ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

──いよいよ3歳牡馬クラシックの初戦、GI皐月賞(4月19日/中山・芝2000m)が行なわれます。大西さんは現役時代、1997年にサニーブライアンで勝っていますが、当時と比べて近年の皐月賞について、どんな印象をお持ちですか。

大西直宏(以下、大西)なにしろ、時計が速い。これに尽きますね。僕が現役だった頃だと、1994年にナリタブライアンがレース史上初の2分切り(1分59秒0)を達成し、大きな話題になりました。

 それが今では、1分57秒台の走破時計がざらに出ています。「最も速い馬が勝つ」と言われるレースですが、スピード競馬の毛色が一段と増している印象があります。

 GIの舞台というプレッシャーもあって、もはや小手先の競馬では通用しなくなっています。そういったことを踏まえると、これまでのレースでどれだけ地力の高さを示してきたのか、その点をしっかりと見極めて、各馬の評価をしていきたいですね。

――今年も皐月賞には好メンバーがズラリと集結しました。これまでのトライアルや前哨戦のなかで、大西さんの目を引くレースはありましたか。

大西 僕は基本的に、数ある前哨戦のなかでもGⅡ弥生賞(中山・芝2000m)が最も強いというか、重要なトライアルといった考えを持っています。とはいえ、ただ(同レースを)勝っていればいいというわけではありません。本番に直結する、結果が伴うレースができているか、という点が肝になります。

 たとえば、昨年の弥生賞はファウストラーゼンが勝ちましたが、まくりがうまくハマっての結果でした。本番であの乗り方が通用するかどうかは疑問がありました(皐月賞は15着)。

 一方、同じレースでミュージアムマイルは動き出しを遅らせる"トライアルの競馬"に徹して4着。続く皐月賞でその経験を生かして、見事な勝利を飾りました。ですから、弥生賞で本番を見据えた走りができていた馬には、常に目を光らせておきたいと思っています。

――そうなると、今年も中心視するのは弥生賞組になりますか。

大西 はい。そして今回は、素直に勝ったバステール(牡3歳)を本命に考えています。

 今年の弥生賞(3月8日)をあらためて振り返ってみると、GⅠ朝日杯フューチュリティS(12月21日/阪神・芝1600m)3着のアドマイヤクワッズ(牡3歳)と、GⅡ東京スポーツ杯2歳S(11月24日/東京・芝1800m)3着のライヒスアドラー(牡3歳)の人気2頭が正攻法の競馬で押しきろうとしたところを、バステールが豪快に差しきり勝ち。未勝利を勝った直後の身でありながら、実績馬たちを上回った決め手は見事なものでした。

 その弥生賞は10頭立てでしたが、本番の皐月賞はフルゲートの18頭立て。ペースが適度に締まることによって、さらに決め手比べになることは想像に難くありません。

展開次第ですが、バステールの戴冠の可能性は高いと見ています。

――皐月賞では弥生賞組が過去3年連続で連対を果たしていることを考えると、バステールへの信頼度はさらに増しますね。その他、注目している馬はいますか。

大西 決め手勝負という観点から言えば、GⅢ京成杯(1月18日/中山・芝2000m)を制したグリーンエナジー(牡3歳)。残り1ハロンでライバルたちを一瞬にして切り捨てた瞬発力は見逃せません。

 GIホープフルS(12月27日/中山・芝2000m)の勝ち方を思えば、ロブチェン(牡3歳)も軽視できません。前走のGⅢ共同通信杯(3着。2月15日/東京・芝1800m)では、勝ったリアライズシリウス(牡3歳)に騎乗した津村明秀騎手の絶妙なペース配分に惑わされましたが、舞台が替わる今回は着順が入れ替わっても不思議ではありません。

――それら有力馬に割って入るような、伏兵候補はいますでしょうか。

大西 確かに今年は骨っぽいメンバーがそろっていますが、裏を返せば、抜けた馬がいないということ。混戦模様であることは間違いありません。そういった状況で目を向けたいのは、相手なりに走れて崩れない馬です。

 そこで、ぜひとも押さえておきたいのは、ゾロアストロ(牡3歳)です。先に触れた馬たちと比べて力上位とは言いきれませんが、これまで5戦して一度も馬券圏内から外れていない安定感は大いに魅力です。

【競馬予想】皐月賞の有望株は弥生賞組にいる 混戦状態で浮上す...の画像はこちら >>

――GⅢきさらぎ賞(2月10日/京都・芝1800m)の勝ち馬ですが、同レースで初めて右回りを経験。今回も右回りで、初の中山ということになりますが、そうした点での不安はありませんか。

大西 よく右回りがどう、左回りがどうと言われますが、実際のところ、ジョッキーの視点で回りを気にすることはほとんどありません。無論、馬によっては手前を替えるのが苦手だったり、肉体的なクセによる(回りの)得手、不得手はあったりします。

 ですが、少なくとも馬のメンタル的な観点で言えば、左回りか、右回りかによって、極端に調子が変動することはありません。

 それに、ゾロアストロに関して言えば、きさらぎ賞は初の関西遠征での一戦。しかも、降雪の影響で開催日が2月8日から2月10日にズレたレースでした。にもかかわらず、難敵相手に快勝。アタマ差という着差以上の評価をしていい内容だったと思います。

 それからすれば、今回は"ホーム"となる関東でのレース。

むしろ、それがアドバンテージになるでしょうから、下馬評以上のパフォーマンスを発揮しても驚けませんよ。

 強豪との競り合いなどを経験して着実に力をつけ、大舞台へ駒を進めてきたゾロアストロ。皐月賞ではこの馬を「ヒモ穴」に指名したいと思います。

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