『おかえりモネ』第1週「天気予報って未来がわかる?」
第4回〈5月20日(木)放送 作:安達奈緒子、演出:一木正恵〉
「天気予報って未来がわかるんですね」
気象予報士・朝岡覚(西島秀俊)を連れて、森でラフターヨガを行うことになったモネ(清原果耶)。部長の佐々木翔洋(浜野謙太)が喉の調子が悪いからサポートを頼まれたのだ。【前話レビュー】『おかえりモネ』西城秀樹、井上陽水、山下達郎、BUMP OF CHICKEN 続・朝ドラ主題歌問題
森の中でわーはっはっはっ!と腹から声を出して笑うとセラピーになる。
大きな声で不満を言ってみるとスッキリすると言われ「天気予報の放送枠、日本全国の放送で2分30秒は短すぎる」と朝岡は叫ぶ。その声は妙に響いて聞こえる。
と、モネは遠くでカフェのおばちゃんたちが笑っている声を聞く。モネの聴覚の鋭さ――清原果耶も出演していた『ちはやふる』か!(『ちはやふる』で鋭い聴覚の持ち主であるヒロインちはやは広瀬すずが演じていた)と思ったら、そうではなかった。雨が降る前は、気圧の関係で、遠くの音が聞こえやすくなるというミニ知識であった。なるほど、それで朝岡の叫びにエコーがかかっていたのだろう。
朝岡は10分後に雨が降ると予測。人間には天気を予測する力が備わっているとモネに教える。そのひとつが気象病。花粉症もそのひとつ。身体が気象の変化を感知している印(しるし)である。
「天気予報って未来がわかるんですね」とモネは感動する。でもそれは決して超常現象ではなく、人間に元来備わった力であり、それにもっと敏感になって、理論にすれば、未来を切り開くことができる――そんな希望を感じさせた。
自然――天気の理論を知る朝岡は、雨が降ることも止むことも、かなり正確に予測する。それによって、登米能の上演を中止にしないで済んだ。運動会や遠足の日の天気があやしいとき、当日の朝の判断でやるかやらないか決めるが、中止になってから晴れることがある。この判断、自分がやるとしたら胃が痛くなる絶対。
ところで、能とは演劇のように屋根のある劇場でやるのではないの?と思いきや、登米能の能舞台は野外劇場スタイル。舞台には屋根があるが、客席は外で、自然を体感しながら能を鑑賞できるようになっているのである。こちら、宮城県に実際ある伝統芸能伝承館森舞台を撮影に使用している。
西島秀俊、仮面ライダーになる
朝岡は、ラフターヨガのあと、石ノ森章太郎展を見に行く。グッズを買って、帽子、Tシャツ、法被を着て、なびいた感じに見える仮面ライダーの赤いマフラーまで買って首に装着。サイボーグ009の顔ハメ看板で写真撮影までしてすっかり堪能。赤いTシャツを着た朝岡の身体はなかなか鍛えられている。その格好でパソコンを操作し、天気を予想している姿は気象予報士というよりは戦闘員が敵の情報を調べているように見えた。とがったマフラーの先端を避ける参事・川久保博史(でんでん)のリアクションも良かった。
モネを取り囲む人たちが芸達者
夕方、雨が止んで虹が出て、気分爽快。登米能には、花粉症を薬で抑えて体調も万全になった佐々木のみならず、サヤカ(夏木マリ)も横笛で参加していた。能に参加するサヤカの凛としたカッコよさは素人芸には到底見えない。芸能に身を捧げた人である。「印象派」というパフォーマンスを長らくやり続けている夏木マリだから、サヤカにもアーティスト感が漂う。由緒正しき伊達家の子孫で、資産家であり芸術にも長けている浮世離れした人物なのだろう。
謡を担当する翔洋を演じているのはミュージシャンでもある浜野謙太だから、ジャンルは違うとはいってもなんだかしっくり来る。リズムがいいのだと思う。
朝岡は顔ハメのときの表情が最高だった。真面目なんだけどちょっととぼけたときのギャップが西島秀俊が愛される理由のひとつである。
確たる芸をもった俳優たちが若き主役の清原果耶を支え、清原も彼らの背中を見て学びながら全力で中心に立っている。この構造は子どものいる家族と重なる。ドラマ自体がホームドラマの二重構造にきちんとなっているのは朝ドラの成功パターンである。
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番組情報
連続テレビ小説『おかえりモネ』
2021年5月17日(月)~<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送
出演:清原果耶
内野聖陽 鈴木京香 蒔田彩珠 藤 竜也 竹下景子 永瀬 廉 恒松祐里 前田航基 高田彪我 浅野忠信 夏木マリ 浜野謙太 でんでん 坂口健太郎 平山祐介 塚本晋也 西島秀俊 今田美桜 清水尋也 森田望智 井上 順 高岡早紀 玉置玲央 阿部純子 マイコ 菅原小春
※登場人物のプロフィールやあらすじなど、詳細はこちら
作:安達奈緒子
演出:一木正恵 梶原登城 桑野智宏
音楽:高木正勝
主演:清原果耶
語り:竹下景子
主題歌:BUMP OF CHICKEN「なないろ」
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami