私たちが普段食べているりんごは、どのようにして食卓に届くのだろうか。

農業と聞くと、「天候に左右される仕事」「長年の経験がものを言う世界」といったイメージを抱く人も多いだろう。

しかし、りんごの産地として知られる中国・陝西省延安市洛川県で目にしたのは、少し違う光景だった。栽培や管理から、選別、保管に至るまで、農業の現場にデジタル技術が幅広く取り入れられていた。

広大な果樹園よりも強く印象に残ったのは、収穫後の品質管理だった。

【観察眼】りんご一つから見えてきた、中国農業の新しい姿
高性能カメラと光学技術を活用した品質検査システム

収穫されたりんごは、光学技術を使った自動選別システムに送られる。高性能カメラなどを使って、りんご1個につき約40枚の画像を撮影・分析し、大きさや色、表面の傷だけでなく、内部の状態まで含めて総合的に品質を判断する。

これまで、良いりんごを見分けるには、熟練者の目と経験が欠かせなかった。今は、そうした経験がデータ化され、品質を安定させる新しい基準になっている。農業の現場にも、製造業と同じような品質管理の考え方が取り入れられているのだ。

「大規模化すると、品質が落ちるのではないか」と考える人もいるだろう。しかし、規模を広げることと品質を安定させることは、必ずしも相反しない。大規模な生産を支える機械化や作業の標準化が、品質を安定させるための手段にもなっているからだ。

【観察眼】りんご一つから見えてきた、中国農業の新しい姿
農薬を散布する農業用ドローン

洛川では、ドローンによる農薬散布や、農業機械を使った除草・肥料の散布などが行われている。

以前は多くの人手が必要だった作業も、技術によって効率化され、1人で数百ムーの果樹園を管理することも可能になっている。また、ひょうによる被害を防ぐネットなどの設備も導入され、自然災害への備えも進んでいる。
【観察眼】りんご一つから見えてきた、中国農業の新しい姿
果樹園内を自動走行する散水ロボット

農業は、ただ天候に運を任せるのではなく、リスクを管理しながら安定生産を目指す産業へと変化している。

りんごの収穫は一年に一度だ。しかし、消費者は一年を通して良い状態のりんごを求めている。そのために欠かせないのが、貯蔵技術だ。

洛川では、収穫後すぐに果実の温度を下げる「予冷」や、貯蔵庫内の酸素や二酸化炭素の濃度などを調整する「気調貯蔵」によって、りんごの品質低下を抑えている。前年10月に収穫された「ふじ」が翌年の夏にも良い状態で販売されているのは、こうした技術に支えられているからだ。

【観察眼】りんご一つから見えてきた、中国農業の新しい姿

変わったのは、保存方法だけではない。生産から販売まで、農業全体の仕組みが大きく進化することで、「1シーズンの収穫を、一年を通して届ける」ことが実現しているのである。

今回の取材を通じて、一つの問いが浮かんだ。農業の現代化は、結局、何を変えるのだろうか。

【観察眼】りんご一つから見えてきた、中国農業の新しい姿
りんごの販売・在庫情報を一元管理するデジタルシステム

目指しているのは、単に企業や生産現場の効率を高めることだけではない。技術の導入によって、生産や流通の過程で生じるロスを減らし、品質を安定させる。農家への技術支援や販売ルートの確保につなげる。そして消費者には、品質の安定した商品を、より手頃な価格で届ける。

【観察眼】りんご一つから見えてきた、中国農業の新しい姿

コストを抑えることは、品質を落とすことと同じではない。作業の無駄や生産ロス、品質のばらつきを減らすことができれば、品質を保ちながら、より多くの人に商品を届けられる。その可能性を広げることも、農業の現代化が持つ意味の一つだろう。

こうした変化は、農業だけで起きているわけではない。

以前、江蘇省丹陽市の酒造会社を取材した際にも、同じような光景を目にした。守るべき伝統や品質を大切にしながら、効率化できる工程には新しい技術を取り入れていた。

りんご一つ、酒一本。

二つの現場から見えてきたのは、伝統と技術を組み合わせながら進化する、中国のものづくりの姿だった。

より多く作るだけではない。より良いものを、より多くの人に届ける。そのための挑戦が、今も中国各地で続いている。(提供/CGTN Japanese)

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