◆JERAセ・リーグ ヤクルト2―8巨人(17日・神宮)

 今季3登板目。最後の一球は決まっていた。

7回2死一塁、カウント2―2。捕手のサインに小さくうなずいた巨人のフォレスト・ウィットリー投手(28)が、力いっぱいのベストボールを投げ込んだ。「意図を持って投げた球が、意図通りになった。うれしかった」。129キロのカーブが低めに決まり武岡のバットに空を切らせると、くるりと回ってこの日一番の雄たけびを上げた。9つ目の三振を奪い、7回2安打無失点で降板。今季3登板目でようやく来日初白星をつかんだ。

 最速155キロの直球はさえ渡り、カーブは打者の手元から逃げるように大きく曲がった。初回こそ2安打を浴びたが、2回以降は安打すら許さない圧巻の投球。「早い段階からストライクゾーンにカーブを投げられた。今日はしっかり機能したからよかった」。阿部監督が「カーブを有効的に使えていた」と評したように、カーブで5つの空振り三振を奪った。

これまであまり投げてこなかったスプリットも駆使し、好調のツバメ打線を牛耳った。

 苦しい時間を経て、さらに強くなった。アストロズ3Aに在籍していた21年、右肘のじん帯再建術(通称、トミー・ジョン手術)を経験。移植する腱(けん)を左太ももの裏から取ったため、術後は歩くことすらできなかった。ひたすら地味な練習に励む日々。長かった。「戻るまで20か月かかった。すごく苦しくてつらかった」。それでも投げ出さなかったのは、再びマウンドに立てることが何よりの楽しみだったから。「今思うと、あの苦しい期間があったから逆境に立ち向かっていける強さを身につけられたと思う」。復帰を果たした右腕は24年にメジャーデビューし、ついに今季、幼い頃から夢見ていたNPBへ。「とても大切なもの。

大事にどこかにしまっておこうと思います」とウィニングボールを見つめた。

 うなぎが大好物で、監督から教えてもらった東京・神田のうなぎ店にもご褒美として足を運ぶ予定。外国人枠の影響で登板後に抹消予定だったが、指揮官は「まだ分からない。明日(マタ)次第だね」と再考する構えだ。異国での1勝。青い瞳に映る景色は、どんなものよりも格別だった。(北村 優衣)

編集部おすすめ