『プロミス・シンデレラ』大人になりたいと成長した壱成と成吾の対決感がドラマを活気づかせた第6話
イラスト/ゆいざえもん

※本文にはネタバレがあります

※第7話のレビューを更新しましたら、エキレビ!のツイッターにてお知らせします


多様性を大事にする2020年代のドラマ?『プロミス・シンデレラ』第6話

壱成(眞栄田郷敦)成吾(岩田剛典)がいよいよ本格的に早梅(二階堂ふみ)をめぐって火花を散らし始めた『プロミス・シンデレラ』(TBS系 火曜よる10時〜)第6話。

【前話レビュー】『プロミス・シンデレラ』がぜん成吾(岩田剛典)の魅力が出てきた第5話。いよいよ面白くなってきた

早梅への思いを自覚し大人になりたいと考え始めた壱成の変化も目覚ましく、クール過ぎて何を考えているかつかみどころがなかった成吾の温度も上がってきて魅力が増して来た。
早梅に会いに旅館かたおかに来た元夫・正弘(井之脇海)を追い払ったときの対応では成吾のクールさが生き、正弘はたじたじとなる。

『プロミス・シンデレラ』大人になりたいと成長した壱成と成吾の対決感がドラマを活気づかせた第6話
(C)TBS

成吾と早梅の仲を嫉妬した壱成は借金をチャラにするから片岡家を出ていくように言い放つ(第5回)。早梅が出ていったあと、壱成はもやもやが止まらない。祖母・悦子(三田佳子)執事・吉虎(高橋克実)にまで八つ当たりして、悦子に「出ていけ」と言われてしまう。

『プロミス・シンデレラ』大人になりたいと成長した壱成と成吾の対決感がドラマを活気づかせた第6話
(C)TBS

無一文で家を出てきてしまったため、いつもの仲間に連絡をとると、彼のお金目当てで友達付き合いされていたことが明白になり、苛立つ壱成。孤独が募っていく。早梅に電話するとたまたま正弘が旅館に来ていて、家を出たらすぐ元夫と会っているのかと壱成は誤解し、ますます苛立っていく。

一方、早梅は正弘と話すことで「なんで私っていつもこうなんだろう。自分の気持ちをちゃんと言わないと伝わらないのに」と自分の悪いクセに気づく。要するに早梅は悲しい生い立ちを癒やすため常に誰かに心の助けになってもらっているにもかかわらず、誰に対しても心を開かないところがあって関係がうまくいかなくなってしまう。それに気づいた早梅は壱成にきちんと向き合おうと決意する。



明らかになった壱成の大きな喪失感を見るに、早梅に対する思いは母親への思慕としか思えない。
どんなときも一緒にいて、自分を見て評価してくれる人がいない寂しさを早梅で埋めたい気持ち。冷静に考えると、早梅と成吾が結ばれることで家族になって一件落着すればいいと思うのだが、冷静に考えられないところが物語の面白さであり、壱成は自分の心がわからなくて迷う。

『プロミス・シンデレラ』大人になりたいと成長した壱成と成吾の対決感がドラマを活気づかせた第6話

誰もが自分の心がわからない。他人から見たらわかることも自分では気づけない。早梅に対する壱成の思いは「ガチ恋」と同級生から見たらすぐにわかるものながら、本人は気づいていない。同級生たちも金目当てに壱成と付き合っていると言いつつ本当は友情を感じていることに気づいてハッとなる。

感情をぶつけあうということは相手に気持ちがあるということだと早梅は説く。それは自分にも思い当たるから。正弘にはもはや感情がないからあっさり別れを切り出せるが、壱成とはこれからも付き合っていきたいと申し出る。思わず早梅を抱きしめる壱成。それを受け止めて肩をポンポンと叩く早梅はやっぱりお母さんのようだ。

『プロミス・シンデレラ』大人になりたいと成長した壱成と成吾の対決感がドラマを活気づかせた第6話
(C)TBS

大人になる方法

こうして早梅はまた片岡家に戻る。そして壱成は旅館かたおかに出入りするようになって黒瀬(金子ノブアキ)の茶房で働くことになる。
黒瀬に大人になる方法を教えてほしいと言う壱成は、そのあと、混みだした茶房の手伝いを自主的にはじめ、すでに大人になりはじめているのである。なぜかコーヒーもちゃんと入れることができて、客に対する態度もちゃんとしている。

