
(これまでの木俣冬の朝ドラレビューはこちらから)
連続テレビ小説「スカーレット」
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~

『連続テレビ小説 スカーレット Part1 (1)』 (NHKドラマ・ガイド)
第9週「火まつりの誓い」52回(11月29日・金 放送 演出・佐藤 譲)
深野組解散式、馴染みの居酒屋・あかまつでさんざん飲んで(主にフカ先生が)、夜遅くに喜美子(戸田恵梨香)が帰宅すると、常治(北村一輝)が深刻な顔で待っていた。
絵付け師はクビになったと「みんな」が噂していると言う。
「みんな」って誰だ?と問う喜美子に、「世間」だと答える常治。
若社長(本田大輔)の代になって古い人間は切り捨てられるのでは、と心配するマツ(富田靖子)。
みんな(世間)はクビだと思ったとしても、フカ先生と弟子たちは新しいことに挑戦するんやと喜美子は憤慨。
「出てってくれ」
好きなことのためにいくつになっても一から学ぼうとするフカ先生(イッセー尾形)はすばらしいと主張する喜美子に、常治はそういうことができない人間がいると説く。
かくいう常治こそ、ただただ労働して生きることにせいいっぱいで好きなことなんてできたことがない人間の代表だ。
それがわからない喜美子には「出ていってくれ」と言う。
常治の言い分は間違っていない。テレビを見ながらそれを「そうだそうだ」と実感できる人もいるだろうし、ああ、私は恵まれているなあと思う人もいるだろう。ただ、常治が酒浸りで、見栄っ張りで、なんだかちゃらっとして、粗暴で、働いても働いても暮らしが楽にならない苦労人という感じでもないので、一生懸命働いても娘のやりたいことをさせてやれないと恥じるところに、説得力がいまひとつない。もちろん、お金がなくても酒に依存したい人はいるし、常治を弱者と描きたくない思いもあるかもしれない。だが、現在の朝ドラという枠で、やりたいことがやれない人もいることを主人公を通して視聴者に伝えたいとしたら、常治の設定は誠実に働いているが貧乏というふうにしたほうがたくさんの人にわかりやすかったかなと思うが、そうしないのが「スカーレット」。
録画してるけど見たいと思わない。長いこと朝ドラをずっと見てるけど、前日の続きが気にならないのは初めて。
常治が死んだら不快感が無くなり視聴率も上がるでしょうね。視聴率のためにスカーレットから出て行ってくれ。
隙あらば体操をサボり、松明も弟子に預けて逃げる卑怯な深野。老いてなお挑戦し続ける師の姿に心酔する喜美子だが、視野狭窄に陥った娘に現実を見ろと釘を刺す父。鋭い嗅覚で生き抜いてきた父の言葉には重みがある。