JR四国が、徳島駅に自動改札機を導入して2026年6月13日から稼働させます。徳島県は自動改札機を備えた駅がない唯一の“空白県”なのも設置後に解消され、47都道府県全てに自動改札機のある駅があることになります。
ただし、これまでは有人改札しかなかった徳島駅に設置される真新しい自動改札機も、大都市圏では当たり前の「アレ」は引き続き使えません。そこにはJR四国のやむを得ない「事情」がありました。
JR四国によると、徳島駅の2024年度の1日平均乗車人員は5510人で、同社の駅としては首位の高松(1万2789人)、2位の松山(5528人)に次ぐ3位です。ところが、管内で自動改札機(簡易ICカード改札機を含めず)が入るのは4駅目で、1日平均乗車人員が徳島を約3割下回る高知(3903人)は設置済みという“逆転現象”が起きています。なお、高知は2008年2月の高架化に合わせて自動改札機が入り、JR四国としては初めてでした。
徳島駅では自動改札機の設置工事が5月18日に始まっています。自動改札機に沿って4つの通路が設けられ、うち入場専用が1通路、出場専用が2通路、入場と出場の共用が1通路となります。
やっぱりICカード拡げる気が無い?満を持して徳島駅に導入される自動改札機ですが、大都市圏の駅では一般的な「アレ」をかざす端末がありません。裏面が黒い磁気切符の投入口と、QRコードをかざす小窓があるだけです。
「アレ」とは、「ICOCA(イコカ)」や「Suica(スイカ)」などのIC乗車券です。JR四国でIC乗車券を利用できるのは香川県内の一部の駅に限られており、徳島駅については「対象エリア外となるためご利用いただけません」と説明しています。徳島駅で4駅目となる自動改札機も、IC乗車券に対応しているのは高松駅だけです。
自動改札機導入の最新事例となる徳島駅でもIC乗車券を読み取る機能を設けておらず、既に自動改札機を入れている松山、高知両駅もしかりなのは、IC乗車券を使えるエリアを徳島県と愛媛県、高知県に広げる計画が今のところないという意思表示だと読み取れます。
JR旅客6社の中で自前のIC乗車券ブランドがないのはJR四国だけで、発売しているのはJR西日本のブランドの「イコカ」です。しかも利用できるエリアも、JR四国が群を抜いて小さいのが実情です。
JR四国はなぜ、IC乗車券にかくも後ろ向きなのでしょうか。筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)はJR四国関係者から「導入エリアを広げることも検討したが、導入とシステムの維持、メンテナンスに多額の費用がかかり、負担が重いため見送った」と説明を受けました。
IC無くても? JR四国が選んだ手法確かにJR四国のグループの2026年3月期連結決算(25年4月~26年3月)は本業の損益を示す営業損益が103億円の赤字で、慢性的な営業赤字を国からの支援などで穴埋めしています。このため、投資できる余力が限られているのです。
現在導入している香川県の一部エリアは、ICカードを広く使えるJR西日本の岡山エリアから瀬戸大橋をまたいで高松を結ぶ快速「マリンライナー」などで訪れる利用者が多く、IC乗車券が使えないと駅での清算が面倒になります。よって、IC乗車券が使えるのは、予讃線の高松―多度津間の各駅と詫間、観音寺、観光客の利用が多い土讃線の善通寺、琴平、高徳線の栗林公園北口、栗林、屋島に限られています。
ただし、JR四国も電子化に背を向け、紙の切符に執着しているというワケではありません。IC乗車券よりもはるかに安い設備投資で電子化できる方法として2022年11月にサービスを始めたのが、スマートフォン向けチケットアプリ「しこくスマートえきちゃん」(通称:スマえき)です。
利用者は自分のスマホに「スマえき」のアプリをダウンロードして会員となり、クレジットカードなどを登録すれば切符を買うことができます。
IC乗車券で列車に乗る場合、入場時および出場時に自動改札機または簡易ICカード改札機にタッチをしなければ決済できません。これに対し、「スマえき」ならば有人改札でも画面を見せれば乗り降りできます。
「スマえき」は乗車券のほかに自由席特急券、通勤・通学定期、割引切符も買うことができ、有効期限が過ぎた切符は画面から自動的に消えます。
筆者が駐在していたアメリカのニューヨーク都市圏のメトロノース鉄道や、ワシントン首都圏のメリーランド地域通勤鉄道(MARC)などは、同じようにスマホで切符を購入できるアプリを導入しています。
このため、「スマえき」を英語などの多言語に対応した場合、瀬戸内国際芸術祭の人気などを追い風に四国でも大勢押し寄せているインバウンド(訪日客)にも使われるようになる余地があります。
JR四国によると、「スマえき」の会員数は12万人を超えています。訪日客にも使いやすいように多言語対応をすれば、利用はさらに広がりそうです。アプリ名の由来の通り、四国でスマートに駅を通り抜けるツールとして広く定着させられるのか、JR四国の手腕が問われています。

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