『プロミス・シンデレラ』大人になりたいと成長した壱成と成吾の対決感がドラマを活気づかせた第6話
(C)TBS

『プロミス・シンデレラ』大人になりたいと成長した壱成と成吾の対決感がドラマを活気づかせた第6話
(C)TBS

郷敦は着物の着方もきりっとしているし、所作が落ち着いていて美しい。意地悪キャラよりも照れながら真面目な面が前面に出てきたほうがよく感じるのは眞栄田郷敦がどんな演技も常に真剣に演じていて意地悪が迫真に見え過ぎてしまうからだろう。

『プロミス・シンデレラ』大人になりたいと成長した壱成と成吾の対決感がドラマを活気づかせた第6話
(C)TBS

壱成がしっかりしてくると、俄然、成吾もめらめらと対抗意識が沸いてくる。恋愛に限らず、仕事にしてもスポーツにしてもライバルがいると燃えるもの。シンプルに壱成と成吾の対決感がドラマを活気づかせる。

それにしても菊乃(松井玲奈)は何のために裏で画策しているのだろう。それがこのドラマのもうひとつの興味であり、仕掛けとしてはありなのだが気になることがある。正弘が素朴な一般庶民なのに菊乃のせいで悪者みたいになってしまっていてなんだか哀れなのだ。



『プロミス・シンデレラ』大人になりたいと成長した壱成と成吾の対決感がドラマを活気づかせた第6話
(C)TBS

コメディなのでスルーできるようになっているが、ふと考え出すと、正弘にとんでもない悪の心が備わっていない限り、菊乃は、平凡ながらつつましく生きてきた人を不幸に陥れているようなことになる。人間は善と悪でできていて、ちょっとしたことで悪に転がる。
出来心で不倫した正弘が引き受けているわけだが、なんの罪もない人を菊乃が何かの目的で利用していることがどうも釈然としない。スタンガンまで出てきて、ラブコメなのに陰謀渦巻くヒューマンサスペンスの要素が入って食い合わせが悪く感じる。インスタ映えするおしゃれカフェにうなぎの肝焼きが出てきたみたいな感じなのである。

釈然としないといえば、黒瀬の家が6畳ワンルーム布団一組しかないという発言。旅館かたおかがあんなにも優雅で広大な一方で、そこで働いている人――しかも新人ではなく、茶房のマスターくらいの立ち場の者が6畳一間で生活している発言には夢がない。どういう給料体系なのか疑問も感じる。ここはワンルームと言っておけばぼかすことができるし、もしくはおもしろいセリフにすることも可能であろう。

『プロミス・シンデレラ』大人になりたいと成長した壱成と成吾の対決感がドラマを活気づかせた第6話
『プロミス・シンデレラ』第7話は8月24日(火)よる10時〜

また、ただただいじめられている高校の同級生の存在も気になる。優れたコメディは脇役が生き生きしているものなのだが、「浮気する夫」「いじめられっ子」「なんとなく役に立つ職場の人」「主人公をいじめる職場の人」など……いまのところその場その場で都合のいい役割しか感じられず、多様性を大事にする2020年代のドラマとしてアップデートされていない。壱成と成吾が生き生きしてきたように、最終的には脇役たちの存在意義も納得させてほしい。
(木俣冬)

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番組情報

TBS
火曜ドラマ『プロミス・シンデレラ』
毎週火曜よる10時〜

出演:二階堂ふみ
眞栄田郷敦 松井玲奈 井之脇 海 松村沙友理 堺 小春 
高橋克実
友近 森カンナ 金子ノブアキ
三田佳子(特別出演)
岩田剛典

原作:橘オレコ「プロミス・シンデレラ」(小学館「マンガワン」連載中)
脚本:古家和尚
音楽:やまだ豊
主題歌:LiSA「HADASHi NO STEP」(SACRA MUSIC / Sony Music Labels Inc.)
演出:村上正典(共同テレビ) 都築淳一(共同テレビ) 北坊信一(共同テレビ)
プロデューサー:橋本芙美(共同テレビ) 久松大地(共同テレビ)

制作著作:共同テレビ TBS

番組サイト:https://www.tbs.co.jp/promise_cinderella_tbs/


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami
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