変な出会いですね」

 実は、そのイギリス人男性は日本の大学で勉強していて、将来は日本で研究をしたいとのこと。年齢もジャンルも異なる二人ですが、ひょんなことから二人はとても仲良しになったそうです。

<TEXT/八木正規>

【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営
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