ゲスト患者として岩下志麻が登場。
岩下志麻が愛したのは「極道の男」!?
看護師たちに向けた講演会の講師として、令和版春日局と呼ばれる日本看護師連合会名誉会長・三原雅恵(岩下志麻)が東帝大学病院にやって来た。
「医療従事者は清く正しく」をモットーとする一本筋の通った人ではあるのだが、とにかくガンコで面倒くさい人という印象の方が強い。
この雅恵、実は第3シリーズにも、重度の子宮頸がんを患った孫娘の付き添いとして登場している。
命を救うため、子宮を含む骨盤内臓の全摘出を提案する大門に対して、雅恵は人工肛門、人工膀胱生活を余儀なくされるからと大反対。「臓器を温存して完治させなさい!」なんてメチャクチャなことを言っていた。
結局、大門のミラクル技術で、臓器を摘出しつつも、他臓器の筋肉を流用することによって人工肛門、人工膀胱生活を回避することができたのだが。
この件に関しては、まだ若い孫娘を思う祖母心のあまり……と考えられなくもないが、今回は自分が患者。それでもやっぱり面倒くささを爆発させていた。
自宅でぶっ倒れて東帝大学病院に搬送されてきた雅恵は、なぜか採血以外の検査を拒絶。もちろん手術も頑なに拒否する。
その理由は、「手術してくださるドクターに看護師がお尻を向けるなんてとんでもないことです」とのこと。相変わらず言ってることがメチャクチャだ。
実は雅恵の背中には立派なイレズミが入っており、それを知られたくない&傷付けたくないという事情があった。
イレズミに気付いた大門は、
「約束します。私に切らせてください。あなたの大切なものは守ります。1ミリも傷つけない。女と女の約束です。私、失敗しないので」
と約束。普段、ワガママを言う患者には容赦ない大門だが、以前の関係性もあるのか、雅恵に関しては妙に優しい。
今回の手術は、背中からメスを入れのが普通なのだが、大門は雅恵との約束を守るため側方からアプローチ。イレズミを傷付けることなく手術を成功させた。
雅恵はかつて患者を好きになってしまって妊娠した。しかし子どもが生まれる前に男は死んでしまったのだという。
「ずっと誰にも言えなかった。息子にも誰にも。愛した人が極道の男なんて……」
男との思い出を身体に刻むつもりでイレズミを入れたのだ。
いつも「清く正しく」と言っている日本看護師連合会名誉会長の背中にイレズミがビッシリという衝撃展開だが、要は岩下志麻の代表作「極道の妻たち」オマージュをやりたかったのだろう。
前回登場時にはまったくそんなそぶりはなかったし、長年、家族にも仕事仲間にも気付かれていないなんて、設定上、色々と無理があるのだが、岩下志麻のあまりにも堂に入った「極妻」っぷりに、すべての矛盾を飲み込んで納得してしまった。
第5話なのに患者の名前は「三原」だが……
「ドクターX」ファンにはお馴染みなことだが、本作に登場する患者は名前に、その話数に合わせた数字が含まれている。
今シリーズでいうと、1話は岩田一子、2話は二色寿郎と古沢研二、第3話は梅沢三郎、第四は四日市清昭と潮四糸子。
しかし今回の患者は三原雅恵。第5話なのに!
第3シリーズの3話にも登場していたため、名前に「三」がつけられているのは仕方ないところだが……。
と思っていたら、最後の最後、大門に手術のお礼として見せた雅恵のイレズミには「五郎」の文字が。おそらく雅恵がほれた「極道の男」の名前なのだろう。ここでつじつまをあわせてきた!
ちなみに息子の名前は「吾郎」だった。死んだ男の名前を子どもにつけるなんて、令和版春日局も意外とロマンチストだ。
ライダー、クレしん、HIKAKIN……要素盛り込みすぎだよ
今回、岩下志麻の他にもゲストが多数登場していた。
雅恵に注意されるタトゥーを入れたヤンキーカップルとして「仮面ライダージオウ」からゲイツ(押田岳)とツクヨミ(大幡しえり)が。雅恵のひ孫の「しんのすけ」、飼い犬の「シロ」。さらに冒頭の手術シーンの患者はHIKAKINだった。
「仮面ライダージオウ」「クレヨンしんちゃん」にHIKAKINときたら、低年齢層を狙ってのゲストだということは明らかだが、それでいてメインのストーリーが「極道の妻たち」というのはさすがに迷走している。
三原じゅんこの「恥を知りなさい!」ネタもぶっ込んでいたし、ちょっと全方位に手を広げすぎじゃないだろうか。余計な要素を盛り込みすぎで、見ていても戸惑ってしまう。
エグイ描写が入ってくる医療ドラマを、子どもが喜んで見るとも思えないので、素直に、テレ朝ドラマのメイン視聴者層と思われる中高齢者に向けて作ればいいと思うのだが……。
(イラストと文/北村ヂン)
【配信サイト】
・Abema TV
・テレ朝動画
『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』(テレビ朝日)
脚本:中園ミホ、林誠人、香坂隆史
音楽:沢田完
主題歌:P!NK「ソー・ホワット」
企画協力:古賀誠一(オスカープロモーション)
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:大江達樹(テレビ朝日)、都築歩(テレビ朝日)、霜田一寿(ザ・ワークス)、大垣一穂(ザ・ワークス)、伊賀宣子(ザ・ワークス)
演出:田村直己(テレビ朝日)、松田秀知、ほか
制作協力:ザ・ワークス
制作著作:テレビ朝日