『おかえりモネ』第1週「天気予報って未来がわかる?」

第1回〈5月17日(月)放送 作:安達奈緒子、演出:一来正恵〉

『おかえりモネ』第1回 朝ドラ育ちの清原果耶を歴代ヒロインの相手役が守る仮面ライダー大集合的な最強さ
イラスト/AYAMI
※本文にネタバレを含みます

「昔も今も、人は天候に命運を左右されながら、それでもなんとかかんとか生きてきました」

「いい季節だあ」とモネこと永浦百音(清原果耶)が洗濯ものを干しながら空を見上げ、ひとりごちた時、風に乗って部屋のテレビの音がかすかに流れてきて、テレビを観ると雨予報(気象予報士役は西島秀俊)。「今干したばっかなのにい」とちょっと眉を八の字にしたモネの顔から、オープニングへ。BUMP OF CHICKENの主題歌「なないろ」が流れる。


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このオープニングを観ながら珈琲が飲みたい。ちょっとフルーティーな、ベリー系がいいかな。お味噌汁にご飯に納豆の和風な朝食も良いけれど、今朝はパンに目玉焼きの洋風朝食がいいな、なんてことを思う。お腹が空くのは元気な証し。『おかえりモネ』第1回には生きようと思うエネルギーがあった。

なんせ、主人公の誕生からはじまる。しかも、嵐の海を渡って生まれてくる力強さ。モネの誕生は、1995年9月、宮城県に台風が来たときで、モネの実家のある亀島には出産施設のある病院がない。海を渡って本土の気仙沼の産院に行くために、島の漁師・新次(浅野忠信)が船を出す。大しけになると天気予報で言われているが、新次は腕がいいのだろう。無事に気仙沼に着く。

本土には父・耕治(内野聖陽)が待っている。
彼は産気づいた妻・亜哉子(鈴木京香)とお腹の子が心配で心配で半狂乱気味。わずか数分のなかにめいっぱい物語が詰まっている。モネの父・耕治は熱く、新次はクール、亜哉子、モネの祖母・雅代(竹下景子)はべっぴんさん(この時点では性格はまだわからず)、そして、島と本土が船でしか行き来できないから嵐があったりすると大変であること……。

竹下景子のナレーション「昔も今も、人は天候に命運を左右されながら、それでもなんとかかんとか生きてきました」がすべてを物語っているようである。

天気の渦、星の渦、洗濯機の渦、世界は渦を巻いている

天気図、星雲……と空関連のカットが映ったあと、成長したモネが洗濯機の渦を見ている。お風呂の水を流すと、渦巻いて排水溝に落ちていく。渦は世界の仕組みであって、人間はこの渦の仕組みの中で生きている。渦は世界の縮図であって「昔も今も人は天候に命運を左右されながら、それでもなんとかかんとか生きてきました」の言葉を図にしたようなものであろう。

渦巻く台風日に生まれたモネはあっという間に育って高校を卒業し、2014年の春、海の町・亀島を出て、山の町・登米の米麻町森林組合で働き始めた。伊達家家臣の子孫らしい新田サヤカ(夏木マリ)の家に居候させてもらっている。

森林組合には、参事・川久保博史役のでんでんや、課長・佐々木翔洋役の浜野謙太など、個性派俳優たちがいる。町の名物として登米能を推す佐々木、石ノ森章太郎を推す川久保にどっちがいいか聞かれて、「どっちも知らないんです」と遠慮がちに言うところから、モネはやさしい子であることが伝わってきた。

『おかえりモネ』第1回 朝ドラ育ちの清原果耶を歴代ヒロインの相手役が守る仮面ライダー大集合的な最強さ
写真提供/NHK


『おかえりモネ』第1回 朝ドラ育ちの清原果耶を歴代ヒロインの相手役が守る仮面ライダー大集合的な最強さ
写真提供/NHK

森林組合には、診療所やカフェも併設されていて(入り口がバリアフリーじゃないところが気になったけれど)、診療所には、イケメンの医師・菅波光太朗(坂口健太郎)がいる。
モネの実家・海の町の人物(妹や祖父も登場)から山の町の人物まで一気に登場して情報量が多いにもかかわらず、雰囲気は上品で穏やかに感じるのは、空や海、森林、自然の風景の雄大さがすべてを丸く抱えて見えるからだろうか。

モネはサヤカに連れられて、山に入り、そこで、朝も見た「彩雲」という虹色に光る雲を見つける。サヤカはモネにそれを見るといいことがあると教える。

これをきっかけに彩雲探す人が増えそうである。あいにく、日本は梅雨時期であるが、晴れ間には上を向いてみたい。

朝ドラ育ちの清原果耶を歴代ヒロインの相手役が守る

内野聖陽、西島秀俊、坂口健太郎……と、かつて朝ドラのヒロインの相手役をつとめたイケメンが第1話から大集合。内野は現在BS12で再放送中の『ふたりっ子』、西島は昨年、NHK総合で夕方再放送されていた『純情きらり』、坂口は『とと姉ちゃん』。石ノ森章太郎の仮面ライダー大集合的な最強さである。ついでに記せば、登米市の観光映像に大河ドラマ『独眼竜政宗』の渡辺謙も出ていて、彼もまた『はね駒』のヒロインの相手役であった。

モネを演じる清原果耶は、朝ドラ育ちといって過言ではない。2015年、『あさが来た』の女中ふゆ役で俳優デビューし、その演技力が注目され、『なつぞら』ではヒロインの妹役で、戦争で苦労してきた役をしっかり演じきった。朝ドラファンにはいつかヒロイン、と期待され、今回の登板である。朝ドラの申し子のような清原を、歴代朝ドラ相手役が勢揃いして見守る。
この図式は麗しい。モネの人生はきっと心配ない。

イケメンぞろいと思いつつも、耕治が「あーあ」とぼやきながらベンチにどかっと座ると、隣のおばちゃんが避ける描写がある。内野聖陽は素敵なイケメンパパとして存在するのではなく、動作と声の大きい中年演技をしていることがわかる。それはそれで微笑ましい。



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※『おかえりモネ』第2回のレビューを更新しましたら、Twitterでお知らせします

番組情報

連続テレビ小説『おかえりモネ

2021年5月17日(月)~

<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送

出演:清原果耶
内野聖陽 鈴木京香 蒔田彩珠 藤 竜也 竹下景子 永瀬 廉 恒松祐里 前田航基 高田彪我 浅野忠信 夏木マリ 浜野謙太 でんでん 坂口健太郎 平山祐介 塚本晋也 西島秀俊 今田美桜 清水尋也 森田望智 井上 順 高岡早紀 玉置玲央 阿部純子 マイコ 菅原小春
※登場人物のプロフィールやあらすじなど、詳細はこちら

:安達奈緒子
演出:一木正恵 梶原登城 桑野智宏
音楽:高木正勝
主演:清原果耶
語り:竹下景子
主題歌:BUMP OF CHICKEN「なないろ」


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami
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