◆東京六大学野球春季リーグ戦最終週最終日▽慶大3―0早大(1日・神宮)
1勝1敗のタイで迎えた早慶3回戦は、慶大が早大を下し、5季ぶり41度目の優勝を決めた。全5校から勝ち点を奪う「完全優勝」で、24年秋から3季連続5位に沈んだ屈辱から、見事にV字回復を遂げた。
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男の運命なんて一寸先はどうなるか分からない。
胴上げの歓喜に沸く慶大ナインを見つめながら、上田誠コーチ(68)は優しい笑みを浮かべ、言った。
「去年の今頃、香川で球団社長をやっていた俺がね…天覧試合でベンチ入りさせていただいたり、こうやって優勝の瞬間に立ち会わせてもらえるんだから、幸せだよねえ」
ナインからは「マックさん」と呼ばれる。マックさんは慶応野球の歴史において、最重要人物の一人でもある。湘南高、慶大では投手、外野手で、桐蔭学園副部長、厚木東監督、慶応中等部野球部副部長を経て、1990年秋に慶応高(神奈川)の監督に就任した。
恩師の前田祐吉元監督から授かった「エンジョイ・ベースボール」を旗印にチーム強化に乗り出した。2005年には45年ぶりにセンバツ大会へ出場し、8強。2008年には春夏連続出場に導き、92年ぶりの「夏3勝」をマークした。
同年秋には明治神宮大会で初優勝。
そんなマックさんが2023年11月、四国IL香川の球団代表に就任した際には、誰もが驚いた。香川は縁もゆかりもない土地に思われたからだ。
「教え子が香川オリーブガイナーズを買収したから、手伝ってくれって言われて。香川で一人暮らしです。球団代表に球団社長…って言っても、何でも屋。選手を獲得したり、次の就職先を提案したり、トラックの運転手もやったりしたよ」
独立リーグはプロであるため、球団代表就任後は学生野球資格を失ったが、今年2月5日に回復。慶大の投手コーチに就任した。
香川での日々は無駄ではなかった。エース左腕の渡辺和は高松商の出身。距離は一気に縮まったからだ。
「当時ね、高松商のそばに住んでたんですよ。恩師の長尾先生とも親しくさせていただいて、よく彼の話を聞いていました。野球界は、狭いからさ」
マックさんには指導者として米国留学し、UCLAの野球チームでコーチを務めた経験もある。今でも好奇心旺盛に上達法を模索する。そんな姿勢が渡辺和や広池浩成(4年=慶応)ら今の投手陣とマッチした。
今春のリーグ戦で7勝を挙げ、投手2冠に輝いた左腕・渡辺和についてはこう語る。
「彼は探究心がすごい。いろいろ貪欲に聞いてくれたし、実行してくれた。彼が自分でつかんだ投球術でしたね。トレーニングも、誰よりもやる。僕がやるのは止めることぐらい。ペースメーカーですから(笑)。
「練習ハ不可能ヲ可能ニス」は慶応義塾塾長を務めた小泉信三氏の言葉。己への鍛錬の先にこそ、真の「エンジョイ・ベースボール」があることを、マックさんは“若き血”に伝えていく。(加藤 弘士)










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