「私たちも人工知能(AI)とともに成長している」と話すのは、広東省深セン市の電気街・華強北で商売を営む林さんで、自社のAI翻訳機を活用し、フランス人客に翻訳機2台を販売した。林さんは「今年は外国人客の来店が大幅に増加しており、その多くが南米やアフリカ諸国からの客で、店内のAI翻訳機の出荷台数は昨年比で3倍に伸びた」と話した。
8月の深センは猛暑に見舞われているが、華強北の人通りは衰えていない。多くの外国人が電子商業施設や各店舗を行き交っている。フロア案内から店舗の陳列商品まで、ほぼすべてが中国語と英語による2言語表記に更新されている。
華強北街道の調査統計によると、今年に入ってから華強北を訪れて電子製品を仕入れた外国人業者の数は1日平均で8000人近くに達している。深セン華強電子世界管理の王承珠(ワン・チョンジュウ)副総経理は、「華強電子世界の3店舗では、1日の来客数が延べ15万人を超える日もある。市場運営の現場観察を踏まえると、実際の外国人来訪者数は公式統計を大きく上回る可能性がある」とした。
王氏は「広州交易会の期間中には多くの海外バイヤーが華強北を訪れるため、3日間の日程をわざわざ確保していた。華強北の中心商圏は1.45平方キロメートルの範囲に35の電子関連専門市場が集まり、100万種類以上の電子部品を取り扱っており、電子産業のサプライチェーン全体を網羅する豊富な選択肢を提供している。平日は香港特区からの観光客が多く、祝祭日には香港からの客が全体の3割以上を占めることもある。さらに、ビザ免除政策の継続的な改善や海外ブロガーによる現地訪問の発信により、より多くの外国人客を引き寄せている」と説明する。
王氏は「彼らの購入形態は多様だ。
華強北では多くの店舗入口に「購入後すぐに還付可能」と記された税還付表示が掲げられているほか、店内には繁体字で「税額9%即時割引」と書かれた案内も設置されている。また、外国人客向けに周辺の税還付場所を記載した2言語表記の名刺を用意する店舗もあり、出国前に税関検査に備えて商品包装を開封しないよう注意を促している。
外国人顧客の増加に伴い、華強北の多くの店舗ではほぼ1人に1台のAI翻訳機を備えるようになった。店員が翻訳機に向かって商品の詳細を説明すると、リアルタイム翻訳された内容をすぐに客の耳元へ届けることができる。外国人観光客も「郷に入っては郷に従え」とばかり、店主のAI翻訳機に向かって値引き交渉を持ち掛けたり、直接「cheaper,cheaper(もっと安く)」と英語を使って値引きを求めたりしている。
あるフランス人の客に同行していた少年は、購入したばかりの電動スーツケースに乗り、前進・後退・方向転換の機能を楽しそうに披露し、「フランスではこんなスーツケースを売っている店を見たことがない、値段交渉で数百元安く購入できた」と話した。このフランス人の客は林さんの店舗でしばらく商品を吟味し続け、最終的にAI翻訳機2台を購入した。
AI翻訳機は華強北、さらには深セン全体に広がる豊かなAIハードウェア生態系の一つの縮図にすぎない。深セン税関のデータによると、上半期(1~6月)の深センのハイテク製品輸出入額は1兆7000億元(約40兆円)に達し、全国首位となった。
深セン優嶼科技の営業担当の彭植涛(ポン・ジータオ)氏は、「昨年、当社のAIスマートグラスの月間出荷台数は1000~2000台だったが、今年は月4000~5000台に達している。その95%は輸出向けだ。実店舗は製品の市場投入テストや顧客獲得における重要な販売ルートになっている。現在、インドが最大の輸出市場で、ロシアやスペイン市場も今年から成長を始めている」とした。
彭氏は、「海外ユーザーはスマートグラスの即時撮影・録画機能に強い関心を示しており、AIアシスタント機能も重視している。当社製品は数千元する大手ブランド品と比べ、200~500元(約4700~1万1800円)という価格帯に設定されている。画素数は1300万画素に達し、大手ブランド製品に近い性能を備えている。また、近視用レンズへの交換や調光レンズなど個別の設定にも対応し、新型モデルでは重量を約半分に軽量化して装着感を大幅に改善した。今年末にはディスプレー表示機能を備えたAIスマートグラスの発売も予定している」と説明した。
世界的に見ると、2026年はAIスマートグラス市場が急成長する節目の年となっている。世界的な技術市場調査会社Omdiaのデータによると、25年の世界AIスマートグラス出荷台数は870万台に達し、中国本土市場では100万台近くが出荷された。中国市場の成長速度は最も速く、26年には世界出荷台数が1500万台を超える見込みだ。
今年の春節連休期間(2月15日~23日)には、AIスマートグラスなど「華強北AI八駿」と呼ばれる人気AI製品が注目を集め、現在は第3世代へと進化している。製品ラインアップはAIデュアルスクリーン翻訳機、AI外骨格装着デバイス、ロブスターボックス、AI3Dプリンター、AIブレイン・マシン・インタフェース(BMI)などの最新技術製品にまで広がっている。
鵬脳科技の責任者の楊金林(ヤン・ジンリン)氏は、「当社は非侵襲型のBMIを採用している。電極シートによって人間の脳波を収集し、その特徴に基づいて専門的なトレーニングを行う。多くの人はBMIについて、脳内に機器を埋め込む『侵襲型』の技術をイメージしているが、当社が開発した『非侵襲型』BMI技術は業界でも先進水準にある。中でも脳機能を利用した睡眠支援装置は外国人客から高い人気を集めている。この製品は脳前頭葉の『眠気指数』を測定し、7日間で利用者ごとの睡眠補助モデルを構築。特定周波数の音を組み合わせることで、寝つきの悪さに悩む人の入眠時間を20~50%短縮できる」と説明した。
また楊氏は、「現在、脳機能睡眠装置の月間販売台数は約5000台だが、将来的には月3万台に達すると予想している。
華強北の業者は巨大な毛細血管のような役割を果たし、最先端AI製品を世界市場へ迅速に送り出す試験場となっている。同時に、市場から得られる現場のフィードバックを積極的に吸収し、製品技術の改良と進化につなげている。楊氏は「当社の研究開発チームは深セン市宝安区に位置し、コアアルゴリズムの開発と技術的課題の克服に注力している。一方、サプライチェーンは華強北が持つ強力な産業支援能力に大きく依存している。設計から試作品の製作までの期間は最短20日まで短縮でき、製品の改良・更新効率を大幅に高めることができる。もし華強北の市場・産業ネットワークに依存しなければ、同じプロセスには半年程度を要する可能性がある」とした。(提供/人民網日本語版・編集/KN)











