
※本文にはネタバレがあります
生徒を率いた桜木が理事長と対決『ドラゴン桜』第3話
いよいよ『ドラゴン桜』らしくなって来た! “らしさ”とは何か。東大合格のノウハウに沿って生徒たちが奮闘することである。2005年度版がそうだった。【前話レビュー】『3年B組金八先生』の上戸彩に通じる平手友梨奈の精神の気高さ

日曜劇場『ドラゴン桜』(TBS / 日曜よる9時〜)。第3話は東大専科のメンバーとして岩崎楓(平手友梨奈)、瀬戸輝(高橋海人)、早瀬菜緒(南沙良)、天野晃一郎(加藤清史郎)が揃う。彼らの合格を祈って、桜木は校庭にドラゴン桜を植えた(30万円)。せっせと桜を植えているのは子分化した岩井(西垣匠)、小橋(西山潤)。
桜木と水野(長澤まさみ)は、瀬戸と天野にYouTube、岩崎と早瀬にTwitterで英語を使って発信するように指示する。中学生レベルの英語を復習し、毎日発信することで英語の基礎を確かにする目的だ。

だが、理事長・龍野(江口のりこ)は東大に入学する生徒が現れたら自分が辞任させられるので東大専科を潰そうと虎視眈々狙っている。龍野は別途、難関大コースをつくっていた。そのメンバーに理系トップの藤井(鈴鹿央士)がいる。なりゆきで、彼と東大専科が勝負することになる。
桜木はこの勝負を受けて立つ。勝負は3週間後。それに向けて桜木が4人に与えた課題は、「4人で助け合うこと」「YouTubeとTwitterをやること」「毎日水野からLINEで来るお題に答えること」。
桜木は、東大が求めているものは「どれだけ本質を考える力があるか」であり、東大生は「なぜ」と考え本質を見抜こうとするのだと説く。日常とかけ離れた難しい知識があるわけではなく、日常に潜むなにげない事柄の本質を探求することが頭の良さ。暗記力より思考力。


徐々に4人の学力が上がってきたが、試験当日、瀬戸が来ない。逃げたのではないかと疑うも、なんだかんだ反抗しながらこっそりYouTubeをやっていたことがわかる。にもかかわらず、瀬戸は来ない。「仕方ない。3人で試験を受けるしかない。

2005年度版と2021年度版の違いは?
瀬戸を除く3人で試験を受けた結果――複雑に難しい藤井の回答よりも、この3週間、中学生レベルの知識を復習し、互いにシンプルに伝え合ったり、物事の本質を思考したりする習慣をつけ、能力を伸ばしてきた東大専科のわかりやすい回答のほうがミスもなく高得点を獲得した。これは2005年度版にもあったチームワークや減点法に対応するための間違えない勉強法を思い出す内容だった。「あらゆる立ち場にいる人間の気持ちが想像できる」
「周囲の人間を蹴落とし、自分ばかりのし上がろうとする人間を東大を求めていない」


桜木は東大が求めているものをこう語る。ホント? 東大のことはよく知らないけれど、これって世の中の高学歴で社会の中枢にいる人達への皮肉のように感じる。
桜木は饒舌に語る。今、世界は未曾有の危機にあり、「もしかしたら戦争だって起きるかもな」とまで言う。そして、そんな世界で一部の人たちの都合の良いルールに従い馬車馬のように働くことから脱却するために東大に入れと煽る。

「勤勉」を言い換えて「馬車馬」。「バカとブスこそ東大へ行け」に響きの似た言葉で「バカとハサミは使いよう」があるが、言葉も使いようで、「馬車馬」を「勤勉」とよさげに言い換えることができるわけだ。そういう意味では、桜木の言葉から、東大出身者にはバカとブスしかいないと考えることもできなくはない。

2005年度版は東大受験への希望が多少あったように感じたものだが、2021年度版は、東大という権威、日本の中枢は要領がいいだけで性格も頭も悪い人たちによって成り立っていると指摘しているようにも見える。NHKの土曜ドラマ『今ここにある危機と僕の好感度について』とセットで観るとおもしろいと思う。高学歴の人たちが集う大学の上層部が経営を守るために好感度をあげようと行う不正に加担する広報マンの物語。ここでも頭のいい人たちの狡さが指摘されている。

今、この手のドラマが生まれているのは大衆の不満をすくい取っているのであろう。SNSに飛び交う言葉の数々がこれらのドラマのムードを形作る。桜木の言葉に気持ちよくなって済ましてしまう、SNSで不満を吐き出し続けるのではなく、本当に考えて行動しないと馬車馬のままで終わってしまう。そういう人たちを桜木は「バカ」と言う。
※第4話のレビューを更新しましたら、エキレビ!のツイッターにてお知らせします
番組情報
TBS日曜劇場『ドラゴン桜』
毎週日曜よる9時〜
出演:阿部寛(プロフィール) 長澤まさみ(プロフィール) 高橋海人(King & Prince)(ニュース一覧) 南 沙良(プロフィール) 平手友梨奈(プロフィール) 加藤清史郎(プロフィール) 鈴鹿央士(プロフィール) 志田彩良(プロフィール) 細田佳央太(プロフィール) 西山 潤(プロフィール) 西垣 匠 吉田美月喜(プロフィール) 齋藤瑠希 内村 遥(プロフィール) 山田キヌヲ(プロフィール) ケン(水玉れっぷう隊)(ニュース) 鶴ヶ崎好昭 駿河太郎(プロフィール) 馬渕英里何(プロフィール) 大幡しえり(プロフィール) 深田竜生(少年忍者/ジャニーズJr.)(ニュース一覧) 林 遣都(プロフィール) 佐野勇斗(プロフィール) 早霧せいな(プロフィール) 山崎銀之丞(プロフィール) 木場勝己(プロフィール) 江口のりこ(プロフィール) 及川光博(プロフィール)
原作:三田紀房『ドラゴン桜2』(コルク)
脚本:オークラ 李 正美 小山正太
音楽:木村秀彬
プロデューサー:飯田和孝 黎 景怡
演出:福澤克雄 石井康晴 青山貴洋
制作著作:TBS
番組サイト:https://www.tbs.co.jp/dragonzakura/
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami
ゆいざえもん
フリーで活動するグラフィックデザイナー・イラストレーター。得意としているファンアートは、透明水彩画や似顔絵で役者さん・舞台の魅力にアイデアを加えながら描いています。他にブランディングデザインやパッケージ・ウェブデザインなどを行う。宝塚歌劇が大好き。愛知県在住。
@yui_zaemon