◆第2作も奇妙な集団登場
著者の谷川直子さんが文芸賞を受賞したのは2年前になる。『おしかくさま』という小説。
小説第2作も、やはりユーモア小説だ。主人公のエリカは、30歳のキャバ嬢。イケメンの彼、シュウくんに貢物をしているうちに、借金がかさんでしまい、幼馴染(なじみ)のさえちゃんの家に転がり込む。さえちゃんは、エリカが都会で効率よく稼いでいる間、まったく生活を変えることなく、薬局の店番をして、親から月3万円をもらって暮らしている。
すごくイケてない人たちの話のようだが、読者は歯切れのよい文章に引き込まれる。
それと、もう一つ。この小説にも「BHK(貧乏神被害者の会)」なる奇天烈(きてれつ)な集団が登場する。集団を構成しているのは、かつて完璧な顔を持つ男たちと付き合ったことのある愛すべき女たち。むろん、エリカもシュウという貧乏神と別れるべく、「断貧サロン」に通うことになる……。
谷川さんには、奇妙な集団への独特の嗅覚がある。天賦の才というべきか。
【書き手】
陣野 俊史
1961年長崎生まれ。文芸評論家、フランス文学者。ロック、ラップなどの音楽・文化論、現代日本文学をめぐる批評活動を行う。最新作に『戦争へ、文学へ 「その後」の戦争小説論』(集英社)。その他の著書に『フランス暴動 - 移民法とラップ・フランセ』『じゃがたら』(共に河出書房新社)、『フットボール・エクスプロージョン』(白水社)、『フットボール都市論』(青土社)など。
【初出メディア】
日本経済新聞 2014年11月5日
【書誌情報】
断貧サロン著者:谷川 直子
出版社:河出書房新社
装丁:単行本(163ページ)
発売日:2014-10-14
ISBN-10:4309023304
ISBN-13:978-4309023304