◆日本生命セ・パ交流戦 2026 巨人5―4オリックス(3日・東京ドーム)

 巨人・長嶋茂雄終身名誉監督なら、この劇的な逆転劇をどう見ただろうか。もちろん、まな弟子のように直接打撃指導した丸の満塁ホームランには興奮気味に、もしかするとグラウンドに飛び出して抱擁しに行ったかもしれない。

しかし、こう付け加えると思う。「しっかり振ってるから、ああいうホームランが生まれるんだ。振ってれば相手も恐怖心から手先が狂う時だってある。丸はそれを体現したから打てたんだよ」。6回までオリックス先発・曽谷に1安打に封じられていた。ミスターに教わった取材ノートをめくっていくと、2021年9月25日の阪神戦(東京ドーム)で止まった。

 天敵・高橋遥人に13奪三振を喫して完封負けを喫している。当時、長嶋さんの「番記者」として一緒に試合を観戦した。全く歯が立たない巨人打線に対し、何度も小言を言っていた。「何でもっとフルスイングしないんだ?」「相手ピッチャーがこれじゃ全く怖くないよ」「ほーら、見てみろ」。私は隣で、直立不動。「おい、巨人打線よ。

このピリついた空気を何とかしてくれ、打ってくれ…」と心の底から願っていたことを思い出す。

 翌26日にスポーツ報知1面に掲載された月一回のミスターコラム「勝つ勝つ勝~つ」では、こう書いてある。

 「丸も中田も、タイミングの取り方は悪くない。だが、私には中途半端なスイングに見えた。もったいない。阪神先発・高橋はすごい球を投げていた。バックネット裏から見ていても、打つのは難しい出来にあった。そんな時こそ、フルスイングで応戦するべき。当たればホームラン。三振でもOK。極端な発想だが、投げミスを許されない緊張感が生まれ、高橋の制球を狂わすことにつながる。これこそ、巨人打線が持つ最強の武器なはずだ」

 時はたち、この日、オリックス・曽谷の大きなカーブにタイミングが合わず、直球にはバットを押し込まれる力があった。

この緩急だけでも厄介だが、他にも精度の高い変化球を持っている。歯が立たない状況下、前述した長嶋さんの言葉を思い出した。フルスイングしていただろうか。曽谷に少しでも恐怖心を与えられていただろうか。7回、4番・ダルベックの一発はしっかり振ったからホームランになった。この、当然の積み重ねが「攻略」につながる時もある。

 あの阪神戦の完封負けで、当時、丸は何を思ったか。ミスターの「私には中途半端なスイングに見えた」という言葉が少しでも頭の片隅に置いていてくれたなら、8回に代打での、この逆転グランドスラムは、長嶋さんの一周忌だからこそ、さらに価値が上がる。そうやって、若手選手に伝えていってくれれば、本望だろう。ミスターの現役時代のように、例え三振でも、思い切り振り切って、ヘルメットが飛んでいくくらいの気迫が見たい。色んな数字やデータが出るアナリスト主流の時代だが、長嶋茂雄さんのような「気持ちを前面に出す野球」が基礎として必要だと感じる。(元長嶋番・水井基博)=報知プロ野球チャンネルMC=

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