
"兄弟のようにじゃれ合う西島秀俊と伊藤淳史
原作は久坂部羊の『無痛』(幻冬舎文庫)。ドラマでは、オリジナルエピソードがふんだんに盛り込まれ、原作とはずいぶん趣が異なる。
為頼医師と早瀬刑事(伊藤淳史)との兄弟のようなじゃれ合いも、ドラマオリジナルだ。凄惨なエピソードがあまりに続くと疲れてしまう。見る側の疲弊感をフォローするためなのか、女性ファンを意識してなのか、おちゃめな西島秀俊を味わうタイムも、毎回用意されている。第6話では、まず義姉役の浅田美代子に「うつむいたってしょうがないでしょう。やれることをやるしかないのよ」と叱られ、食事を取り上げられそうになる。
さらに、終盤では、早瀬刑事と一緒に「大の大人がご飯食べる余裕もないわけ? それじゃ仕事できなくても当然ね!」とハッパをかけられ、片付けられそうになって慌てるというシーンもあった。こうしたノンキなシーンがはさまれることで、原作の暗さや重く苦しさがかなり和らいでいる。一方で、緊張がとぎれ、謎に集中しきれなくなるというリスクもはらんでいる。

さまざまな作品に描かれてきた「無痛症」
ヒロイン・菜見子を慕う、異形の青年・イバラ。原作のタイトルにもある”無痛”は、イバラが生まれながらにして、痛みを感じない「先天性無痛症」であることに由来する。
無痛症はこれまでも、さまざまな作品に描かれてきた。例えば、マンガ「ヤング・ブラックジャック」(原作:手塚治虫、脚本:田畑由秋、マンガ:大熊ゆうご/秋田書店)。3刊所収の「苦痛なき革命」に登場する黒人解放活動のリーダーを務める青年ジョニーは、無痛症。ただし、先天性ではなくベトナム戦争の最中に起こった、あるできごとがきっかけで無痛症になったという設定。また、クァク・キョンテク主演の韓国映画「痛み」(2011)では、交通事故の後遺症で痛覚を失った男と、血友病で痛みに敏感にならざるを得ない女が出会い、惹かれ合っていく姿が描かれた。

「無痛症」は実在する難病だ。生まれながらにして痛みを感じることができず、発汗機能の低下をともなう「先天性無痛無汗症」は平成27年7月から障害者支援法(厚生労働省)の対象疾病にも加わった。
ただし、作中で描かれる"体ばかりか精神面の痛みを感じない”というイバラのキャラクターは、あくまでもフィクション。

さて、第7話では、佐田の手首が菜見子のロッカーから見つかる。一気に猟奇性を帯びてきたが、このまま、そちらに大きく舵を切るのか、それともほのぼの路線でバランスをとるのか。今夜10時から!
(島影真奈美)