マラソンの場面はまさかの実況中継スタイル
時は1911(明治44)年11月19日。翌年に迫ったストックホルムオリンピックに日本代表として出場する選手を決めるべく、東京郊外・羽田運動場にて予選大会が開催された。このときのマラソンの模様はすでに第1話で、日本のオリンピック参加を決めた嘉納治五郎(役所広司)の視点から描かれているが、今回は、金栗四三(中村勘九郎)らランナーの側からあらためて描かれた。そこでとられたのはまさかの実況中継スタイル。ドラマの語り手を務める若き日の古今亭志ん生=美濃部孝蔵(森山未來)は、レースが始まると実況アナウンサーに早変わり(これがまた流暢で驚いた)、画面には現実のマラソン中継と同様、中継地点や暫定順位などが随時テロップで入るという凝りようだった。
歴史ドラマにおいてこうした手法が用いられることは、わりと古くからある。NHKラジオでは1957年以降、「架空実況放送」と銘打って、関ヶ原の戦いなどの歴史上の大事件がたびたび実況スタイルでドラマ化されている。より最近の例としては、フェイクドキュメンタリー仕立ての歴史番組「タイムスクープハンター」(NHK総合)が思い出される。市井の人々をハンディカメラで追いかけるなど、同番組の臨場感あふれる演出は今回の「いだてん」にも通じる。